研究課題/領域番号 |
23K05925
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
高橋 純一 京都産業大学, 生命科学部, 准教授 (40530027)
|
研究分担者 |
保坂 健太郎 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (10509417)
清 拓哉 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (40599495)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | ミツバチ / 真菌 / 発酵 / 相利共生 / ゲノム解析 / 細菌 |
研究開始時の研究の概要 |
社会性昆虫と微生物の間には、シロアリやハキリアリなどに代表される高度な真菌との相利共生関係が古くから知られている。その一方で、同じ高度な真社会性を持ちコロニーを形成するハナバチ類において、微生物との共生関係に関する知見はほとんど知られていない。近年、我々のグループがニホンミツバチと共生関係の可能性がある真菌を発見した。 本研究では、ニホンミツバチと真菌類における相利共生関係の解明と、真社会性のコロニー維持に果たしている役割ついて、行動観察、解剖、遺伝子解析、栄養成分の分析、真菌培養などの方法を利用して解明する。
|
研究実績の概要 |
本研究では,多検体のハチミツから単離したDNAを元に,26s rDNA D1/D2領域で酵母の種特定および種内において多型が検出可能か検証を行った。57個のニホンミツバチの発酵したハチミツを解析に使用した。ハチミツ中から単離したDNAは,真菌の26s rDNA D1/D2領域を増幅するNL1/NL4プライマーを用いたシーケンス解析により,酵母Zygosaccharomyces属の種同定が可能なことがわかった。シーケンス解析は,57サンプルから約600bpのDNAの塩基配列の解読に成功した。解読した57サンプルは,2つのDNAタイプが確認された。この2つについて,DNAデータベース上で種同定をおこなったところ,ニホンミツバチのハチミツ中から単離された真菌DNAは,Z. siamensisと同定された。一方,セイヨウミツバチのハチミツから単離された真菌DNAは,Z. mellis と同定された。日本産のハチミツは,タイ王国の生ハチミツや中国のハチミツ,イギリスの生姜から単離されたZ. siamensisと同じクラスターであった。台湾のセイヨウミツバチのハチミツに含まれていたZ. mellisは,ポルトガルのハチミツから単離されたZ. mellisと同じクラスターであった。ニホンミツバチの発酵したハチミツに含まれる真菌のDNAを解析したところ,2種の酵母を検出することができた。ニホンミツバチのハチミツからは,Z. siamensisを特定することができた。セイヨウミツバチのハチミツからは,Z. mellisを検出した。ニホンミツバチのハチミツの発酵に,Z. siamensisが関与している可能性を示唆する結果を得ることができた。分子系統解析から,ニホンミツバチのハチミツに存在するZ. siamensisは,耐糖性酵母であるZ. mellisと姉妹種であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度はニホンミツバチと共生関係にある真菌を特定し、真社会性の維持まで、どのような相利共生が存在するのか、分子生態学的手法を用いて明らかにする予定であった。ニホンミツバチと共生関係の可能性がある真菌類を対象に行動観察、組織染色、栄養成分分析、遺伝子解析手法等を用いて、ニホンミツバチの巣房に貯蔵されているハチミツおよび花粉から培養法とDNAメタバーコーディング法により真菌類の種同定することができた。2023年度に計画していたニホンミツバチの働きバチが採餌するを観察、形態調査、次世代シーケンサーによるDNAメタバーコーディング法により、種および系統を同定解析も予定通りにほぼ終了することができた。種・系統の同定のために日本各地のニホンミツバチの遺伝的多様性の高い地域や、遺伝的特異性の高い島において、季節ごとに観察調査と検体のサンプリング調査を行うこともできた。2023年度は以上にように当初予定していた計画の90%以上を遂行することができたことと、それらの研究の一部は学会発表および論文にすることができたため(2)とした。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は前年度に各地で採集したハチミツのうち、未発酵と発酵したハチミツと花粉について、栄養成分をHPLCにより解析する。ニホンミツバチの発酵と未発酵したハチミツと花粉について、HPLCと酵素法により栄養素(水分、たんぱく質、脂質、灰分、炭水化物、糖質、ナトリウム、食物繊維)の分析、20種のアミノ酸(ミツバチの必須・非必須)、ミネラル(ミツバチのマクロ・ミクロ)の分析を行う。さらにGC-MSによるエタノールおよび糖(スクロース、グルコース、フルクトース)の含有量を定量する。これらの結果をもとに比較解析を行い、微生物とミツバチとの相利共生(正の適応度効果)について検証する。 次に共生微生物が局在する器官を特定するため組織染色とLAMPで器官ごとのDNA定量解析データから局在器官を特定する。昆虫では共生微生物を貯蔵するための局在器官(マイカンギア)が発達している場合が多い。そこで本研究では、ニホンミツバチの働きバチの組織標本を作製し、免疫染色法により微生物の局在器官を特定する。また、特定した真菌類のDNA配列データをもとにLAMP用プライマーを設計し、器官ごとのDNA定量解析データと合わせることで、局在器官を特定する予定である。
|