研究課題/領域番号 |
23K05892
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
指村 奈穂子 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 協力研究員 (80824656)
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研究分担者 |
内貴 章世 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (30393200)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 撹乱 / 植物種多様性 / 林冠3Dモデル / 更新動態 / 台風撹乱 / 湿潤亜熱帯林 / 分布変遷 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、亜熱帯林の植物群集の種多様性に、台風撹乱がどの植物種にどの程度、どのような質的な影響を与えてきたのか、を明らかにするために、西表島において、①植物相調査と毎木調査から、種組成と林分構造を評価し、②過去80年分の航空写真から推定した林冠3Dモデルにより台風等の撹乱履歴を可視化・定量化することによって、③全ての維管束植物種について撹乱にどの程度依存して個体群を維持しているかを一覧にする。さらに、④特徴的な撹乱に影響されている種については、更新動態調査から分布変遷と撹乱の関係を考察する。これに基づき、亜熱帯林植物群集の種多様性について、将来の予測も行う。
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研究実績の概要 |
南西諸島の亜熱帯林は生物多様性が高く、気温・降水量に対する適応だけでは分布を説明できない植物も多くみられる。本地域は台風の常襲地帯であるため、台風による撹乱に適応して個体群を維持する植物が群集に加わって種多様性が高くなっている可能性が高い。本研究では、西表島の亜熱帯林において、植物相調査と毎木調査から種組成と林分構造を評価し【林分構造評価】、過去80年分の航空写真から推定した林冠3Dモデルにより台風等の撹乱履歴を定量化し【林冠3Dモデル】、更新動態調査から各種と撹乱の関係を考察する【更新動態調査】。これらに基づき、亜熱帯林植物群集の種多様性の維持に台風撹乱がどのように寄与しているかを明らかにすることを目的としている。 初年度は【林分構造評価】として、胸高断面積合計と胸高直径の歪度をすべての調査地(221地点)について集計し、撹乱依存種の程度を推定して種ごとにその順位を出した。その結果、亜熱帯林の林分構造は複雑で、温帯林でよく使われるこの手法で撹乱への依存程度を出すことは難しいことがわかった。【林冠3Dモデル】としては、もっとも古い米軍撮影(1964年)の航空写真を、西表島の約8割を覆う図幅で購入し、林冠3Dモデルを作成した。最も古い写真で解像度が低かったため、一部林冠3Dモデルがうまく作成できなかった部分があった。作成できた部分については、ギャップを階層ごとにポリゴン化することができた。精度比較のためのドローンによる林冠の撮影は、3地点行った。低空からの撮影のため、かなり高精度でギャップの検出が可能であった。【更新動態調査】としては、トランセクトの位置を復元し、稚樹の調査を、9箇所で行った。その結果、林冠構成種であるのに林床に全く稚樹が見られない種が多く検出された。これらは、現在の森林の状態では更新が見込めない種、つまり更新に何らかの撹乱が必要な種であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
西表島全体でフロラおよび毎木調査を行っているため、それと合わせて網羅的に過去の撹乱体制を評価する必要があり、西表島全体の航空写真を購入することにした。予算的に、3時期の写真をそろえられる見通しとなった。初年度はもっとも古い時期の航空写真を西表島全体の8割程度購入し、林冠3Dモデルを作成できた。初年度は、林冠3Dモデルを作成する方法を確立するのに時間を要したが、研究期間は3年のため、あと2年間で3時期の航空写真からの林冠3Dモデルを作成することは可能と考えられる。また、もっとも古い航空写真からの林冠3Dモデルは、航空写真の解像度の低さから、正確なモデルが得られない場所が散見された。新しい時期の航空写真は解像度がそれより高くなっているため、今後は全域での林冠3Dモデルが作成できる予定であるが、場所によってはギャップの面積と頻度を比較できるのが2時期になってしまうことになった。ドローンからの撮影画像の解像度は非常に高く、最も古い時期の写真とは作成される林冠3Dモデルの精度に大きな差があることがわかったものの、残りの写真はこれより解像度が高いため、精度の向上が期待できる。 更新動態調査は今年度9箇所で行うことができた。研究の期間は3年間であるので、3倍の20数箇所程度は行える見通しである。フロラ調査および毎木調査を行った地点の10分の1は網羅できる見通しとなったため、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、1964年の残りのエリアの写真を購入し、さらに新しい時期の写真を購入して、林冠3Dモデルを作成し、ドローンからの撮影画像にどの程度精度を近づけられるか検討するとともに、ギャップの面積および頻度を時代ごとに比較することによって、その場の撹乱体制を数値化する予定である。 また、更新動態調査は今年度、比較的アクセスしやすい調査地に偏ったので、今後さらに島の奥地でも同様の調査を行っていきたい。フロラ調査および毎木調査を行った地点すべてで行うことはできないが、なるべく多くの種が出現する場所を選んで効率的に調査を進めていきたい。 これらから、全ての維管束植物種について撹乱にどの程度依存して個体群を維持しているかを一覧にして、亜熱帯林の植物群集の種多様性を生み出し維持されてきたメカニズムとして「台風撹乱」がどの植物種にどの程度、どのような質的な影響を与えてきたのかを明らかにしていきたいと考えている。
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