研究課題/領域番号 |
23K05859
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
茂木 一孝 麻布大学, 獣医学部, 教授 (50347308)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 触刺激 / 社会性発達 / 母子間インタラクション / マウス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は幼少期に母から受ける触刺激が社会性発達に与える影響とその神経メカニズムを解明する。具体的には、撫で感覚を特異的に伝達する神経系を薬理遺伝学的手法で幼少期のみ抑制した仔マウスを作出し、成長に伴う行動表現型の発達変化を調べる。また、幼少期に受けた刺激で活性化した神経細胞を長期的に追跡できる遺伝子改変マウスを用い、幼少期触感覚の記憶細胞の機能を探るというアプローチからも神経メカニズムを追及する。行動表現型として、共感性、また群れ内での社会的行動や順位形成への影響など、実際の動物社会をより反映した社会行動評価を実施し、母子間インタラクションによる社会性発達の真の生理的意義も明らかにする。
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研究実績の概要 |
哺乳類動物は幼若な仔を出産し、仔は母親のみが出す母乳を栄養源に成長するように進化してきた。そのため出産直後からの母子間インタラクションは仔の発達に多大な影響を及ぼす。ヒトでは触覚経験を早期に遮断された子の観察などから、幼少期に抱きしめられたり、撫でられたりすることが人間性の発達に欠かせないことが示唆されてきた。哺乳類動物の親も出産直後から仔を舌で舐める行動(リッキング)や毛づくろい行動で仔に絶えず触刺激を与えており、仔が幼少期に受けるリッキングの多さによってストレス内分泌軸の発達や成長後の母性行動発現が変化することが示されてきた。本研究は母から受ける触刺激が仔の社会性発達に与える影響とその神経メカニズムを解明し、幼少期の触刺激による社会性発達変化の真の生理的意義も明らかにする。具体的に、皮膚感覚の中でも撫で刺激を特異的に伝達する神経系に着目し、撫で感覚神経特異的に発現するMrgprb4分子のプロモーター下流にCre遺伝子を挿入したMrgprb4-CreマウスとDREADDsシステムによる薬理遺伝学的手法を用い、幼少期のみ撫でられた感覚が抑制された仔マウスを作出して社会的な行動表現型の発達変化を調べる。2023年度はこの手法での仔マウス作出方法を確立することができ、作出したマウスを用いて各種の社会行動テストを実施しているところである。他に、幼少期に受けた刺激で活性化した神経細胞を長期的に追跡できるTargeted Recombination in Active Populations (TRAP)遺伝子改変マウスを用い、新生仔期に受けた撫で刺激で活性化し、将来母となって仔へリッキングする際にも活性化する“撫で刺激の記憶細胞”候補も探索する。2023年度はこの記憶細胞候補を探索するための実験系および脳の染色法を確立することができた。今後例数を増やしていく必要があるが、現在いくつかの神経核にこの記憶細胞候補が局在する可能性を見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに、Mrgprb4分子のプロモーター下流にCre遺伝子を挿入したMrgprb4-CreマウスとDREADDsシステムによって幼少期の撫で感覚を抑制する実験系を確立し、作出されたマウスの行動表現型を解析できている。またTRAP遺伝子改変マウスを用いた撫で刺激の記憶細胞候補を探索する実験系も確立し、この記憶細胞候補が局在する脳部位の探索を進められている。
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今後の研究の推進方策 |
幼少期の触刺激による社会性発達変化の生理的意義を明らかにするため、まずは幼少期に撫で感覚が抑制されたマウスを用い、様々な社会行動をテストから顕著に変化する社会行動の特定を目指す。またTRAP遺伝子改変マウスを用いた撫で刺激の記憶細胞候補の探索においても、引き続き例数を追加してゆくことで記憶細胞候補が局在する脳部位の特定を目指す。
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