研究課題/領域番号 |
23K05819
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44030:植物分子および生理科学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
相田 光宏 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (90311787)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | パターン形成 / 相称性 / 胚発生 / オーキシン / 転写因子 |
研究開始時の研究の概要 |
真正双子葉植物の胚発生では、2つの子葉原基が対称な位置に形成されることで、胚の頂端部の形状が放射相称から二放射相称へと転換する。この転換を制御する分子メカニズムは明らかでない。本研究では、胚の二放射相称が頂端部におけるオーキシンの非対称な分布をもとに生ずるという独自の仮説に基づき、これを検証する。具体的には胚の相称性に関わる3つの因子(子葉形成を促すオーキシン、放射パターン形成に必須なHD-ZipIII遺伝子群、二放射相称性の安定化に関わるCUC遺伝子群)に着目し、これらの因子間の相互作用が胚の相称性におよぼす影響を、シロイヌナズナを用いた分子遺伝学的手法と3Dイメージングにより明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、シロイヌナズナ胚の二放射相称性の確立におよぼす非対称な遺伝子発現の影響を明らかにすることを目的としている。球状胚期においては、胚の頂端部が中央部と周縁部の2つの領域に区分され、それぞれが放射相称性を示す。心臓胚期に入ると、周縁領域の2か所の対称な位置に子葉原基が分化し、二放射相称のパターンが確立される。 オーキシン応答性レポーターDR5v2、オーキシン生合成酵素遺伝子YUC4のレポーター、および子葉境界部特異的遺伝子CUC1のレポーターを用いて、固定胚を対象に3Dイメージングによる発現解析を行った。これらのレポーターは、球状胚期において頂端部周縁領域で非対称に発現していた。非対称な発現はDR5v2で最も早く見られ、次いでYUC4、CUC1の順であり、心臓胚期には2か所の対称な位置へと発現部位が移行した。特にDR5v2では、同時期に1か所で発現する個体と2か所で発現する個体が混在していた。 次に、各レポーターの発現に対するオーキシンの撹乱実験を行った。極性輸送の阻害剤であるNPAを投与したところ、いずれのレポーターも周縁領域全体に発現領域が拡大し、二放射相称性の発現パターンが阻害された。NPA投与による発現パターンの変化はDR5v2が最も速く、2時間の投与時間で十分であったのに対し、YUC4とCUC1は24~48時間の投与が必要であった。また、極性輸送非依存性の合成オーキシンである2,4-Dを投与した場合でも同様の結果が得られた。 以上の結果から、オーキシンの応答部位およびYUC4とCUC1の発現部位は、胚の二放射相称性の確立に伴い、非対称から対称へと変化することが明らかになった。また、この対称な発現には極性輸送に依存したオーキシンの分布が関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二放射相称の確立過程におけるオーキシン分布の詳細な解析を行った結果、当初予定していたDR5v2、YUC4、CUC1に加えて、YUC1およびTAA1の発現パターンも明らかにした。また、HD-ZipIII遺伝子群の機能解析においては、HD-ZIPIIIの多重変異体に各レポーターを導入を進める一方、CUC遺伝子群の変異体における発現解析が完了した。さらに、各レポーターに対するオーキシンの撹乱実験を進め、NPAおよび2,4-Dの影響を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予想に反して、固定胚を用いたDR5v2の初期の発現解析は、1ヶ所だけでなく2ヶ所で発現する個体が同時期に混在する結果となった。この現象が胚ごとの発現パターンの多様性を反映しているのか、それとも短期的な発現変動を示しているのかを明らかにするために、ライブイメージングを用いた経時的な発現解析を行う予定である。また、非対称性マーカー間の関係を解明するため、二重蛍光レポーターによる発現解析も進める。さらに、オーキシン関連因子の異所的発現実験についても、誘導系を用いた準備を進めていく。
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