研究課題/領域番号 |
23K05970
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
佐竹 伸一郎 生理学研究所, 脳機能計測・支援センター, 助教 (30360340)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 小脳 / シナプス前促通 / タンパク質リン酸化酵素 / シナプス / 細胞内シグナル伝達 / カルシウムチャネル / パッチクランプ法 |
研究開始時の研究の概要 |
脳・中枢神経の軸索終末では、活動電位の伝播に伴い、1個以下のシナプス小胞体が開口放出されると考えられてきた(単一性放出 univesicular release, UVR)。しかし、1回の活動電位当たり、複数のシナプス小胞体が複数の放出部位から同期的に、もしくは単一の放出部位から連続的に放出される、多重性放出(multivesicular release, MVR)が存在することも指摘されている。本研究では、シナプス前促通(presynaptic facilitation)をMVRの関与を指標として分類し、一つのシナプス結合部に異なる様式の開口放出機構が機能する生理学的意義とその分子的基盤を追究する。
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研究実績の概要 |
ラット小脳顆粒細胞‐分子層介在神経(籠細胞)軸索起始部間のグルタミン酸(Glu)作動性シナプスは、顆粒細胞軸索(上向性線維)のパルス刺激に伴い、介在神経から記録される興奮性シナプス後電流(EPSC)の振幅と減衰時間(減衰時定数 decay time constant, τ)が増大する。これまでに、減衰時間のペアパルス増強(paired pulse prolongation of the EPSC decay, PPPdecay)は、シナプス小胞体の放出多重性の変化、即ち単一性放出(univesicular release)から多重性放出(multivesicular release, MVR)への切り替わりにより、伝達物質Gluがシナプス間に拡散・蓄積するために引き起こされたことを報告している。
タンパク質キナーゼC(PKC)を活性化する作用があるホルボールエステルは、小脳顆粒細胞(平行線維)‐プルキンエ細胞間シナプスにおいて EPSCの振幅を増大させる。このとき同時に、振幅値のペアパルス比が減少する(シナプス前促通)。顆粒細胞‐介在神経間シナプスにおける PPPdecayの分子的背景と生理的意義を追究する過程で、ホルボールエステル PDBuは MVRとEPSC減衰時間の増大を伴うシナプス前促通を誘発することを発見した。一方、アデニル酸シクラーゼ作動薬 forskolinは、EPSCの減衰時間に影響しない様式でシナプス前促通を引き起こした。アデニル酸シクラーゼによって産生される cAMPは、タンパク質キナーゼA(PKA)の活性化を促す。これらの結果は、2つの異なるシグナル伝達系(PKC, PKA)が、EPSC減衰時間の増大の有無(MVRの有無)を指標として分類することができる『異なるシナプス前促通』を仲介していることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EPSCの減衰時間を指標にMVRを追究し、PKCとPKAが担う2つのタンパク質リン酸化カスケードが、異なるメカニズムのシナプス前促通を仲介していることを示唆する結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
ホルボールエステル(PKC作動薬)PDBuとアデニル酸シクラーゼ作動薬 forskolinを用いた薬理学実験から推定された「シナプス前促通における多様性」が、脳スライス標本の神経刺激(電気刺激)によって再現されるか否かを検討する。また、この多様性の分子的基盤を明らかにするため、同標本にシナプス小胞体の放出過程や細胞内シグナル伝達経路に作用する各種モジュレータ試薬を先行投与した後、シナプス前促通作動薬(PDBu, forskolin)が小脳顆粒細胞‐介在神経(籠細胞)間EPSCの振幅や減衰時間におよぼす影響を比較する。
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