研究課題/領域番号 |
23K05994
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46020:神経形態学関連
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
原 芳伸 北里大学, 医学部, 講師 (40558467)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 神経細胞移動 / サイトへジン2 / Arf6 / 細胞内小胞輸送 / 脳層形成 / リーリンシグナル / FRMD4A |
研究開始時の研究の概要 |
脳層形成において移動神経細胞は受容体や接着分子など様々な膜分子を細胞内小胞輸送により再配置しながら表層へ移動する。しかしながらそれらの輸送がどのように時空間的に調節されているか詳細は不明である。申請者は、移動神経細胞において低分子量Gタンパク質Arf6の活性化因子サイトへジン2の機能阻害を行い、N-カドヘリンが細胞内に過剰に蓄積し、移動が顕著に遅れることを見出した。本研究は神経細胞移動における新規サイトへジン2-Arf6-N-カドヘリン経路の役割に焦点を当て、サイトへジン2の①活性化制御機構②局在制御機構及び③サイトへジン2-Arf6経路による積荷タンパク質の全貌を明らかにする。
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研究実績の概要 |
申請者は、細胞膜とエンドソーム間の小胞輸送を制御するArf6に着目した大脳皮質層形成に関する機能解析を行ない、Arf6がN-カドヘリンのリサイクリング制御を介して神経細胞移動を制御することを明らかにしてきた。さらにこの過程におけるArf6の活性化調節機構を解明するため、特異抗体を使った発現解析と子宮内電気穿孔法によるスクリーニングを行い、活性化因子としてサイトへジン2を同定した。マウス胎児大脳皮質においてサイトへジン2は全層に渡って発現しており、放射状グリアでは脳室面の細胞間接着部位に局在し、一方移動神経細胞では初期及びリサイクリング小胞などの細胞内小胞に局在していた。またサイトへジン2のノックダウンは移動神経細胞の中間帯から皮質板への侵入、及び上層におけるターミナルトランスロケーションを阻害し、その移動異常は恒常的リン酸化型Dab1の共発現やリン酸化型Dab1の分解を制御するCullin 5のダブルノックダウンにより改善されたことから、1)サイトへジン2は活性化状態に依存して細胞内局在が変化すること、2)サイトへジン2-Arf6小胞輸送経路はリーリンシグナル経路により活性化されることが考えられた。 そこで本年度は1)について、サイトヘジン2の(1-1)脳室帯における機能的役割、及び(1-2)細胞内局在制御機構に着目して解析を行なった。(1-1)についてBrdUを用いたパルス標識実験の結果、サイトヘジン2のノックダウンは新生移動神経細胞の脳室面からの離脱を遅らせることが明らかとなった。また(1-2)についてサイトヘジン2と相互作用し、細胞間接着部位に局在するFERM-domain containing protein(FRMD)4Aについて解析を行なった結果、FRMD4Aのノックダウンは放射状グリアのM期からG1期における細胞体移動を遅らせることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳室面の細胞間接着部位におけるサイトへジン2の機能的役割を明らかにするため、子宮内電気穿孔法により胎齢(E)14日のマウス胎児大脳皮質にサイトへジン2のKDベクターを遺伝子導入し、E15で固定して遺伝子導入された細胞の局在を調べたところ、脳室帯におけるそれらの細胞の局在が乱れていた。そこで、放射状グリアの細胞体移動との関連性を調べるため、BrdUのパルス標識実験を行った結果、M期後の脳室帯からの離脱が遅れていることが明らかとなった。遅れていた細胞は神経細胞のマーカーであるNeurogenin 2を発現していたことから、サイトへジン2は新生幼弱神経細胞の脳室面からの離脱を制御していることが示唆された。今後は共免疫沈降実験を行い、質量分析により相互作用分子を網羅的に探索し、接着装置における局在制御機構を解明することを目指す。 一方、サイトへジン2の細胞内局在の制御機構については、上皮系培養細胞において細胞間接着部位で相互作用することが報告されているFRMD4Aに着目して解析を行った。特異抗体を作成し、免疫組織染色により細胞内局在を調べたところ、FRMD4Aは脳室面の細胞間接着部位でサイトへジン2と共局在していた。脳室帯における機能を調べるため子宮内電気穿孔法によりFRMD4Aに対するKDべクターを遺伝子導入し、E15で固定をして遺伝子導入された細胞の局在を調べた結果、脳室帯におけるそれらの細胞の局在が乱れていた。またBrdUを用いたパルス標識実験の結果、遺伝子導入された細胞の脳室帯からの離脱が遅れていた。これらの細胞はNeurogenin 2陰性であったことから、サイトへジン2とは異なりFRMD4Aは放射状グリアのG1期の細胞体移動を制御していることが示唆された。今後は共免疫沈降実験を行い、脳形成期におけるサイトヘジン2との分子的関連性の解明を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、脳室帯におけるサイトへジン2及びFRMD4Aの機能解析を継続するとともに、1)サイトへジン2-Arf6シグナル経路の活性化機構、2)サイトへジン2相互作用分子の探索を行う。1)については、初代培養神経細胞を用いた解析によりリーリンシグナルがArf6を活性化することを示唆するデータが得られている。今後はサイトへジン2との関連性を調べるため、サイトへジンファミリーの阻害剤であるSecin H3やサイトへジン2KDべクターの遺伝子導入により詳細に調べる。また、サイトヘジン2-Arf6経路におけるリーリンシグナルの作用点を明らかにするため、サイトヘジン2ノックダウンベクターとリーリン下流分子のFynやDab1、Aktの活性化型変異体を共遺伝子導入し、Arf6の活性化を調べる。2)については、サイトヘジン2に対する特異抗体を用いて共免疫沈降実験を行い、質量分析により相互作用タンパク質を探索する。また、サイトヘジン2ノックダウン条件下ではシンタキシン13陽性小胞が細胞内に貯留することから、シンタキシン13陽性小胞を免疫沈降により単理し、小胞内に含まれる積荷タンパク質の同定を試みる。
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