研究課題
基盤研究(C)
脊椎動物においてカルシトニンは骨代謝を司るホルモンである。カルシトニンは、左右相称動物(前口・後口動物)に広く存在することが知られているが、体温の概日リズムの調整がその共通の作用である可能性が見出された。そこで、本研究では、原始的な左右相称動物とされる珍無腸動物ナイカイムチョウウズムシを用い、この仮説を検証し、前口・後口動物を跨ぐペプチド遺伝子スーパーファミリーの機能進化解明のモデルとする。
本研究の目的は、原始的な左右相称動物と考えられている珍無腸動物を用いカルシトニン(CT)の祖先的機能や、前口・後口動物の分岐に伴うCT機能の進化機構を提唱することにある。CTは哺乳類の骨代謝を司るホルモンである。我々は、CTが無脊椎動物にも存在することを示してきた。その後のゲノム解析等から、CT遺伝子が左右相称動物(前口・後口動物)に広く存在することが知られている。それらの機能を見渡すと、概日リズムの調整がCTの共通の作用である可能性が見出された。そこで、本研究では、原始的な左右相称動物とされる珍無腸動物ナイカイムチョウウズムシを用い、この仮説を検証し、前口・後口動物を跨ぐペプチド遺伝子スーパーファミリーの機能進化解明のモデルとする。令和5年度は、ナイカイムチョウウズムシのCT(Pn-CT)及びCT受容体(Pn-CTR)全長配列の決定を行った。Pn-CTは36アミノ酸残基であった。様々な動物のCTに存在する2つのCys 残基が保存されており、ジスルフィド結合による環状構造を持つと考えられる。さらにCTに特徴的なPro残基とアミド化シグナルが保存されていた。さらにPn-CTRの分子系統解析により、Pn-CTRが左右相称動物のCTRやCTR様受容体(CLR)と相同性であることを確認した。さらに Whole mount in situ hybridization 解析により、ナイカイムチョウウズムシのPn-CT及びPn-CTRの発現局在を検討した結果、Pn-CTとPn-CTR mRNAが共に頭部に局在していることが明らかとなった。その発現パターンから、Pn-CTとPn-CTR mRNAは、ニューロンに発現していると予想される。特にPn-CTの局在は、GABAニューロンのマーカー遺伝子の局在と類似していた。これらの解析によって、珍無腸動物CT機能解析の基盤を整えることができた。
2: おおむね順調に進展している
配列解析と分子系統解析によりPn-CTが左右相称動物CTの同族体であること、Pn-CTRが他の左右相称動物のCTRやCLRの相同遺伝子であることを確認できた。さらに発現局在解析によりPn-CTとPn-CTRが神経系で発現していて、回路を形成していることを示唆するデータを得ることができた。これらは、令和6年度以降の解析の基盤となるものであり、研究は順調に進んでいる。
Pn-CTやPn-CTRを発現している神経の特徴を二重 in situ hybridization により解析する。現在、GABA神経との関係を調べているが、さらにマーカーを増やして検討する予定である。加えて、ナイカイムチョウウズムシの概日リズムとCTの関係を調べるために、時計遺伝子を同定し、その局在や、日周変動を検討する。さらに行動実験系の確立を行う。ムチョウウズムシを撮影用の小型水槽に入れ動画を撮影し、砂に潜る状態と表層に浮上する状態を繰り返す行動パターンを解析して、概日リズムもしくは概潮リズムの測定系を構築する。
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