研究課題/領域番号 |
23K05963
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮本 章歳 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (60632924)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 抗体改変 / 小型抗体 / 超解像顕微鏡 / 神経伝達 |
研究開始時の研究の概要 |
神経間の情報伝達を担う「シナプス」は記憶・学習の基盤である。シナプスでの情報伝達を効率的に行なうために、シナプスでは神経伝達物質の放出場所と神経伝達物質受容体が対合した構造 (ナノカラム) が形成される。つまり、ナノカラム形成がシナプス伝達の鍵である。しかしながら、ナノカラムの制御メカニズムは未だ分かっていない。ナノカラムの制御メカニズムの解明には、超解像レベルでシナプスを構成するタンパク質の分子局在を解析することが必要である。本研究では、無制限の多重染色が可能な超解像顕微鏡IRISを用いて、シナプスの構成タンパク質の網羅的な超解像分子マッピングを行い、ナノカラムの制御メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
神経間の情報伝達を担う「シナプス」は記憶・学習の基盤である。シナプスでの情報伝達を効率的に行なうために、シナプスでは神経伝達物質の放出場所と神経伝達物質受容体が対合した構造 (ナノカラム) が形成される。つまり、ナノカラム形成がシナプス伝達の鍵である。しかしながら、ナノカラムの制御メカニズムは未だ分かっていない。ナノカラムの制御メカニズムの解明には、超解像レベルでシナプスを構成するタンパク質の分子局在を解析することが必要である。 そのため、2023年度ではナノカラムを形成するタンパク質に対する改変抗体プローブの拡充を行い、合計30種類のシナプル周辺タンパク質に対する改変抗体プローブを開発した。こうした研究の過程で、重要な課題に気がついた。それは、イメージングに使う改変抗体プローブのサイズである。 神経伝達の場であるシナプス間隙は20ナノメートルしかなく、観察対象であるナノカラムは100ナノメートル四方に非常に多くのタンパク質が密集する空間である。一般的な蛍光観察に使われる抗体の大きさはおよそ14ナノメートルx 8.5ナノメートルである。我々は抗体の可変領域のみからなる抗体断片を使用しているため、現状使用している蛍光タンパク質を付加した改変抗体プローブは約8ナノメートルx 4ナノメートルと、一般的な抗体よりコンパクトである。しかし、ナノカラムの忠実な観察には改変抗体プローブを最小サイズにする必要があると考えた。そこで、これまで改変抗体プローブは蛍光観察するために蛍光タンパク質を使用していたが、sortaseとTEV proteaseを用いて改変抗体プローブのカルボキシル末端に蛍光分子を結合させる方法を確立した。その結果、改変抗体プローブのサイズを約4ナノメートルx 4ナノメートルと最小サイズにすることに成功し、ナノカラム構成タンパク質群の忠実な観察環境を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で記述したように、ナノカラムの構成タンパク質の忠実な観察および構成タンパク質の同定のためには、可能な限り小さなプローブを用いる必要がある。そのため、2023年度の後半で改変抗体プローブを蛍光色素で標識する方法の確立を行なった。抗体を蛍光色素で標識する方法は既にあるが、改変抗体プローブの特性を変えないために、特定の部位 (カルボキシル末端) に蛍光色素を導入する必要があった。そこで、特異的な識別シグナル (LPXTGモチーフ) にポリグリシンペプチド(グリシンが3つ以上連続するペプチド)を結合できるソルターゼと、グリシン突出末端ペプチドを産生できるTEVプロテアーゼを用いて、改変抗体プローブのカルボキシル末端を蛍光色素で標識する方法を確立した。 この標識方法では、ソルターゼとTEVプロテアーゼの2種類の酵素を使用するため、これらの酵素の大量精製法の確立および反応条件の確立に予想以上に時間がかかったため、当初の予定よりも少し遅れているが、今後の忠実かつ正確なナノカラム解析のためには必要不可欠な時間であったと考える。さらに、従来の蛍光タンパク質付加型の改変抗体プローブよりも、蛍光色素標識型の改変抗体プローブは分子サイズが小さくなったため、改変抗体プローブの精製収率が100倍ほど改善することもでき、今後のナノカラム解析をより円滑に進められるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)シナプス可塑性の可視化法の確立 本実験では、IRISイメージングでシナプス可塑性を判別する方法を確立する。シナプス可塑性は、スパイン膜上に局在するグルタミン酸受容体 (AMPA受容体とNMDA受容体) の分子数の割合で判断される。そのため、スパイン膜上にあるAMPA受容体やNMDA受容体を特異的に可視化することでシナプス可塑性を判別する。具体的には、細胞外ドメインに対するIRISプローブを使用し、細胞膜透過処理前の標本でIRISイメージングを行い、スパイン膜上のAMPA受容体やNMDA受容体の数を定量する。さらに、細胞膜透過処理後に再度IRISイメージング行うことで、スパイン内に取り込まれた受容体数も定量し、受容体総量に対する膜上の受容体量を解析する。これらの情報からシナプス可塑性の状態を判断する。また、化学的に長期増強 (LTP)・長期抑圧 (LTD) を誘導した時のAMPA受容体/NMDA受容体の割合を調べ、IRISイメージングによってシナプス可塑性を判別できているかを確認する。
(2) ナノカラムを形成する分子群の特定 本実験では、ナノカラム形成に関わる分子を特定する。具体的には、研究内容 (1) の方法でナノカラムをIRISイメージングし、さらにシナプス構成タンパク質群に対する多重IRISイメージングを行い、シナプス構成タンパク質の網羅的な超解像分子マップを作製・解析することで、ナノカラムと局在が相関するタンパク質を特定する。IRISイメージングを行なう対象として、細胞接着因子、神経伝達物質受容体、足場タンパク質などを考えている。
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