研究課題/領域番号 |
23K05960
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
竹内 勇一 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (40508884)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 左右性 / 脳の左右差 / 利き / 捕食被食関係 / 学習 / 捕食行動 / 遺伝子解析 / 魚類 |
研究開始時の研究の概要 |
我々の右利きと左利きは日常的に目にする現象であるが、細胞・分子レベルで調べた研究はこれまでにほとんどなく、未開拓となっている。獲物の魚の体側を襲い鱗をはぎ取って主食とする鱗食魚Perissodus microlepisは、口部形態と行動の左右性が明確で、利きの神経系・遺伝子・分子基盤を理解することが期待できる優れたモデルである。本研究では、鱗食魚における捕食行動の左右性の責任部位が視覚入力系や後脳マウスナー細胞を中心とする視蓋-網様体脊髄路系にある、という仮説を神経科学的・行動学的・分子遺伝学的手法で検証する。
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研究実績の概要 |
片眼の機能的優位性について、視覚刺激誘導性反応から検証した。鱗食魚1匹を入れた細長い水槽の両側にモニター2台を置き、片眼ごとにルーミング刺激を与えて逃避反応を記録した。その結果、左利き個体はランダムよりも右眼からの刺激に、右利き個体は左眼からの刺激により反応して、利き間では有意な違いがあった。すなわち、開口側の眼は視覚刺激に反応しやすいという、感覚機能の優位性をもつと考えられる。 次に、捕食時に片眼を使えないようにするために、メタノールを眼球注射して人工的に白内障を促す処理(視覚阻害処理)をして、捕食実験を行った。開口側の眼(右利き個体の左眼、左利き個体の右眼)を阻害した場合、処理前には9割以上だった利き側からの襲撃が、処理後は5割にまで低下し、捕食成功率も大きく低下した。さらに運動解析から、利き側襲撃でみられる獲物に噛みつく胴の屈曲運動において、処理後では角速度と屈曲角度の変化量が大きく低下していた。開口側の視覚阻害により、襲撃の正確なタイミングがとれないと示唆される。一方で、開口側とは反対側の眼を阻害した場合は、処理前後で襲撃方向が変化した個体はおらず、処理後も開口側から9割以上襲い、捕食成功率も維持されていた。したがって、開口側の単眼視野が捕食行動にとって重要な利き眼であることが分かった。 さらに、視覚阻害後に変化した捕食行動が捕食経験で変化するのかを明らかにするため、幼魚・若魚・成魚を用いて、数日おきに捕食実験を計5回行った。幼魚と若魚では、処理前には8割以上だった利き側からの襲撃が、処理直後は3割にまで低下し、捕食成功率も大きく低下した。一方、成魚では処理後においても本来の利き側から襲撃する傾向が残っていた。捕食実験を5回繰り返すと、幼魚は襲撃方向の好みが反転したが、成魚では経験による変化は見られなかった。以上より、発達依存的な可塑性の存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
開口側の視野が捕食や逃避にとって重要な利き眼であることが明らかになった。利きの発達については総説1本を発表し、原著論文を執筆している。
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今後の研究の推進方策 |
視覚阻害後に変化した捕食行動が捕食経験で変化するのかを明らかにする。 鱗食魚の下顎骨の左右差の拡大が、身体の発達に伴う自律的な変化か、鱗食経験による変化なのか、形態的左右差の可塑性を検証する。 捕食時における脳内神経活動を調べるため、リン酸化リボソームタンパク質を免疫組織化学法で検出する。
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