研究課題/領域番号 |
23K05877
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
飯田 敦夫 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (90437278)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 胎生 / 魚類 / 繁殖 / 分子シグナル / 真骨魚 / 妊娠 / 遺伝 / 進化 |
研究開始時の研究の概要 |
脊椎動物の繁殖様式は多岐に渡る。我々ヒトを含む哺乳類の大半は母体内で胚を育てる胎生で子孫を残すが、それ以外の分類群では卵を産む卵生がメジャーな繁殖方法となっている。だが一方で、胎生で子孫を残す種は魚類、両生類、爬虫類でも確認されており、多数派ではないにせよ複数の分類群で胎生形質が哺乳類とは独立して獲得されたことが分かっている。本研究ではカダヤシ目グーデア科に属する胎生真骨魚をモデルとして、哺乳類以外で獲得された胎生形質における妊娠維持の分子機構を探求する。
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研究実績の概要 |
妊娠は胎生動物を卵生動物と区別する特徴的な形質である。胎生種は哺乳類に限らず、複数の分類群で独立に出現している。妊娠を形作る遺伝基盤が種ごとに異なるのか、共通項も存在するのかを探求する。本研究では、グーデア科胎生真骨魚Xenotoca eiseniを材料とし、哺乳類とは異なる胚着床しない妊娠の分子機構を調べる。本研究では特に、X. eiseniの妊娠におけるLIF/STAT3シグナル経路の役割に着目する。解析を通じて、互いに独立に獲得された魚類と哺乳類の妊娠において、共通のシグナルが母仔間相互作用に関与する可能性を検証する。魚類と哺乳類における遺伝子機能の収斂や、共通する祖先因子の存在が示唆された場合、脊椎動物の胎生獲得における普遍的な制約やバイアスの議論が可能となる。これは繁殖様式の進化の探求に新しい学術的「問い」を提案する。 上記の目的のため、本研究では、グーデア科胎生真骨魚Xenotoca eiseniを材料とし、哺乳類とは異なる胚着床しない妊娠の分子機構を調べることを計画した。本研究では特に、X. eiseniの妊娠におけるLIF/STAT3経路の役割に着目し、互いに独立に獲得された魚類と哺乳類の妊娠において、共通のシグナルが母仔間相互作用に関与する可能性を検証した。 初年度は機能遺伝子の候補の選抜とクローニング、発現量の解析を計画し実行した。当初の予定通り、LIF/STAT3シグナル経路および血管新生、透過性制御に関わるとされる因子の抽出に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グーデア科胎生魚Xenotoca eiseniを用いて卵巣のトランスクリプトームを再解析したところ、研究計画当初に着目したLIF受容体遺伝子の他に、LIF/STAT3シグナルに関与することが知られている遺伝子をいくつかピックアップすることができた。抽出した遺伝子の発現量をqPCRにより未妊娠卵巣と妊娠卵巣で比較し、妊娠の前後で有意に変動していることを統計的に示すことができた。加えてコーディング配列のクローニングを実施し、哺乳類および近縁魚類の配列との比較を行った。ここまでのところ、哺乳類および近縁魚類と比較して明確な機能差が予想されるような遺伝子変異や挿入および欠失は見当たらなかった。LIFシグナル下流のリン酸化シグナルで機能するJAL/STATシグナルに関わる因子を抽出し、それらの遺伝子配列を明らかにした。今後は当初の予定通り、薬剤投与による妊娠期間の制御やリン酸化シグナルの変動を通じて、候補因子の機能解析へと取り掛かる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではSTAT3シグナル経路、VEGFシグナルを中心とする血管新生と透過性の制御が、グーデア科胎生魚の妊娠において重要な役割を果たしていると予想している。事実、ここまでの解析で関連遺伝子の発現変動が未妊娠-妊娠で検出できている。ここからは遺伝子発現量に留まらず、それぞれの具体的な機能を解析する。免疫組織科学あるいはin situ hybridization法により、それらのシグナルが機能している細胞種を特定する。加えてアゴニストおよびアンタゴニストの投与により生理的な役割を推定することが、今年度の主要な実施内容となる。
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