研究課題/領域番号 |
23K05849
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
橘木 修志 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (70324746)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 視細胞 / 錐体 / 桿体 / 光応答 / 細胞内分布 |
研究開始時の研究の概要 |
脊椎動物の網膜には、光を見るために働く二種類の光受容細胞(桿体と錐体)が存在する。桿体は弱い光に、錐体は強い光に応答する。この感度の違いを生み出すメカニズムとして、我々はこれまでの研究から、2つの候補(錐体にのみ存在するタンパク質Neurocalcinδ、光受容部(外節)の脂質の空間分布の違い)を見つけた。本研究では、遺伝子改変や薬物投与によって候補因子を変化させたときに、実際に桿体・錐体の応答の違いが生じるのかを検討し、これらが応答の違いに関わっているのか解明する。また、関わっていた場合、その詳細な分子メカニズムをさらに生化学的な実験を通して解明することを目指す。
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研究実績の概要 |
脊椎動物の網膜には、錐体と桿体の二種類の視細胞が存在する。どちらの細胞も、光刺激を神経情報に変換する働きをしているが、光に対する感度や応答持続時間が大きく異なる。異なる応答をする二種類の細胞を使い分けることにより、我々は様々な光環境で外界を見ることが出来る。 この応答の違いを生み出す分子メカニズムを理解するためには、錐体・桿体それぞれで応答形成に関わる因子を解明する必要がある。近年、我々は、2つの新たな因子の候補を見いだした。一つは錐体に局在するカルシウム結合タンパク質Neurocalcin δ、もう一つは錐体と桿体の光受容部(外節)の脂質の空間分布である。本研究では、この2つの候補が実際に桿体・錐体の応答の違いに関わっているのか解明することを目指している。 まず、錐体でのNeurocalcin δの機能解析をおこなうため、CRISPR/Cas9系を使ってNeurocalcin δ遺伝子をノックアウトしたゼブラフィッシュを作出し、視細胞応答にNeurocalcin δが及ぼす影響を解析することを試みている。 また、錐体・桿体の外節ラメラ膜では、光受容タンパク質(視物質 )を始めとした応答形成関連タンパク質は膜タンパク質として存在するが、ラメラ膜の脂質分布に従って応答に関わる各種タンパク質の分布は変わると考えられる。興味深いことに、我々は、桿体ラメラ膜で見られる脂質分布が、錐体では存在しないことを見いだした。そこで、昨年度は、応答に関わるタンパク質の一つである活性型PDEが桿体外節でどのように局在しているのか測定することを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1:錐体でのNeurocalcin δの機能解析 ゼブラフィッシュ網膜におけるNeurocalcin δの分布を免疫組織染色法でさらに確認したところ、錐体視細胞での強い発現が改めて確認できた。そこで、CRISPR/Cas9系を使ってNeurocalcinδ遺伝子をノックアウトしたゼブラフィッシュの作出を試みた。2塩基欠失型の遺伝子変異が生じた個体を得ることができたが、ヘテロ個体は得られるものの、ホモ個体を得ることが未だにできていない。これがどのような要因によるものかわからないが、発生初期にNeurocalcin δが視細胞、あるいは別の箇所でなにか重要な役割を果たしている可能性があり、現在検討中である。ヘテロ個体は十分に得られているので、今後は電気生理学的手法を用いた機能解析を行っていく予定である。
2:錐体・桿体における脂質分布とそれに伴うタンパク質分布の解析 すでに我々は、桿体ラメラ膜で見られる脂質分布が、錐体では存在しないことを見いだした(2021-23年に学会発表)。このことは、桿体と錐体で応答関連タンパク 質の分布も同一でないことを強く示唆する。そこで、光情報伝達過程の最後に位置する酵素であるPDEが活性化しているときにどのように分布しているかを、cGMP分解活性をcGMP蛍光センサを用いて実験したところ、脂質分布に合致するような活性分布を見ることができた。このことは、脂質分布による酵素の分布の不均一性が存在することを改めて強く示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
1:錐体でのNeurocalcin δの機能解析 Neurocalcin δのヘテロ変異体を作出することができているので、今後はその個体での錐体の光応答を詳細に電気生理学的手法で解析し、Neurocalcin δが錐体視細胞の応答に及ぼす影響を明らかにしたい。その上で推察されるNeurocalcin δの機能について、生化学的解析も同時に行い、詳細を解明したい。なお、このタンパク質のホモ変異体が得られない理由については、単に視細胞の機能に及ぼす影響を超えた未知の原因が考えられることから、今後慎重に検討したい。 2:錐体・桿体における脂質分布とそれに伴うタンパク質分布の解析 すでに脂質分布とタンパク質(PDE)の分布の相関があることを示唆する測定ができた。そこで、脂質分布を壊したときにどうなるのかを検討したい。各種の麻酔剤は、細胞膜内での脂質分布構造を様々な程度で破壊するので、これらの麻酔剤を視細胞に添加したときに、外節での脂質・ タンパク質分布がどのように変化するのかを測定すると同時に、細胞の応答がそれに応じてどのように変わりうるのかを検討していきたい。 3:研究を遂行する上での課題 昨年度より所属が変わり、異動をしたため、研究環境に変化があり、体制の再構築を余儀なくされたが、今年度は新環境の利点を生かし、さらなる研究の発展に努めたい。
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