研究課題/領域番号 |
23K05810
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44030:植物分子および生理科学関連
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
林 誠 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (50212155)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | プラスチド / アミロプラスト / デンプン / エチオプラスト / 葉酸 / 糖 / 光合成 |
研究開始時の研究の概要 |
プラスチドは、葉緑体やアミロプラストなどのデンプン蓄積型プラスチドと、エチオプラストなどのデンプン非蓄積型プラスチドに大別できる。申請者は、シロイヌナズナのエチオプラストにデンプン蓄積を誘導する新規化合物(以下D8)を同定することに成功した。本申請では、シロイヌナズナを実験材料に用いて(1)D8に結合するタンパク質の同定と機能解析、(2)D8に耐性を示す変異体のスクリーニングと原因遺伝子の分子遺伝学的解析、(3)上記で同定したタンパク質や遺伝子の機能解析、を行う。これらの結果を統合することで、D8の作用機作を分子レベルで解明する。
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研究実績の概要 |
プラスチドは、葉緑体やアミロプラストなどのデンプン蓄積型プラスチドと、エチオプ ラストなどのデンプン非蓄積型プラスチドに大別できる。申請者は、デンプン非蓄積プラス チドでは葉酸がデンプン蓄積を抑制していることを世界で初めて提唱した。そこで、植物に 特徴的な葉酸機能の分子機構を明らかにするためにケミカルライブラリーのスクリーニングを行った。その結果、シロイヌナズナのエチオプラストにデンプン蓄積を誘導する新規の植物特異的葉酸代謝拮抗剤(以下、化合物D8)を同定することに成功した。 葉酸はビタミンの一つとして、動物細胞における核酸やアミノ酸の合成経路の補酵素として生命維持に不可欠な役割を果たしていることが明らかになっている。こうした葉酸機能の解明には 葉酸機能阻害剤に結合するタンパク質の同定や葉酸機能阻害剤耐性株の解析などの研究が大きく貢献してきた。そこで、デンプン非蓄積プラスチドにおけるデンプン蓄積を抑制するという植物特異的な葉酸の作用機構を解明をめざして、シロイヌナズナを実験材料に用いた(1)化合物D8に結合するタンパク質の同定と機能解析、(2)化合物D8に耐性を示す変異体のスクリーニ ングと原因遺伝子の分子遺伝学的解析、(3)(1)および(2)で同定したタンパク質の機能解析、を計画した。 本年度の実績は以下の通り。(1)では、アフィニティ精製するためのリガンドの合成が完了し、化合物D8に結合するタンパク質のパイロット精製を試みた。(2)では、化合物D8耐性変異体のスクリーニ ングが完了し、得られた6系統の変異体のうちの2系統について原因遺伝子の特定を始めた。さらに、化合物D8の投与によってADPグルコースピロホスホリラーゼ遺伝子などのデンプン合成系遺伝子の発現が促進されることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に述べたように、(1)では、アフィニティ精製するためのリガンドの合成が完了し、化合物D8に結合するタンパク質のパイロット精製を開始できるまでに至っている。今後は本格的に化合物D8結合タンパク質を生成し、MSフィンガープリント法によってタンパク質を同定する予定である。(2)では、6系統の変異体が得られ、そのうちの2系統について原因遺伝子の特定を始めた。これらは、ほぼ当初の予定通りに進行している。(3)については、(1)と(2)でタンパク質が同定でき次第開始する予定である。これに加えて、mRNAの定量を行った結果、一部のデンプン合成酵素遺伝子の発現が化合物120dの投与によって促進されるという結果が得られた。これは、本研究の申請時には明らかにできていなかった新しい知見である。今後、120dによるデンプン合成酵素遺伝子の発現制御についても研究対象としたい。
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今後の研究の推進方策 |
2年度目に行う実験とその課題は以下の通りである。(1)では、本格的に化合物D8結合タンパク質のアフィニティー精製を実施し、生成されたタンパク質をMSフィンガープリント法によって同定したい。同定したタンパク質が120dと結合することを証明するために、インシリコでの結合シュミレーションやビアコアによる結合活性測定を行える準備を開始する。(2)では、まず先行する2系統、その後順次残りの変異体についても原因遺伝を特定する。原因遺伝子の同定と並行して変異体の表現型を詳細に解析し、原因遺伝子の機能予測を行う。(3)(1)および(2)で同定したタンパク質について順次その機能を明らかにしていく。また、新たな研究として(4)化合物120dによる遺伝子発現調節の解明を加え、RNA-seq法などを用いて化合物120dの投与によってmRNA量が変動する遺伝子を網羅的に同定する予定である。
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