研究課題/領域番号 |
23K05920
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
乾 陽子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (10343261)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | クロヤマアリ / ナナホシテントウ / フェロモン / 闘争回避 / 忌避 / 競争 / 化学的傍受 |
研究開始時の研究の概要 |
アリは化学的なコミュニケーションに長け、フェロモンなど多様な化合物を豊富に分泌する昆虫である。好蟻性昆虫やアリ食昆虫などアリ利用者では、こうしたアリのフェロモンを傍受して目的のアリ種を識別する例が知られているが、アリを避けたい昆虫では化学的傍受の研究が進んでいない。身近な例として、アブラムシ捕食者であるテントウムシは、アブラムシ随伴アリによって追い払われると言われるが、実際には直接闘争することは少なく、テントウはアリの存在を察知して接触前に忌避することが分かってきている。本研究では、アリと敵対する昆虫も、アリのフェロモンを傍受してアリを避けるために活用している可能性について検証する。
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研究実績の概要 |
ナナホシテントウなどの捕食性テントウムシは成虫も幼虫もアブラムシ類を主要な餌とし大量に捕食するが、アブラムシのなかには甘露でアリを随伴させてアリによる保護サービスを享受する種もいる。普通種の随伴アリと普通種のテントウムシは、野外でいずれも同所的に豊富にみられるので、アブラムシをめぐって衝突することは頻繁にあると予想される。しかし、アリにとってもテントウにとっても直接的な衝突はハイリスクでハイコストのはずである。さらにアブラムシコロニーは季節的変動が大きいものの同じ時空間においては高密度であるので近接した場所に他のコロニーが多く存在する確率が高い。したがって、テントウはアリが随伴するアブラムシパッチはあらじめ避けてアリがいないアブラムシコロニーを選択するという採餌行動をとるのが安全で有利なはずである。本年度はテントウのアリに対する行動およびアリのテントウに対する行動を予備的な行動実験系で評価した。その結果、ナナホシテントウはアリの存在に対して、アリを視覚的に認識できなくても採餌行動が抑制されることが示唆された。また、単純停止だけではなくその場で転向する行動が見られた。移動量に関しては画像解析によって詳細で定量的な評価ができることがわかったが、転向を画像解析で検出する点に課題が残った。また、アブラムシを付加した実験系で行動がどのように変化するかは今度の課題である。 また、テントウがアリ識別のてがかりとして利用する刺激の候補として、アリが放出している化学プロファイルを調べるために、人為的に撹乱した場合と静置した場合とでヘッドスペースの化合物を分析したが、組成はほとんど共通しており組成比に著しい違いが見られた。採餌時のヘッドスペースについては行動実験と同様にアブラムシ付加系の確立を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テントウの行動を定量的に評価するために、実験アリーナを直上より撮影したビデオ映像から、テントウの位置座標を追跡することができるトラッキングソフトを導入して画像解析をし、それによりテントウの移動量を評価する調査方法を試みた。追跡ソフトの適用は移動の定量評価に使えることがわかった。この方法の課題点として、テントウが座標位置はほとんど変わらないまま体の向きのみを変える行動を示した時に、単純停止と区別できないという問題が見出された。特に成虫の場合、シルエットが丸く定位を検出できないので、映像で判別可能な向きのみの変更がトラッキングできなかった。向きのみを目視で抽出するのは極めて効率が悪いため、他の手法を検討する余地がある。 また、アリ由来フェロモンをヘッドスペース法により採集したが、通常時の匂いであるかを確認するため、人為的に撹乱したときのヘッドスペースと比較したところ、組成はほとんど違わず組成比に顕著な違いがあった。ただし、警報フェロモン成分として知られる成分も多くあった。 アブラムシの飼育系はマメアブラムシのみで立ち上げたが、猛暑の影響で夏季に野外密度が著しく低下して補充できず、室内系での累代も低密度になったが、低密度でも維持できることがわかった。ただテントウ飼育系の餌供給は不安定となったため、初年度は成虫のみの予備実験とした。
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今後の研究の推進方策 |
行動実験ではビデオ映像でトラッキング解析をするだけではなく、直線的な実験装置を作製し、直線的移動と定位を評価できる系も試みる。また、確実に停止行動と方向変換とを区別できる解析方法について検討を進める。 アリフェロモンについては、採餌時のヘッドスペースから植物やアブラムシのバックグラウンドヘッドスペースを差し引く方法で検出できないかを試みる。 アブラムシの飼育系についてはヒゲナガアブラムシもすでに今春より飼育系を立ち上げており、十分な餌供給態勢を整えつつある。
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