研究課題/領域番号 |
23K05868
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45010:遺伝学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
齋藤 貴宗 近畿大学, 生物理工学部, 講師 (60741494)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 減数分裂 / 線虫 / HIM-18/SLX4多重ヌクレエース複合体 / 早期老化症 / ファンコニ貧血 / 不妊症 / 減数分裂組換え / 多重ヌクレエース複合体 / DNA修復 / 染色体異常疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、HIM-18/SLX4多重ヌクレエース複合体の新規な機能を解析し、早期老化症、ファンコニ貧血などの指定難病や不妊症の病態解明、治療に役立てる事を目的とする。HIM-18は、DNAの構造選択的に切断するヌクレエースであるSLX-1, MUS-81, ERCC-1, XPF-1などと結合し、それらの活性を調節する。線虫のmus-81 ercc-1二重変異体は生育停止し、早期老化症モデルとして期待される。him-18のサプレッサー変異体の解析、SLX-1の染色体部位特異的な減数分裂組換え抑制機構をリアルタイムPCRで解析し、多重ヌクレエース複合体の新規な細胞機能を探索する。
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研究実績の概要 |
令和5年度の研究成果は、 令和6年1月に行われた、関西地区線虫勉強会で口頭発表した。ファンコニ貧血原因遺伝子の一つであるSLX4の線虫ホモログであるHIM-18に関し、そのユビキチンジンクフィンガードメインが持つ機能について解析した。ユビキチンジンクフィンガーはジンクフィンガーの一種であるが、ユビキチン化されたタンパク質に結合性があり、DNA複製や修復に関わるタンパク質に見られるドメインである。ubz4ドメインのみに欠損があるhim-18(tm8731)変異体を用いて、null変異であるhim-18(tm2181)変異体との比較を行った。ヒトのSLX4はN末にUBZ4ドメインがタンデムに2つ並んで配置する。特にN末側のUBZ4がDNA鎖間架橋への局在、修復に必要とされる。今回、我々は紫外線(UVC)照射によって生じるピリミジンダイマーがDNA複製や転写を阻害する事に着目した。野生型とhim-18変異体の成虫に10[mJ/cm2]および20[mJ/cm2]の紫外線を照射すると、ともに照射量依存的に次世代の胚の孵化率が減少した。him-18UBZ4欠損変異体では野生型よりも孵化率が低下したことから、UBZ4ドメインが紫外線によるDNA傷害の修復に必要であることが示された。 早期老化症の病態モデルとして線虫mus-81 ercc-1二重変異体の表現型解析をした。MUS-81, ERCC-1ともにSLX4ホモログのHIM-18と結合し、多重ヌクレエース複合体を形成して機能すると考えられている。英国Bristol地方由来の線虫でのmus-81 ercc-1二重変異体はL1幼虫期で生育停止した。Hawaii由来の線虫でもmus-81 ercc-1変異体ではL1停止が見られたことからisolatesによらないロバストな表現型である事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファンコニ貧血原因遺伝子SLX4の線虫ホモログであるHIM-18のUBZ4ドメインの機能解析を進めるにあたって、him-18(tm8731)の紫外線感受性データを得る事に成功した。現在までに2種類のhim-18サプレッサー変異体を取得しているが、それぞれのサプレッサー変異がhim-18(tm8731)の紫外線感受性を抑圧する事ができるかの検証への前提条件を得る事ができたと言える。 線虫の早期老化症モデルの検証実験では多重ヌクレエース複合体の構成因子であるmus-81とercc-1の変異体を用いた。それぞれの単一変異体では目立った表現型は観察されなかったが、mus-81 ercc-1二重変異体ではisolatesの由来によらず、L1幼虫期で生育が停止した。大腸菌を餌として摂取できない線虫はL1停止する事が知られている事から、GFPで蛍光ラベルした大腸菌が餌として摂取されるかどうか検討した。その結果、mus-81 ercc-1二重変異体では大腸菌を腸管に摂取できていない事がわかった。これらの結果はファリンクスを含む消化器官の形成異常を予想させる。 相同組換えの部位特異的抑制機構の一端を明らかにする目的でHIM-18結合因子のSLX-1GFP株が機能的かどうかの検証を進めた。slx-1変異体はブルームシンドロームヘリケースhim-6の変異が合わさると致死になる事が知られている。そのため、slx-1; him-6二重変異体を作成し、そこにSLX-1:GFPを発現させ、致死の表現型が回復するかどうかを調べる事で、導入したSLX-1::GFPが機能的かどうかを検証する事ができる。slx-1;him-6; SLX-1::GFP株はhim-6単一変異体のレベルまで生存率が回復したため、SLX-1::GFPが機能的であり、今後の実験に使用可能である事が確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
早期老化症モデルの解析としては、生殖細胞の増幅を指標に幼虫期の停止時期の特定を行う予定である。野生型の線虫においては初期のL1幼虫では生殖細胞はZ2細胞、Z3細胞の2個に限定される。さらにはこれらの生殖細胞はG2期で細胞周期を停止しており、生殖細胞の数、細胞周期の時期を解析する事が、L1幼虫期の生育統合性の指標となる。G2期の特定はCDKセンサーを利用したDHB(DNA Hericase B)::mKateの核局在で確認する予定である。 多重ヌクレエース複合体の足場タンパクであるHIM-18は減数分裂組換えの促進に必要である。一方で、DNAヘリケースのRTEL-1は組換え中間体を解体する事で交差形成を抑制すると考えられている。HIM-18とRTEL-1の機能的な相反性を調べるため、him-18; rtel-1二重変異体を作成し、交差形成頻度、交差分布を多角的に解析する。体が太く短くなるDumpy表現型とS時カーブを描く蛇行運動ができないUnc表現型を示す遺伝子変異を用いて、両遺伝子間での交差頻度を次世代の表現型のカウントによって計測する。また致死性の子孫における交差を確実に定量するため、リアルタイムPCRを用いたSNPジェノタイピングも並行して行う。交差形成性はDNA二重鎖切断から始まり、リセクトされた一本鎖DNAにRAD-51が集積する。このため、RAD-51の定量によりDNA二重鎖切断の定量ができる。RAD-51による相同鎖検索は二重ホリデイ構造の形成を引き起こし、HIM-18依存的なホリデイ構造の解離が生じると考えられる。線虫の相同染色体ペアでは多くのDNA二重鎖切断から一つだけが選ばれて交差形成に至る。交差予定DSBにはCOSA-1などの交差指定因子が集積するため、蛍光顕微鏡下でのCOSA-1の定量によって、現場レベルでの交差の定量も行う予定である。
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