研究課題
基盤研究(C)
線虫は全神経細胞とその接続が同定済みの唯一の生物であり、神経回路の動作原理を明らかにする上で理想的なモデル生物である。頭部全神経の活動計測で得られた神経活動を回路レベルで解析するためには、観察された細胞を回路中のいずれかの神経細胞と対応付ける細胞同定が必要である。本研究では遺伝子発現パターンを取得するための既存手法を線虫向けに改良し、1個体中の全ての神経細胞において多数の遺伝子の発現パターンを取得して、遺伝子発現のばらつきを考慮した正確な自動細胞同定手法を開発することを目指す。
線虫は全神経細胞とその接続が同定済みの唯一の生物であり、神経回路の動作原理を明らかにする上で理想的なモデル生物である。代表者は神経細胞の検出や同定技術を開発し、線虫の頭部全神経の同時計測を実現した。しかし代表者らが開発した細胞同定手法は遺伝子発現のばらつきの影響で自動化が困難であった。そこで本研究ではseqFISH法等を線虫向けに改良し、1個体中の全ての神経細胞において多数の遺伝子の発現パターンを取得して、遺伝子発現のばらつきを考慮した正確な自動細胞同定手法を開発することを目指す。本年度はまず、seqFISH法で用いられるHybridization Chain Reaction (HCR)とよばれる蛍光 in situ hybridization法を線虫へ適用し、eat-4遺伝子のmRNAを検出できることを確認した。またサンプルをゲルに埋め込み、プローブを一旦洗浄したのちリプロービングすることでeat-4遺伝子のmRNAを繰り返し検出できることを確認した。このようにseqFISH法の線虫への適用を実証できた。なお研究期間中に、サンプルをゲルへ埋め込む際に頻用される試薬が長期間入手できなくなった。そこで類似手法で利用実績のある試薬を検討し、seqFISH法へ適用できる試薬を選定することができた。また既存の1細胞遺伝子発現データを参考にして、細胞同定に適した遺伝子の候補を100個程度抽出した。
3: やや遅れている
サンプルをゲルへ埋め込む際に頻用される試薬が長期間入手できなくなるなど、追加的な実験のステップが必要になったため。
線虫個体サンプルをゲルへ埋め込んだあと、溶液交換などの処理中にサンプルが脱離するケースがみられたため、ゲルへの埋め込みを多段階化するなどの対策を検討する。またseqFISH+法ではHCR法とは異なる蛍光 in situ hybridization法を利用する。この方法を線虫に適用し、HCR法と比較することで、取得した蛍光画像のSN比などを向上できるか検討する。
すべて 2024 2023 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)
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https://www.bs.s.u-tokyo.ac.jp/~toyoshimalab/
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