研究課題/領域番号 |
23K05900
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
田中 和明 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (60431433)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 菌類 / 種分類 / 隠蔽種 / 分類体系 / 生物多様性 |
研究開始時の研究の概要 |
日本は菌類の種多様性が高いと考えられているが、その証拠となる具体的な事例はない。本研究では、日本の菌類相が他地域のそれに比べ多様で、かつ独自な種により構成されていることの例示を試みる。特にヨーロッパにおける従前の分類学的知見が豊富で比較が容易であり、かつ日本で広く分布するブナ類に焦点をあて、日本におけるその寄生菌の構成種について精査する。菌類バーコードマーカーの塩基配列相同性に基づき、隠蔽種および新規高次分類群の存在を仮定し、それらをスクリーニングする。選定された菌についてさらなる分類学的検討を行い、新規分類群を重点的に検出することで日本産菌類相の種多様性について再評価する。
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研究実績の概要 |
日本列島は生物多様性ホットスポットの一地域として認識されている。菌類についても種多様性の高さについて、繰り返し言及されてきたが、それを裏付ける直接的な証拠が示された例はない。菌学研究の出発点 (1729年) 以降、全世界で約12万種の菌類が記載されてきた。日本からは1.4万種の菌類が報告されている。しかし、この数字が「菌類の多様性が高い」とされる日本産菌類の種数として、妥当なものとは考えられない。 本研究では、日本における菌類相の種多様性について再評価することを試みる。菌類の種同定におけるバーコードマーカー(nrDNAのITSおよび28S領域)の配列相同性をもとに、新規高次分類群 (目や科レベル) 、新属・新種、隠蔽種 (表現形質では区別ができない種) が存在することを仮定する。それらを効率よく検出・明確化することで、日本独自の系統群 (または固有種) を見いだす。必要に応じ、ベータチューブリン (β-tubulin)、翻訳伸長因子 (TEF-1α)、RNAポリメラーゼⅡサブユニット (RPB2) などさらに系統的解像度が高い配列情報を取得し、多領域遺伝子配列に基づく分子系統解析により分類学的的な結論を得る。菌界最大の分類群である子のう菌門を対象とし、おもにブナ類寄生菌をモデルとして、多様性が高いとされる日本産菌類相に関する具体的な事例の提示を試みる。 2023年度はブナ類寄生菌以外にも、タケ科植物寄生菌の種に関する分類学的検討をすすめ、1新科・4新属・8新種の菌を命名・記載することで、日本における菌類多様性の一端を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、試料収集に重点を置いた。当研究室の所在地である青森県を含んだ東北地方のほか、奈良県、茨城県、栃木県において、菌類の採集調査を行った。特にブナ類、カエデ類、カツラ類、シナノキ類、シデ類、タケ類の寄生菌をターゲットとし、約100菌株の純粋培養株を確立した。そのうち約60菌株からDNAを抽出し、菌類のバーコーディング領域であるnrDNAのITS(または28S領域)塩基配列を取得し、基本的な系統情報の把握を試みた。これら以外にも約100菌株の試料を新たに純粋分離中である。 前年度までに分離済みの菌株からも、バーコーディング領域に加えさらに系統的解像度が高いマーカーの配列取得をすすめ、約200配列を新たに得た。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、菌類の配列決定に重点を置く。バーコーディング領域の配列データに基づく配列相同性検索の結果から、「高次分類群」・「新属・新種」・「隠蔽種」の存在を予測し、その存在を検証する。 バーコーディング領域に加え、β-tubulin、TEF-1α、RPB2などさらに系統的解像度が高い配列情報を取得し、多領域遺伝子配列に基づく分子系統解析のための準備を整える。
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