研究課題/領域番号 |
23K05883
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 株式会社生命誌研究館 |
研究代表者 |
蘇 智慧 株式会社生命誌研究館, その他部局等, 主任研究員 (40396221)
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研究分担者 |
岡本 朋子 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (50588150)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | イチジク属 / イチジクコバチ / 共進化 / 共種分化 / イチジク属植物 / 機能的共進化 / RNA-seq |
研究開始時の研究の概要 |
我々は最近、南西諸島でオオバイヌビワ(F. septica)とオオバイヌビワコバチ(Ceratosolen sp.)絶対送粉共生系において、「機能的共進化⇒共種分化」が進行中であることを発見した。本研究はその共生系を材料に、1)RNA-seq解析とゲノム比較解析によるコバチの花識別の適応進化の分子機構の解明と、2)コバチが地域集団の花識別に関わる匂い物質の特定を行い、共進化・共種分化のプロセスとメカニズムの理解に革新的な知見を加える。
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研究実績の概要 |
イチジク属植物とイチジクコバチ絶対送粉共生系は種特異性が高く、共進化と共種分化のモデル系として多くの研究がなされてきた。しかし、これまでの研究から共進化と共種分化の強い証拠はあまり得られていない。 我々は、台湾―琉球列島に分布するイチジク属の1種であるオオバイヌビワ F. septicaとその送粉コバチ(オオバイヌビワコバチ Ceratosolen sp.)を調べたところ、台湾、石垣島と沖縄本島の間で寄主植物の花の匂いの化学成分に違いがあることが判明した。花の匂いはイチジクとコバチの種特異性を維持するための最も重要な要素であるため、コバチの寄主植物に対する識別機能も地域間で異なっている可能性があると考えられる。そこで、花の匂いに対するコバチの選好性テストを行った。その結果、石垣島コバチは石垣島植物の花の匂い、沖縄本島コバチは沖縄本島植物の花の匂いをそれぞれ好み、逆には互いに忌避することがわかった。また、石垣コバチと沖縄コバチの花選好性の違いをもたらした花の匂い物質を特定するために、花の匂いに含まれる主要な物質および石垣花と沖縄花の間で含有量の異なる物質を用いて、コバチによる選好性テストを行った。その結果、両地域のコバチが明らかに異なる選好性を示す化学物質があることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究遂行によって、本研究で計画していた課題の一つである「沖縄および石垣個体群のコバチが、どの花の匂い化合物を好む(または忌避する)のか?」を明らかにすることができた。また、もう一つの課題である「どの遺伝子(群)・ゲノム領域が、寄主植物の花の匂いに対する識別機能の進化に関わっているのか? 」を明らかにするために、RNA-seqによるコバチの頭部・触角の発現遺伝子の網羅的比較解析も順調に遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、「どの遺伝子(群)・ゲノム領域が、寄主植物の花の匂いに対する識別機能の進化に関わっているのか? 」を明らかにするために、沖縄本島、石垣島と台湾の3集団のコバチの頭部・触角の発現遺伝子の網羅的比較解析を行い、集団間で発現が異なる遺伝子を検出し、花のにおい物質の受容体遺伝子を含め、化学感覚系遺伝子を中心に、オオバイヌビワコバチの地域集団間の花の匂いに対する識別機能の違いをもたらす候補遺伝子の特定を目指す。また、ゲノムの比較解析を通して、地域集団間の寄主植物の花識別に関わるゲノム領域の特定を行う予定である。
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