研究課題/領域番号 |
23K06009
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
|
研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
夏堀 晃世 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (20732837)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | ATP / 海馬 / 光遺伝学 / 空間記憶 / 睡眠 |
研究開始時の研究の概要 |
あらゆる神経活動をエネルギー面から支える脳代謝活動は、神経の発火活動や動物の脳機能を調節する作用を持つ。その機序として、各神経細胞内で生成されるエネルギー分子であるATP (アデノシン3リン酸) が、当神経のATP感受性K+チャネル(K-ATPチャネル) を介して神経発火活動調節に働くという“神経細胞内ATPハブ仮説”が存在する。本研究はこの仮説検証を目的とし、空間記憶を司る海馬興奮性神経の細胞内ATP濃度を人為的に操作するマウスを遺伝子操作により作製し、海馬神経の細胞内ATP濃度変動がKATPチャネルを介して神経発火活動と記憶機能に与える影響を、海馬神経活動計測と記憶試験により明らかにする。
|
研究実績の概要 |
神経活動をエネルギー面から支える脳代謝活動は、神経の発火活動や動物の脳機能を調節する作用を持つと予想されている。本研究はその主要経路と予想される、神経細胞内のATP(アデノシン3リン酸:細胞のエネルギー分子)が、ATP感受性K+チャネルを介して神経発火活動と動物の脳機能をいかに調節するかを解明することを目的とした。そのため記憶機能を司る海馬に着目し、生体マウスにおける海馬興奮性神経の細胞内ATP濃度動態の観察と操作実験を実施した。先ず、ATPを感知する蛍光プローブ(ATeam)を海馬の興奮性神経に発現させたマウスを用い、マウスの睡眠覚醒や物体認識行動に伴う海馬興奮性神経の細胞内ATP濃度変動を光ファイバ計測した。この光ファイバ計測では、得られた蛍光シグナルから血流シグナルの影響を取り除くために、従来のFRET対応型ファイバフォトメトリーの光学系を改変して用いた。その結果、海馬興奮性神経には動物の睡眠覚醒状態依存的な細胞内ATP濃度変動がみられることを確認した。一方でマウスの記憶試験中、海馬神経細胞内ATP濃度は物体認識行動に伴う明らかな変動を認めなかった。次に、海馬興奮性神経の細胞内ATP濃度変動が、当該神経の発火活動や動物の記憶機能に与える影響の解明を目指した。ATP合成の直接駆動力となるミトコンドリア内膜において、プロトン勾配を増強させる光感受性プロトンポンプを発現させるAAV(アデノ随伴ウイルス)ベクターを作製し、現在、発現・動作確認実験を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経の細胞内ATPが神経発火活動や脳機能に影響を与える本研究仮説の検証に向けた第一段階として、海馬興奮性神経の細胞内ATP濃度がマウスの睡眠覚醒状態依存的な変動を示すことを、生体計測により確認することができた。また、細胞内ATP濃度を光操作するためのプロトンポンプを特定神経へ発現させるAAVの作製も完了した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、ATP光操作ポンプの動作確認を行った後、特定神経の細胞内ATP濃度変動が当該神経の発火活動や脳機能に影響を与える仕組みを明らかにするための操作実験を行う。生体マウスにおいて、海馬興奮性神経のATP濃度を特定のタイミングで上昇させ、それによりどのような神経発火活動変化と記憶機能への影響が生じるかを明らかにする。また各種薬理実験を組み合せ、このATPをハブとした脳代謝―神経活動調節機構に、神経細胞膜に発現するATP感受性K+チャネルが関与していることを明らかにする。
|