研究課題/領域番号 |
23K06011
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
望月 貴年 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 教授 (40263933)
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研究分担者 |
森岡 絵里 富山大学, 学術研究部理学系, 助教 (80756122)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 昼行性動物 / グラスラット / 睡眠 / 覚醒 / 脳波 / 季節性感情障害 / オレキシン / ヒスタミン / 冬期うつ病 |
研究開始時の研究の概要 |
季節性感情障害(SAD)は秋冬期に出現する季節依存型の気分障害であり,高緯度地域など冬の日照時間の短い地域に高率発現する精神疾患である。SADの発症に光感受性の神経活動変化が関与すると考えられるが,マウス・ラットなどの夜行性実験動物では光暴露による行動変化がヒトを含む昼行性動物と全く異なり,SAD病態研究の動物モデルとはなり難い。本研究は,我々が保有する昼行性グラスラットを用いて,SAD発症の神経メカニズム解明を目指す。すなわち,明期照明強度の低下による睡眠覚醒量の変化と抑うつ症状の有無を検証すると共に,この行動変化に付随して活動性が変化する脳部位の組織学的解析や神経破壊による影響を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は,昼行性グラスラット(Arvicanthis niloticus)の睡眠覚醒を制御する神経回路の詳細な解析と,外部照明強度の低下による季節性感情障害(SAD)様の行動変化について検討することを目的とする。本年度は,目的①低照度照明で誘発される睡眠覚醒行動の変化と抑うつ行動の解析について,明期照明1000,100,10 luxの3条件で脳波測定を完了し,100 lux以下では覚醒量が明期,暗期ともに減少すること,ノンレム睡眠の平均持続時間が延長することなど,低照度条件で過眠症状が観察されることを確定した。一方,この過眠傾向がSADで見られるうつ様行動であるか甘味嗜好性テストで調べたが,有意な行動変化とまでは結論できていない。目的②低照度条件により変化する最初期遺伝子発現パターンの解析については,c-Fos発現を指標として高照度-低照度群間で神経活動性の変化する脳部位を調べてきたが,予備実験よりも解析時刻を早めた結果(ZT4からZT1に変更)より多くのc-Fos発現細胞が視床下部外側野や後部視床下部などで検出できた。そこでZT1におけるオレキシン神経,ヒスタミン神経の二重染色を再検討する。目的③神経破壊によるSAD様行動の誘発/抑制の解析については,AAV-CMV-DTA投与によるオレキシン神経の破壊を進め,明期照明1000 lux条件で睡眠脳波測定をした結果,細胞数の減少に伴った覚醒量の減少が確認されている。今年度は,以上の実験経過について,日本睡眠学会第45回定期学術集会/第30回日本時間生物学会学術大会・合同大会(2023年9月,横浜)にてポスター発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的①睡眠覚醒行動解析については,1000,100,10 luxの3条件で脳波測定を完了し,照明強度に依存した覚醒減少,睡眠増加が見られていることから満足いく結果が得られていると言える。しかしながら,この過眠傾向がSADで見られるうつ様行動であるか,甘味嗜好性テストを追加検討する,あるいは嗜好性条件を見直す必要性があるかもしれない。目的②c-Fos発現細胞の解析については,新たな解析時刻(ZT1)にてオレキシン神経,ヒスタミン神経の二重染色を進める方針であるが,用いる抗c-Fos抗体(マウスモノクローナル,ウサギポリクローナル)により本グラスラットc-Fos標識の検出力/特異性が異なるため,解析を慎重に進める必要があることも,あらためて認識した。目的③神経破壊によるSAD様行動の誘発/抑制については,オレキシン神経の破壊を進めるとともに,SADやうつ病との関連が提唱されている背側縫線核・セロトニン神経の破壊にも着手し,グラスラットが広くうつ病のモデル動物となるかどうか検討するつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は,目的①で十分な進歩があり,目的②も解析方針が定まったため,昼行性グラスラットの光感受特性と睡眠覚醒行動については作業仮説に沿った実験結果が得られることが十分期待できる。一方,本ラットがSAD動物モデルとなるかどうかは慎重な議論が必要であり,本研究で提案している1~2週間程度の照明条件変化では大きな精神・行動への影響は得られない可能性も考えなくてはいけない。③神経破壊による行動変化については,より直接的な脳機能へのダメージ負荷であることから,比較的明確な行動変化が期待できると考えられる。次年度も引き続きこれら3つの目的を追求し,昼行性グラスラットの神経回路と行動制御について,またモデル動物としての有効性について検討していく。
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