研究課題/領域番号 |
23K05973
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
眞田 佳門 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (50431896)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ダウン症 / 神経前駆細胞 / 錐体細胞 / 介在ニューロン / 大脳新皮質 |
研究開始時の研究の概要 |
神経前駆細胞の細胞運命(自己複製や神経分化など)は脳発生時期に応じて緻密に規定されており、このことは脳発生に極めて重要である。この運命制御には、細胞自律的な発生プログラムと共に、脳内外に由来する細胞外因子が大きく寄与する。このような運命制御のメカニズムが破綻すると、脳形成が異常になる。実際、ダウン症では、21番染色体が3倍体化することによって、各種分子の発現量が増加し、神経細胞数が低下すると共に、脳容量が小さくなる。しかしながら、神経前駆細胞の運命に作用する細胞内外の分子機構は不明な点が多い。本研究では、神経前駆細胞の運命制御を司る新たな分子機序を同定し、脳発生の理解を進めることを目的とする。
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研究実績の概要 |
神経前駆細胞の細胞運命(自己複製や神経分化など)は脳発生時期に応じて緻密に規定されている。そのため、この運命制御の破綻は脳の発生異常を誘発する。大脳新皮質は、大別すると2種類の神経細胞(錐体細胞と抑制性介在ニューロン)から構成されている。また介在ニューロンは、3種類に分類できる。つまり、パルブアルブミン陽性細胞(PV細胞と略する)、ソマトスタチン陽性細胞(SST細胞)およびセロトニン受容体3陽性細胞である。さらに、PV細胞およびSST細胞は内側基底核原基(MGE)で産生されることがよく知られている。従来、ヒト21番染色体の一部が三倍体化したダウン症モデルマウスにおいて、神経前駆細胞から神経細胞が産生される過程が破綻することで、錐体細胞数が減弱し、小頭症を示すことが知られていた。私どもは従来、この過程に関与する遺伝子を同定すると共に、その下流経路を明らかにしてきた。今年度の研究では、ダウン症における介在ニューロンの産生異常のメカニズムの解析をスタートした。まず、ダウン症モデルマウスの成体脳において、大脳新皮質のPV/SST細胞数が顕著に減少していることを見出した。さらに、MGE神経前駆細胞に特異的にCreを発現するトランスジェニックマウスを利用し、これら神経前駆細胞を蛍光蛋白質で標識すると共に、そこから派生する神経細胞を追跡した。その結果、前述した結果と同様に、ダウン症モデルマウスの成体脳において蛍光標識細胞は顕著に減少していた。細胞運命の追跡は、成体脳のみならず胎仔腦でも実施し、胎生期の脳においても、蛍光標識細胞は顕著に減少していた。このことから、MGE神経前駆細胞から介在ニューロンが産生する一連の過程が変容している可能性が示唆できた。そこで、いずれの過程が変容しているかを精査した結果、ダウン症モデルマウスではMGE神経前駆細胞数が低下している可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って研究を実施し、期待以上の成果を得ることができているため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の解析により、ダウン症モデルマウスにおいて、MGE神経前駆細胞数が低下している可能性を見出した。そこで今後は、その原因に迫る。まず、MGE神経前駆細胞の分化能や自己複製能が変化している可能性検討するため、各種の細胞標識技術を用いる。現在、MGE神経前駆細胞に特異的にCre-ERを発現するトランスジェニックマウス(Nkx2.1-Cre-ERマウス)を入手しており、タモキシフェンを用いて一過性に神経前駆細胞を蛍光標識し、その分化過程を追跡する予定である。この様な解析により、神経前駆細胞の性質変容を精査する。また、神経前駆細胞の細胞周期長が変化する可能性も検討する。この様な解析で得られた知見を統合して、本過程に関与するヒト21番染色体の遺伝子の同定に繋げていく。
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