研究課題/領域番号 |
23K05832
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44040:形態および構造関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
田中 厚子 琉球大学, 理学部, 准教授 (40509999)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 植物プランクトン / 高温ストレス / 珪藻 / 葉緑体 / セレン |
研究開始時の研究の概要 |
海洋性珪藻は地球の一次生産の約20%を担う重要な生き物である。海水温上昇が珪藻の代謝に影響を与える事は知られているが,細胞内構造が変化する現象はほとんど知られていない。申請者は生存限界の高温ストレスを与えた珪藻の葉緑体が数日で矮小化する現象を発見し,その現象がセレン存在下で抑制されることを見出した。本研究は,ストレス下での葉緑体構造の維持管理の仕組みと,セレンが誘導する高温耐性メカニズムの解明を目的とし,多様な観察技術を用いた細胞学的な解析を行う。本研究の成果は珪藻葉緑体とストレスに関する知見を得るだけでなく,人為的な高温耐性能付与による積極的な環境保全技術に繋がる可能性を秘めた研究といえる。
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研究実績の概要 |
1年目に行う予定であったFIB-SEMを用いた葉緑体の3次元構造観察は定常状態野生株でのデータ解析を継続しておこなっている。高温ストレスによってダメージを受けた野生株の解析まで行う予定であったが,利用している他機関の高圧凍結装置の故障によって頓挫している。そのため,リファレンスとしての定常状態の野生株データの解析を進めつつ,葉緑体オートファジーを連続的に観察する手法の確立を行なった。その結果,これまで集団として認識していた葉緑体の矮小化が同一細胞の経時観察でも同様に確認されたため,葉緑体の矮小化が細胞分裂を経て生じる(つまり二分裂後に肥大化しない)訳ではなく,元の葉緑体サイズが直接縮小して矮小化するという確信を得ることができた。この結果は葉緑体が部分的に消化されている可能性を強く示唆しており,より詳細な葉緑体の部分消化の検出に向けて,複数の電子顕微鏡を駆使した観察を開始している。 さらに2年目に行う予定であったセレン誘導性高温耐性への光の影響の予備実験も開始しており,光と高温の混合ストレス下でのセレンの高温耐性誘導性についての予備データを得ている。現時点では,光強度によって高温ストレス応答が異なるため,セレン誘導性高温耐性の効果にも違いがあることが分かってきた。今後はこれらの予備データを参考にしながら,高温ストレス条件下における光の影響についても検証を進め,自然環境下で生じ得る現象についての理解を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に予定していた集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)観察に必須である高圧凍結装置の故障が主な理由である。さらにFIB-SEMデータの解析(対象オルガネラのセグメンテーション)に多大な時間を要している点も理由の一つである。一方で,2,3年目に行う予定だった実験を前倒しして進めており,予定している実験計画全体に対する影響は限定的だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に行う予定であった集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)での観察と解析を2年目も継続して行う点が従来の予定からの変更点となる。それ以外の部分は,原則として当初の計画で進める予定である。
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