研究課題/領域番号 |
23K05930
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
|
研究機関 | 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター) |
研究代表者 |
冨田 武照 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 動物研究室, 主査研究員 (90774399)
|
研究分担者 |
佐藤 圭一 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 動物研究室, 上席研究員 (80721745)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 人工子宮装置 / 胎生 / サメ / ルシフェリン / 板鰓類 / 生物発光 / 人工子宮 |
研究開始時の研究の概要 |
深海ザメの一種であるフジクジラ類は自家発光の能力を獲得した最古の魚とされ、脊椎動物における生物発光の初期進化を知る上で重要な意味を持つ。近年、フジクジラ類の発光物質(ルシフェリン)は、サメの体内で生成されたものではなく、餌に由来するとする仮説「ルシフェリン盗用説」が注目されているが、未だ検証には至っていない。 本研究では、申請者らの開発した人工子宮装置でフジクジラ幼魚を育成し、その幼魚にルシフェリンを投与することで発光が誘導できるか調査すること、野生個体の胃内容物からルシフェリンを検出すること、の二つのアプローチにより「ルシフェリン盗用説」の検証を行う。
|
研究実績の概要 |
フジクジラ類は「光るサメ」として知られているが、その発光メカニズムは未だ不明な点が多い。本研究は、胎仔の母体外飼育を行うことで、サメの発光基質(ルシフェリン)が餌由来であるとする仮説の検証を行うことを目標としている。我々が開発した人工子宮装置内で飼育したヒレタカフジクジラの胎仔を高感度カメラにて観察を行なったデータを解析し、胎仔が装置内で光っていたことを確認した。この結果は、ヒレタカフジクジラの胎仔が外界から発光基質(ルシフェリン)を経口接種することなく発光していることを示しており、自前で発光基質を生産している可能性を示唆するものと考えられる。加えて、2022年から装置内で飼育していた胎仔を2023年4月に出産させた。人工子宮内での維持期間はこれは胎生サメ類の母体外保育の公式記録としては最長のものであるだけでなく、我々の人工子宮装置が、妊娠中期から妊娠後期までカバーできることを示したものであると考えられる。生まれた新生個体は、現在も生存しており、人工子宮装置から生まれた個体の生存最長記録を更新中である。さらに、2023年に新たな仕組みの人工子宮装置を開発し、2023年から2024年にかけて、新たに導入したヒレタカフジクジラの胎仔の飼育を行なった。この仕組みは、水浄化フィルターを取り除いた点で過去の装置と大きく異なっており、その代わりに装置の大幅な縮小に成功した。その効果については、過去の飼育データとの比較を行い、現在検証中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工子宮装置が正常に稼働し、ヒレタカフジクジラの胎仔の飼育実験を計画通り複数回実施できた。その過程で、ヒレタカフジクジラの胎仔の発光が、分娩前にすでに開始していることが分かったことは、本研究テーマ遂行において重要な進展と言える。なお、飼育実験によって、装置内での最長期間維持と、人為出産後の最長期間維持を同時に樹立しており、この点も重要な成果と考えられる。これらの成果は、2本の学術論文として出版しており、この成果は国内外のメディアにも大きく報じられた。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究により、胎仔が餌生物の経口摂取を行う前から体内にルシフェリンを保持しており、発光能力を持つことが明らかとなった。しかし、母体が餌生物から取り込んだルシフェリンを胎仔に移行させている可能性は未だ残されている。そこで、人工子宮内でのヒレタカフジクジラの胎仔の飼育実験を継続すると同時に、胎仔の体内に餌由来のルシフェリンが含まれていないか確認する実験を計画している。 また、高感度カメラを海底に沈め、ヒレタカフジクジラの発光に季節性があるかどうかを観察することで、本種の発光生態について新たな情報を得ることを計画している。
|