研究課題/領域番号 |
23K05834
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44040:形態および構造関連
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
柴田 侑毅 日本医科大学, 医学部, 講師 (20909569)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 変態 / トランジェニック動物 / アフリカツメガエル / ゲノム編集 / NEXTrans / 上皮幹細胞 / 両生類 |
研究開始時の研究の概要 |
アフリカツメガエル小腸は, 変態期にアポトーシスにより大部分の幼生型上皮細胞が消失し, 一方で“ごく少数”の幼生型上皮細胞が上皮幹細胞へと脱分化する。この “ごく少数”の幼生型上皮細胞は, 個体発生の比較的早い段階でその運命が決定されている。しかし, こうした上皮幹細胞に脱分化する細胞を決定する機構や小腸上皮細胞を幹細胞へと脱分化させる分子メカニズムには未解明な部分が多い。本研究では急速に発展する空間トランスクリプトーム技術とゲノム編集技術を用いて, アフリカツメガエルの小腸に存在する予定幹細胞の遺伝子発現プロファイルを徹底的に解析し, 予定幹細胞に特異的な遺伝子の役割を個体レベルで理解する。
|
研究実績の概要 |
アフリカツメガエル小腸は, 変態期にアポトーシスにより大部分の幼生型上皮細胞が消失し, 一方で“ごく少数”の幼生型上皮細胞が上皮幹細胞へと脱分化する。これまでの研究からror2 (チロシンキナーゼ膜貫通型受容体)を発現する幼生型上皮細胞が, 将来的に成体型の上皮幹細胞となることが示された。本研究ではror2 promoter特異的にeGFPを発現するトランスジェニック(Tg)ガエルを作出し, 一様に分布する幼生型上皮細胞のうち, “どの細胞”が“いつ”, “どのように”, 上皮幹細胞に脱分化する運命を決定されるのかを解明することを目的としている。 本年度はNEXTrans法を用いて, Ror2 promoter依存的にGFPを発現させるTgガエルXla.Tg(NEXT-ror2:eGFP/cryga:RFP)の作出(F0)に成功した。この際にポジティブコントロールとしてXla.Tg(NEXT-fgk:egfp)の作出を行い, 14.7%(14/95)個体で, 鰓と鰭において明瞭なGFPの陽性シグナルが検出され, NEXTrans法により高効率でTgカエルが作製できることを確認した。さらにF0個体を25℃で飼育し, 早期に個体の成長および性成熟を誘導することで, F0作出から約9ヶ月でF1個体を得ることにも成功した。この際, 組み込まれた外来遺伝子が次世代に継承する生殖細胞伝播(germline transmission)が極めて高効率に起きたことを確認した。 また, 新たな時期特異的な遺伝子ノックアウト手法の確立を目指して, CRISPR-Cas9とRibozymeを用いた遺伝子ノックアウトを試みたが, これまでに報告された他の生物種と比較して標的遺伝子のノックアウト効果が低いため, 更なる条件検討が必要と考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の大きな目標であったTgガエルXla.Tg(NEXT-ror2:eGFP/cryga:RFP)の樹立に成功した。NEXTrans法によるTgガエルXla.Tg(NEXT-ror2:eGFP/cryga:RFP)の作出にあたり, tgfbr2l.L遺伝子のexon 4断片, 既に構築済みであったRor2 promoter-eGFP断片およびgamma crystallin promoter-RFP断片をPCRにより増幅し, HiFi assemblyによりノックインコンストラクトTg(NEXT-ror2:eGFP/cryga:RFP)を作製した。このコンストラクトをtgfbr2l遺伝子に対するsgRNAとともにアフリカツメガエルの受精卵に注射した。遊泳開始後の幼生個体を解析すると, 19.4%(13/67)の個体が水晶体特異的にRFPシグナルを発現していた。このうち両目の水晶体でRFPを発現する個体を選別し, 25℃で飼育することで早期に個体の成長および性成熟を誘導することに成功した。変態後25℃で飼育した個体は, 7ヶ月齢から18℃で飼育し, 性成熟した9ヶ月齢のオス個体を野生型個体と交配させた。得られた幼生個体(F1)の水晶体を観察すると, 58.4%(104/178)個体でRFP発現が観察された。このF1個体は現在飼育中であり, 適切な発生ステージで小腸をサンプリングし, ror2 promoter依存的にGFPを発現する細胞を同定する予定である。加えて, Hybridization Chain Reaction (HCR)に用いるHCR probeを合成し, 変態最盛期におけるror2陽性細胞の詳細な解析を進めている。 一方で新たな時期特異的な遺伝子ノックアウト手法の確立については, 今後更なる条件検討が必要と考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度樹立したTgカエルをライン化し, Ror2 promoter依存的にGFPを発現する細胞の追跡解析を行う。内在性ror2の発現は既に構築した高感度HCRを用いて行い, Ror2 promoterによって発現誘導されるGFPとの局在比較を慎重に行う。トランスジーン(GFP)がRor2陽性細胞に発現していることを確認したのち, F1 Tg個体の小腸を用いて, 予定幹細胞と非予定幹細胞ごとに空間トランスクリプトーム解析を行う。得られた遺伝子プロファイルから, シーケンス解析の結果から得られた細胞ごとの遺伝子発現プロファイルを比較・解析し, 変態期に成体型幹細胞へと脱分化する細胞が, 幼生期にどのような制御を受けているのかを明らかにする。同時に各細胞特異的に発現する遺伝子の局在を, HCR法により詳細に解析する。コンディショナルノックアウト手法の開発についてはさらなる改良が必要であり, 全身性プロモーターやプラスミドベクターの変更を検討している。
|