研究課題/領域番号 |
23K06003
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石川 理子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60547991)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | シナプス可塑性 / 大脳皮質一次視覚野 / ナビゲーション / 一次視覚野 / 脳梁膨大後部皮質 |
研究開始時の研究の概要 |
脳梁膨大後部皮質-一次視覚野間のシナプス可塑性およびシナプス形成・維持に分泌性のシナプス形成分子であるCbln1が必要か、電気生理学的手法および免疫組織化学的手法により検証する。長距離のトップダウンシナプスである脳梁膨大後部皮質-一次視覚野間のシナプスを調べるために、AAVを用いて脳梁膨大後部皮質に特定のタンパクを導入する。野生型およびCbln1欠損型のマウスで、シナプスの電気生理学的特性および形態学的特性を比較する。
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研究実績の概要 |
大脳皮質は、神経細胞同士がシナプスを介して繋がった神経回路網により情報を処理する。皮質における視覚情報の第一段階である一次視覚野は、視覚環境、経験、学習に応じてダイナミックにその機能を変化させ、個体の行動を制御する。申請者はこれまでに、発達期における視覚環境が一次視覚野の神経回路網の構築に影響を及ぼし、それにより、一次視覚野と高次視覚野間の情報のやり取りが劇的に変化することを示してきた。神経活動レベルにおいて、成熟後も一次視覚野の神経細胞は学習や体験に応じて劇的に変化することが知られているにも関わらず、一次視覚野の細胞間のシナプスは、成熟後可塑性が著しく低下することが知られている。そこで、一次視覚野の神経細胞のシナプスではなく、高次視覚野から一次視覚野へのトップダウンシナプスが、経験に変化に応じて変容する可能性が高い。本研究ではこの仮説を検証するために、視覚関連領域である脳梁膨大後部皮質(Retrosplenial cortex, RSC)から一次視覚野へのトップダウンシナプスに着目し、シナプス可塑性の特性とその役割を解明することを目的とした。これまでに、RSCにアデノ随伴ウイルスを用いチャネルロドプシンを発現させたマウスを用いて切片標本を作製し、投射先である一次視覚野2/3層の錐体細胞からパッチクランプ法によるホールセル記録を行った。RSC-V1シナプスにおいて入力と活動電位の時間差に応じて長期増強が生じること、このシナプス可塑性がNMDA受容体の活性に依存することを薬理実験により見出した。現在、ノックアウト動物を用いたシナプスの形態学的解析と電気生理学的解析を進めており、各分子がRSC-V1のシナプスの機能制御における役割の検証を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の提案に沿い、RSC-V1シナプスにおいてシナプス長期増強が生じることを見出した。これまでの実験系では、長期的な投射を担うシナプスにおけるシナプス可塑性を検証することは困難であった。今回、光遺伝学的手法により、大脳皮質長距離投射軸索を選択的に刺激することが可能とした。現在、RSC-V1シナプスにおいて、活動電位と入力タイミングに依存した長期増強を見出している。小脳で強力なシナプスオーガナイザーとして機能するCbln1がRSCにも強く発現していることから、今後はRSC-V1シナプスにおけるCbln1の役割に着目し研究を推進する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、RSCとV1の2/3層錐体細胞間のシナプスが成熟後もシナプス可塑性を維持することを見出してきた。今後は、学習前後や経験に応じて、神経回路が変化するプロセスにおいて、トップダウンシナプスが果たす機能を役割を明らかにする。環境入力を受けて神経回路がどのように変化するのか、という根本的な命題に対して重要な知見が得られるものと考えられる。
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