研究課題/領域番号 |
23K05862
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 公益財団法人サントリー生命科学財団 |
研究代表者 |
高橋 俊雄 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 主幹研究員 (20390792)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 非神経性アセチルコリン / オルガノイド / 腸幹細胞 / シグナル伝達経路 / 分化 / 増殖 / 組織形成 / 生体分子 / 分化・増殖・維持 |
研究開始時の研究の概要 |
古典的神経伝達物質のアセチルコリン(ACh)やその受容体は主に神経細胞に局在し、神経伝達及びその調節に関与していると考えられてきた。一方で、非神経系組織でもACh及び同受容体の存在が確認され、神経系とは異なる機能が明らかになりつつある。我々はこれまでに、チャネル型ニコチン性ACh受容体のα2β4が腸幹細胞のニッチとして機能しているパネート細胞に発現し、一方で代謝型ムスカリン性ACh受容体のM3は腸幹細胞に発現し、腸幹細胞の幹細胞性の維持に重要な生理的役割を果たすことを明らかにしている。そこで、代謝型M3とチャネル型α2β4を介した腸幹細胞の制御を明らかにし、新たな恒常性維持機構を解明する。
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研究実績の概要 |
(1)チャネル型AChシグナリング (A) Beta4-KOマウス(Chrnb4-mScarlet-pA)のクリプトサイズを調べたところ、野生型マウスのクリプトサイズに比べて減少していることを見出した。そこで、Beta4-KOマウスクリプトにおける細胞増殖率を、Ki67抗体陽性細胞の数の変動で調べたところ、Beta4-KOマウスクリプトでは、小腸の各領域において細胞増殖率の減少が見られた。同様に、BrdU法を用いた細胞増殖率の変動を経時的に調べた結果、細胞増殖率が減少していることを確認した。(B) FACSを用いてレポーターマウス(Chrnb4-IRES-mClover3)からGFP陽性細胞/DCLK1陽性細胞(タフト細胞)を分離した。さらに、分離した細胞をCD45抗体を用いて、神経型タフト細胞1(GFP+/DCLK1+/CD45-細胞群)と免疫型タフト細胞2(GFP+/DCLK1+/CD45+細胞群)に分離する手法を確立した。並行して、FACSを用いてBeta4-KOマウス由来タフト細胞(β4遺伝子を発現していない実験群)を分離した。この手法の確立により、CD45-neg細胞(神経型タフト細胞1)とCD45-high細胞(免疫型タフト細胞2)におけるChAT遺伝子発現量とACh量を比較することにより、どちらのタフト細胞がAChを合成し、放出しているのか、または両方の細胞であるのかが明らかとなることが期待される。また、Beta4 遺伝子を機能不全にするとAChの合成量が変動するのかを調べることも可能となった。 (2)代謝型AChシグナリング FACSを用いて代謝型M3-KOマウスからLgr5陽性細胞(M3遺伝子を発現していない実験群)、及びM3レポーターマウス(M3-IRES-LacZ-pA)からLacZ陽性細胞(M3遺伝子を発現している対照群)を分離する手法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)チャネル型AChシグナリング Beta4-KOマウス(Chrnb4-mScarlet-pA)のクリプトサイズを調べたところ、野生型マウスのクリプトサイズに比べて減少していることを見出した。次に、Beta4-KOマウスクリプトにおける細胞増殖率を、Ki67抗体陽性細胞の数の変動で調べたところ、Beta4-KOマウスクリプトでは、小腸の各領域(十二指腸、空腸、回腸)において細胞増殖率の減少が見られた。そこで、Beta4-KOマウスクリプトにおける細胞増殖率を、BrdU法を用いて経時的に調べた結果、予想通り、細胞増殖率が減少していた。Alpha2-KOマウス(Chrna2-mClover3-pA)のキメラマウスの作出は完了した。現在、ホモ個体作製中である。 (2)代謝型AChシグナリング FACSを用いて代謝型M3-KOマウスからLgr5陽性細胞(M3遺伝子を発現していない実験群)、及びM3レポーターマウス(M3-IRES-LacZ-pA)からLacZ陽性細胞(M3遺伝子を発現している対照群)を分離する手法を確立した。 上記(1)(2)の結果を踏まえて、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)チャネル型AChシグナリング (A) Alpha2-KOマウスのホモ個体を作製し、クリプトにおける細胞増殖率についてKi67抗体染色とBrdU法を用いて調べる。 (B) 分離した神経型タフト細胞1(GFP+/DCLK1+/CD45-細胞群)と免疫型タフト細胞2(GFP+/DCLK1+/CD45+細胞群)におけるChAT遺伝子発現とACh量を定量的に調べる。FACSで分離したBeta4-KOマウス由来タフト細胞(Beta4遺伝子を発現していない実験群)とBeta4-IRES-mClover3マウス由来タフト細胞(Beta4遺伝子を発現している対照群)について、RNA-Seq法によるトランスクリプトーム解析を行う。同様に、Alpha2-KOマウス由来タフト細胞とAlpha2-IRES-mClover3マウス由来タフト細胞についても解析を行う。また、チャネル型α2β4を発現しているパネート細胞についてもFACSを用いてKOマウス由来パネート細胞(Alpha2またはBeta4遺伝子を発現していない実験群)とIRES-mClover3マウス由来パネート細胞(Alpha2とBeta4の両遺伝子を発現している対照群)を分離し、RNA-Seq法によるトランスクリプトーム解析を行う。 (2)代謝型AChシグナリング FACSで分離した代謝型M3-KOマウスからのLgr5陽性細胞(M3遺伝子を発現していない実験群)、及びM3レポーターマウスからのLacZ陽性細胞(M3遺伝子を発現している対照群)について、RNA-Seq法によるトランスクリプトーム解析を行う。そして、得られた結果をもとに、特定のタンパク質やリン酸化タンパク質の発現をシングルセルウェスタン(Milo)を用いて細胞レベルで解析する。最終的に、代謝型M3の下流域で働くシグナル伝達経路の全体像を把握する。
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