研究課題/領域番号 |
23K05872
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45010:遺伝学関連
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
田中 卓 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 主席研究員 (80425686)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | SDR / RNA-DNA hybrid / G4 / transcription / DNA replication / PriA / RecA / RNaseHI / DNA複製 / RNA-DNAハイブリッド / 転写 / グアニン四重鎖 |
研究開始時の研究の概要 |
最近、グアニン四重鎖(G4)が、染色体DNA複製に関わることが報告され、DNAの"かたち"が持つ新たな機能が強く示唆される。これまでDNA複製の分子機構は、複製因子とDNAとの相互作用解析によって解明されてきたが、複製起点(origin)の選択と開始タイミングの変動を制御するしくみの全体像を把握することは難しい。G4の機能はこれを解決する可能性を持つ。原核生物のmulti-replicon様式である安定DNA複製(SDR)を高等生物のモデルと想定し、転写依存性複製最小単位の解析により、G4による複製制御機構を明らかにする。結果は、DNAの"かたち"による新たな細胞機能制御機構解明の嚆矢となる。
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研究実績の概要 |
SDRはerror-proneな複製系である可能性がある。変異率はrpsL遺伝子の変異によるストレプトマイシン(Sm)耐性株の検出により測定可能であり、SDR生育株にこの系を導入することで測定系を確立した。その結果、Sm耐性菌の出現は、SDRにより上昇するものの大半は内在性rpsL128との組換えによるため、allele specific primerによるPCRによってこれを排除、rpsL128 allele以外の変異のみを計測する実験系を確立した。 SDRに必須の因子、PriAとRecAが相互作用することを見出しているが、その結合動態は不明である。相互作用に重要とされるC端を欠失したRecAとの相互作用を見ると、影響しないことが分かった。PriAとRecAの結合にはRecA C端は関与しないらしい。 SDRのorigin候補として同定したoriT1に含まれる内在性G4形成配列(boxC1)直前にT7 promoterを挿入して転写を誘導するとoriC/DnaA非依存性複製を活性化できる。転写の向きを検証するため、逆鎖の転写、あるいは、複製可能な転写ブロックの逆位挿入などを調べたが、いずれもSDR活性化機能を検出できなかった。方向に優位性があるらしい。 また、その他のboxC近傍へのT7 promoter挿入株を作製したが、これらの転写を誘導しても、今のところSDR活性化株を得ることができない。 SDR開始に転写に伴うG4形成が重要と想定している。今までG4の検出ができていなかったが、今回G4Pペプチド抗体を使用しChIP-seqを行ったところ有意なピークが得られ、一部はRNA-DNA hybridと一致していることが分かった。大部分はtRNA遺伝子に見られるが、これに依存しないピークも見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SDRの生理的意義確定のために変異率を測定可能にするrpsL挿入株を構築したが、DNA断片が入りにくい部位があり、構築に予想外の時間がかかった。SDR人口的誘導株は今のところ一株しか得られておらず、想定外の遺伝子変異やreversionによって増殖する可能性も排除できないため、新たに10箇所のboxC近傍にT7 promoterを挿入した株、あるいは転写の方向性を変えた株を作製し、SDR機能解析を行うのに時間を要した。 G4の検出は、当初G4検出プローブとしてBG4を使用しChIP-seqを行ったが、有意なピークが得られず、また、G4特異性については議論があるところであったため、G4Pによる検出に切り替えた。ChIP-seqについては先端ゲノム支援に採択されたのでそちらに依頼しており、サンプル調製から結果が得られるまでにある程度時間がかかるため、遅延の原因となった。 株作製は予想外の困難に直面することもあり、また、意味のある形質が得られないときはさらなる変異株を確立する必要もあるため、全体としてはやや遅れていると考えているが、ある程度の数が揃ったので、今後は測定や観測が進むものと予想しており、挽回可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は確立した株による変異率の測定を行う。相同組換えによるrpsL128変換株を排除する系によって突然変異株のみを解析することで変異率とその内訳を確定する。人口的複製誘導株は次世代シーケンス技術により全ゲノム配列決定を行って、この複製開始に必須のエレメントを同定する。同定されたエレメントをその他の株に導入することで普遍性を確かめ、可能であれば、その他の生物種においても同様の現象を誘導できないかを検討する予定である。ChIP-seqやRNA-seqの解析は受託業者を利用して必要なデータを取得する。 同定したoriT1内に存在する機能未知遺伝子ycjDについて、精製タンパク質による各種生化学特性を決定する。DNAあるいはRNA-DNA hybridやG4への結合活性や、SDR機能への関与を決定し、SDR開始機構の分子動態を確立したい。 G4PのChIP-seqにより細胞内G4構造の検出が可能となったので、RNA-DNA hybridの位置との相関を解析する。また、BrdU-ChIPによりDNA合成位置との相関も検討したいが、現在の解像度では開始点を同定できないことが分かったので、RNA-DNA変換点の検出や、新生鎖を単離することで開始点を特定できないか検討する予定である。これらの結果から転写に依存してG4が形成され、これがSDR開始に必須の役割を果たすモデルを確立したい。 この複製モデルは、プラスミド上では最小複製単位として確立しており、今後は更に詳細なin vitro解析と、真核細胞で同様な複製を検出するためのベクター構築を検討する予定である。
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