研究課題/領域番号 |
23K05935
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
廣田 峻 大阪公立大学, 研究推進機構, 特任助教 (80713560)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 種分化 / 生殖隔離 / 遺伝子流動 / 種間交雑 / 交雑 / 送粉 |
研究開始時の研究の概要 |
種分化過程において遺伝子流動は多様性の供給によって進化を促進する一方で、遺伝子プールの均質化によって分化を抑制する。キスゲ属では、異なる送粉者に適応して多様な花形質が進化したが、受粉後生殖隔離は不完全なために自然雑種集団が存在する。本研究では、東アジアで多様化したキスゲ属を対象に、集団動態推定やゲノム分化解析、選択の検出などのゲノム解析と生殖隔離機構の測定を組み合わせることにより、種分化プロセスにおける遺伝子流動の影響を検証する。
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研究実績の概要 |
異なる送粉者に適応し花形質に違いがみられるものの、個々の生殖隔離機構は不完全だと考えられるキスゲ属を対象に、一塩基多型に基づいて種分化以降に生じた遺伝子流動の有無とその時期を推定した。日本産キスゲ属6分類群(ノカンゾウ、ニシノハマカンゾウ、トウカンゾウ、ゼンテイカ、トビシマカンゾウ、ユウスゲ)、ロシア産キスゲ属2分類群(エゾゼンテイカ、マンシュウキスゲ)について、MIG-seq法により解読された断片配列をユウスゲのゲノム配列にマッピングし、変異検出を行った。得られた一塩基多型データを用い、集団動態モデリングにより、過去の遺伝子流動を推定した。 その結果、遺伝子流動が存在しない状況で異所的に種分化が起こり、その後、二次的接触により遺伝子流動が生じたというシナリオが支持された。ただし、どの組合せでも遺伝子流動は比較的小さいことから、複数の機構が機能することで生殖隔離が維持されていることが示唆された。さらに、昼咲性半日花から夜咲性半日花への非対称な遺伝子流動が検出された。昼咲性半日花と夜咲性半日花の分類群は夕方の数時間、開花時間が重複する。この状況では、先に開花している昼咲性種から夜咲性種への花粉の持ち越しが起こりやすい可能性がある。解析分類群のうち、ゼンテイカとユウスゲ、ゼンテイカとノカンゾウはキスゲ属の中でも最近二次接触が起こった傾向がみられた。ゼンテイカは寒冷地、ユウスゲ・ノカンゾウは温暖地に分布する。気候の大きく異なる地域で分化したことが二次接触までに時間を要した可能性がある。今後、種分化後の集団動態と生殖隔離機構の関係について検証を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次世代シークエンサーを用いてゲノムワイドSNPデータを取得し、集団動態モデリングを実施した。さらに、次年度実施予定のリシーケンスについても予備実験を行い、ゲノム情報の取得について問題ないことを確認できた。 また、生殖隔離機構を測定するためにキスゲ属各種合計約350鉢の栽培株を収集し、人工交配実験など生殖隔離機構を検証する予備実験を行っている。順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
キスゲ属各種についてゲノムリシーケンスを行い、全ゲノムレベルでの遺伝的分化比較を行う。対象の分類群ペアがゲノムレベルで一様に分化しているのか、それともIsolation of Speciationといえるような分化か進んだ領域があるのかを検証する。 収集した栽培株を用いて、受粉前隔離に関与する開花時期や花色の測定、人工授粉による受粉後隔離の検出を行う。生殖隔離機構とゲノムレベルでの遺伝的分化の関係について検証する。
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