研究課題/領域番号 |
23K05875
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河野 大輝 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60846773)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | セイヨウミツバチ / カブラハバチ / キノコ体 / ケニヨン細胞 / 進化発生学 / ハチ目 |
研究開始時の研究の概要 |
多様な生態を示すハチ目では、昆虫脳の高次中枢であるキノコ体のケニヨン細胞サブタイプの数が行動進化に伴い増加したことが指摘されている。しかし、どのような分子基盤の変化によりサブタイプが増加したのか、またサブタイプ化の生物学的な意義は不明である。本研究では、原始的なハバチ亜目と高度な行動を示す有剣類の代表種において、ケニヨン細胞サブタイプがニューロブラストから分化する際に働く転写因子を同定し、その変異体の行動異常を調べる。さらに種間比較により両種における時空間的な発現パターンの違いと、その要因となる仕組みを明らかにする。これにより、行動進化と相関する脳進化に寄与した分子基盤を解明する。
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研究実績の概要 |
多様な生態を示すハチ目は行動進化と関連する脳の分子神経基盤を調べる上で有用であり、これまでに昆虫脳の高次中枢であるキノコ体のケニヨン細胞サブタイプの数が行動進化に伴い増加したことが示唆されている。しかし、どのような分子基盤の変化によりサブタイプが増加したのか、またサブタイプ化の生物学的な意義は不明である。そこで本研究では、ハチ目のキノコ体の進化発生学的解析により、サブタイプ数の増加に寄与した分子基盤を同定する。さらに、特定のサブタイプの欠失変異体を作出して行動異常を調べることで、行動進化に繋がった脳進化の分子実態の解明を目的とする。 初年度は、ミツバチのキノコ体のケニヨン細胞サブタイプの分子発生基盤の解析を行った。様々な蛹期の頭部へ増殖細胞標識試薬であるEdUを注入して羽化するまで飼育し、成虫脳においてEdU検出とケニヨン細胞サブタイプのマーカー遺伝子のin situ hybridizationによる二重染色を行うことで、各サブタイプがneuroblastから産出される蛹期を同定することができた。また、各サブタイプが大型、中間型、小型の順にneuroblastから順番に産出されることを初めて示した。さらに、各サブタイプを産出する蛹期の脳からキノコ体を摘出して細胞分離した後、FACSによりDNA量を指標に増殖中の細胞を分取してRNA-seq解析を実施した。これにより、各サブタイプ産出時期のキノコ体増殖細胞における遺伝子発現プロファイルおよび各蛹期特異的に発現変動する遺伝子群を同定できた。また、並行して、ビデオ撮影した個体の動画解析による行動解析実験の確立を試み、ミツバチの視覚(動き)刺激に対する触角応答を定量化する実験系を確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミツバチの蛹期は、複眼や体のクチクラの色という主観的な基準で判断されていたが、本研究ではタイムラプス撮影しながら飼育することで正確に蛹化からの経過時刻を同定できるようにした。これにより、当初の予定通り、各サブタイプが産出される蛹期、およびこれら蛹期の増殖細胞で発現する遺伝子の同定まで達成できている。一方、ハバチについては未解析であるため、ミツバチに用いた手法を適用することで、ハバチの1種類のケニヨン細胞サブタイプの分子発生基盤の解析を進めていく。また、深層学習を用いて動画内の個体の行動をトラッキングできるDeepLabCutをミツバチに適用し、動き刺激に対する触角応答を定量化できており、ミツバチの様々な社会性行動の行動要素を定量化する実験確立のための下地ができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ミツバチについては、これまでに実施した各サブタイプ産出時期の蛹キノコ体増殖細胞のRNA-seq解析により同定した各サブタイプの運命決定に関与する候補遺伝子群について、in situ hybridizationによる発現解析を行うことで、実際に各サブタイプ産出時期の蛹脳特異的にキノコ体増殖細胞に発現するものを絞り込む。さらに、ゲノム編集により絞り込んだ遺伝子をノックアウトし、各サブタイプの産出・運命決定における機能を調べる。ハバチについては、キノコ体の発生に関する知見が無いことから、まずは様々な蛹期の頭部にEdUを注入し、キノコ体に増殖細胞が存在する蛹期を同定する。そして、同定した蛹期からキノコ体を摘出してRNA-seq解析を行い、これらの蛹期特異的にキノコ体で発現上昇する遺伝子群を同定する。これら遺伝子の内、キノコ体の増殖細胞で特異的に発現しているものを、EdU注入・検出と候補遺伝子のin situ hybridizationにより絞り込む。さらに、絞り込んだ遺伝子がハバチのケニヨン細胞の産出・運命決定に機能するかをRNAiによるノックダウン実験により調べる。
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