研究課題/領域番号 |
23K05934
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
阿座上 弘行 山口大学, 大学研究推進機構, 教授 (40263850)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | オートインデューサー / バイオフィルム / 口腔細菌 / 外膜小胞 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、まずポーリンによるAI-2の不活化機構やその生理学的意義を明らかにする。さらに、他の口腔細菌のバイオフィルム形成や病原性にAI-2の不活化がどのように影響するかを調べる。これにより、AI-2の不活化によるバイオフィルム抑制剤、歯周病治療薬としての可能性を調べる。
|
研究実績の概要 |
我々は、歯周病関連細菌Eikenella corrodensから細菌間の会話物質AI-2を不活化する因子を見つけ、AI-2の不活化にポーリンが関わることを明らかにした。多くの病原細菌の病原性は細菌間の会話によって調節されている。したがって、本研究では、ポーリンによるAI-2の不活化を応用して、病原微生物の制御方法の開発を目指した。 AI-2の不活化メカニズムとして、細菌が放出する外膜小胞(ベシクル)にポーリンを介してAI-2が隔離される仮説を立てた。本研究では、まずその仮説を立証し、本菌におけるAI-2不活化の生理的意義を明らかにする。さらに、他の口腔細菌のAI-2に対しても一般的に不活化が行われるのか、そのAI-2の不活化が他の口腔細菌のコミュニケーションにどのように働くかを調べた。 E. corrodensが生産するAI-2不活化因子をう蝕原性細菌S. mutansに与え,S. mutansのバイオフィルム形成に及ぼす影響を調べた。そのために,S. mutansの細菌間コミュニケーションに関わる遺伝子の欠損株を利用した。その結果,AI-2不活化因子がS. mutansのバイオフィルム制御に関わることを明らかにした。さらに,S. mutansのバイオフィルム形成とその制御に関する知見を得るために,植物由来の放線菌や南極から単離した細菌の培養上清からS. mutansのバイオフィルム形成の阻害物質のスクリーニングを行い,いくつかの候補物質を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯周病関連細菌E. corrodensが生産するAI-2不活化因子を精製し,う蝕原性細菌S. mutansの培養液に添加したところS. mutansのバイオフィルムの抑制が見られた。S. mutansにはAI-2以外にもCSPとXIPという会話物質も存在し,バイオフィルムや多糖生産など菌の病原性を複雑に制御している。そこで,CSPやXIPが生産できない欠損株を用いて,AI-2不活化因子がS. mutansのバイオフィルム抑制にどのように関わっているかを調べた。その結果,バイオフィルムの制御にはAI-2のみでなくCSPも関与していることが示唆された。 また,S. mutansのバイオフィルム形成とその制御に関する知見を得るために,植物由来の放線菌や南極から単離した細菌の培養上清からS. mutansのバイオフィルム形成の阻害物質のスクリーニングを行った。その結果,いくつかの候補物質が得られ,現在その精製と同定を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
E. corrodensの培養液中に組換えポーリンを再構成させた人工膜小胞を添加し、バイオフィルム形成能や溶血活性、レクチン活性など本菌の病原性にAI-2の不活化が及ぼす影響を調べる。また、AI-2の不活化が起こらないポーリン遺伝子欠損株を作成する。さらに、欠損株にポーリン遺伝子を戻した相補株も作成する。このポーリン遺伝子の欠損株や相補株を用いてAI-2の不活化が本菌の病原性に及ぼす影響を調べ、本菌におけるポーリンによるAI-2不活化の生理的意義を探る。 虫歯菌であるStreptococcus mutansや歯周病菌であるAggregatibacter actinomycetem-comitansやPorphyromonas gingivalisも、AI-2を使ったコミュニケーションにより病原性をコントロールすることが知られている。これらの細菌の培養液に組換えポーリンやそれを組み込んだ人工膜小胞を加え、病原遺伝子の発現にどのような影響を与えるかを調べる。 また、細菌は通過できないがAI-2などのシグナルや不活化因子は通過可能な膜で仕切られたマイクロタイタープレートを使って、E. corrodensと上記の口腔細菌を膜を隔てて共培養する。これにより、E. corrodensが産生するポーリンやベシクルが他の口腔細菌の病原性に影響を及ぼすかどうか調べる。
|