研究課題/領域番号 |
23K05842
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西野 浩史 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (80332477)
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研究分担者 |
水波 誠 北海道大学, 電子科学研究所, 客員研究員 (30174030)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ゴキブリ / 触角葉 / キノコ体 / 前大脳側葉 / 投射ニューロン / 昆虫 / 家屋性害虫 / 大糸球体 / 性フェロモン / ゴキブリ科 / Periplaneta属 |
研究開始時の研究の概要 |
世界的な家屋害虫として知られるPeriplaneta属のゴキブリ(クロゴキブリ、ワモンゴキブリなど)において、配偶者識別の鍵となるのが、未交尾のメスが出す性フェロモンである。オスは微量の性フェロモンを検出できるようフェロモン処理に特化した神経経路を持つが、その詳細はワモンゴキブリ以外では不明な点が多い。本研究ではPeriplaneta属13種を対象とし、比較神経行動学のアプローチにより、各種がどのフェロモンを利用しているのかを特定する。また、フェロモン成分と行動生態、分子系統樹との機能的なリンクを探ることで、家屋のような閉鎖環境に適応した昆虫の配偶システムの進化を紐解くことを目標とする。
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研究実績の概要 |
クロゴキブリに代表されるPeriplaneta属のゴキブリの多くは世界的な家屋害虫であるが、配偶者識別、ひいては種分化に重要な役割を果たす性フェロモンの主成分は未だに多くの種で特定されていない。ゴキブリでは未交尾のメスが性フェロモンを出し、オスがそこに誘引されることで、交尾が成立する。本研究では一次嗅覚中枢である触角葉の糸球体に樹状突起を持ち、二次嗅覚中枢であるキノコ体や前大脳側葉に軸索終末を持つ性フェロモン応答性ニューロンを細胞内記録により、同定することで、嗅覚中枢における性フェロモン処理システムの種差を明らかにする。このアプローチにより、閉鎖環境に適応した家屋性害虫の生殖隔離システムの進化を紐解くことを目標とする。 R5年度は研究初年度であったが、前年度から各種ゴキブリの累代飼育を行い、十分量の成虫オスを供給できるよう入念に準備していたため、年度初めからスムーズに実験に移行することができた。まず、Periplaneta属の中でも重要な家屋害虫であるクロゴキブリ、コワモンゴキブリ、トビイロゴキブリの一次嗅覚中枢である触角葉の糸球体構成を明らかにし、性フェロモン処理糸球体のサイズや構成が大きく異なることを発見した。クロ、トビイロについては、細胞内記録を用いることで、性フェロモン糸球体から出力する投射ニューロンの主要フェロモンリガンド、応答特性を明らかにすることができた。特筆すべき成果として、クロゴキブリの性フェロモンの主成分がペリプラノンDであることをニューロンレベルで明らかにしたことが挙げられ、この知見については学会で発表した。なお、冬季(12月から3月)には細胞内記録がうまくいかなくなることがわかり、この期間はデータ整理や論文執筆に費やした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今回対象とするゴキブリは神経生理学的研究の進んでいるワモンゴキブリに比べるといずれも脳のサイズがはるかに小さいため、当初は多大な困難が予想された。ところが、対象とする種の累代飼育が研究分担者の水波の協力もあって順調に進み、十分数の成虫オスを確保できたこと、脳は小さいにもかかわらず、性フェロモン処理神経や対応する糸球体が相対的に大きかったことから、快調なペースで データを取得することができた。これは当初予想していなかった早いペースであり、2年で目的を達成できる可能性が出てきている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は複数の種を対象とした比較研究であり、初年度のアプローチ方法で問題ないことが確認できたため、研究の推進方策についての大きな変更はない。具体的には前述のアプローチ法をPeriplaneta属の野生種(ヤマトゴキブリ、ウルシゴキブリなど)にまで拡大し、一次嗅覚中枢の糸球体構成、性フェロモン応答性投射ニューロンの同定を粛々と進めていくものとする。冬季はどうしても電気生理実験がうまくいかなくなるため、この期間は学会発表、データ生理、論文執筆などに充てるものとする。
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