研究課題/領域番号 |
23K05891
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
田邊 力 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (30372220)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 擬態 / ヤスデ / ハエ / 警告色 / 自然選択 / 寄生 |
研究開始時の研究の概要 |
ミュラー型擬態の進化機構はほとんど解明されておらず、機構の解明が重視される進化生物学における未解決の重要課題となっている。申請者らが発見したヤスデ類のミュラー型擬態の系では、灰色擬態環形成から、その消失、新たなオレンジ擬態環への移行といった稀な進化パターンが見られる。本研究では、この特異な系を対象に、擬態環形成を促す鳥類捕食(擬態のベネフィット)に対して、ハエ類の捕食寄生(擬態のコスト)が逆向きに負の頻度依存的にはたらくことで、擬態環の形成、消失、移行をもたらしているかどうかを、野外実験・調査、系統推定等の多角的なアプローチにより検討する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、ヤスデ類のミュラー型擬態を含む警告色の多様化の進化メカニズム解明にあたり、ハエ類の捕食寄生がヤスデ警告色の多様化に与える影響に着目している。今まで得られた結果は、ハエ類の寄生率とヤスデ警告色モルフの相関といった間接的なものであり、直接に因果関係を示すものではなかった。そこで、ハエ類がヤスデ類を選好して寄生しているかどうかを実験で直接的に実証することを目的として、岐阜地方にて野外実験を行った。予備実験では、熊本地方にてヤスデを個別に小型容器に入れて、野外に2週間程度設置して、ヤスデが死なないことを確認した。岐阜地方での実験では、2種のヤスデを個別に小型容器に入れ、2週間野外に設置し、ハエがどちらのヤスデ種により寄生のために産卵するかを確かめた。結果は、ハエは、どのヤスデにも産卵しておらず、寄生データは得られなかった。原因としては、ヤスデを個別に小さな容器に入れる方法では、ハエが産卵しづらいこと、実験時期が10月と遅すぎたこと、などが考えられた。次回はより大型のコンテナにヤスデを複数個体入れたものを、8月から9月にかけて野外に2週間ほど設置し、ハエに産卵させる方法を検討する。 上記の野外実験の実施と並行して、岐阜および三重地方にて、ハエ捕食寄生の野外データを取得した。ハエに寄生されたヤスデを熊本の研究室に持ち帰り、飼育にてハエを羽化させる予定であったが、全てのハエの卵もしくは幼虫が輸送中または、飼育環境下で死亡し、輸送、飼育条件についての課題が明らかとなった。また、これらの作業を通じて、マムシ、ヤマビルの有害生物への対策が、これも課題として浮かび上がり、手袋、忌避剤、長靴等の装備を整えた。 これらの研究成果について、第71回日本生態学会大会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、ヤスデ類の分布、体色解析、系統解析、ヤスデに寄生するハエ類の寄生解析等、多方面の項目についてデータを得て解析する必要があり、研究課題全体を進めるためには多大な時間と労力を要した。
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今後の研究の推進方策 |
雇用の活用:本研究課題では、多岐に渡る多数のデータの取得、クリーニング、整理、及び野外実験の準備が必要になる。これらの遂行には多大な労力を要するため、雇用による技術支援を活用する。
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