研究課題/領域番号 |
23K06015
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
柏谷 英樹 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (70328376)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | オレキシン / 光遺伝学 / 掻痒掻破行動 / 疼痛 / 視床下部 / 中脳水道灰白質 / itch / scratching / orexin / periaqueductal gray / ventral tegmental area |
研究開始時の研究の概要 |
末梢及び一次掻痒中枢である脊髄における掻痒知覚・情報処理機構が近年明らかになってきた。一方、中枢における掻痒情報処理機構は未だ不明な点が多い。申請者はオレキシン神経脱落マウスに掻痒行動異常がおこることを見出し、オレキシン神経による掻痒掻破行動調節機構を世界に先駆けて報告した。本研究ではオレキシン神経の神経活動を制御することで本当に掻痒掻破行動に変容をきたすのか、化学遺伝学的方法及び光遺伝学的方法で検討する。また、掻痒掻破行動時のオレキシン神経活動をライブイメージングし、掻痒掻破行動時に本当にオレキシン神経が活動するか、検討する。
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研究実績の概要 |
ため、オレキシン神経特異的に光感受性色素チャネルロドプシンを発現させ、オレキシン神経の活動を光操作した。クロロキン誘発性掻痒に対する光操作の影響を調べたところ、オレキシン神経活動を抑制すると掻痒掻破行動が減弱する一方、疼痛行動が増悪した。さらにオレキシン神経の主要投射先の1つである中脳水道灰白質への軸索投射を光刺激で選択的に抑制すると、同様な掻痒掻破行動の減弱と疼痛行動の増悪が観察された。これらの結果は、オレキシン神経除去マウスにおける掻痒掻破行動の減弱とよく一致しており、オレキシン神経の活性化が掻痒掻破行動の増悪を引き起こす一方、疼痛行動を抑制することが明らかになった。 また、オレキシン神経の抑制による掻痒掻破行動の減弱が、慢性掻痒モデルマウスでも観察されるか検討するか検討した。慢性掻痒モデルにはジフェニルシクロプロペノン(DCP)塗布誘発性接触皮膚炎モデルを用いた。DCPモデルマウスでも、オレキシン神経光抑制により掻痒掻破行動は著明に減弱し、慢性掻痒に対する掻破行動もオレキシン神経が調節していることが明らかになった。 これらの結果はCommunications Biology 7: 290 (2024)に原著論文としてまとめた。また、第101回日本生理学会(北九州市)において、シンポジウム「痒み研究の新展開」(座長:柏谷英樹、堀田晴美)を開催し、国内外で活躍する4名の痒み研究者とともに最新の痒み研究知見、未解決な問題、そして今後の展望について活発な議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、化学遺伝学的方法でオレキシン神経の活動を制御することを目指したが、DREADD蛋白質が目的のオレキシン神経以外にも発現してしまい、オレキシン神経特異的な神経活動制御ができなかったため、光遺伝学的方法に切り替えた。DREADDと異なり、ChR, ArchTは目的通りオレキシン神経特異的に発現することが確認できたため、光遺伝学的方法で研究を遂行した。 また、先行研究(Kaneko et al. J Physiol Sci 72(1): 21 (2022))では、脳全域に投射するオレキシン神経の、どの軸索投射経路が掻痒掻破行動制御に重要であるかがアドレスできていなかった。そこで、オレキシン神経の投射部位のうち、特に掻痒掻破行動と深く関連することが近年報告された中脳水道灰白質に着目し、この領域に投射する軸索末端を光操作することで、この経路が掻痒掻破行動の制御に関わるか検討した。その結果、仮説通り、この経路の刺激により掻痒掻破行動が減弱することが明らかになった。 さらに、先行研究において検討できていなかった慢性掻痒に対するオレキシン神経の役割を明らかにするため、DCP反復塗布により惹起される慢性掻痒モデル(慢性接触皮膚炎モデル)マウスを作成した。DCPモデルマウスでもオレキシン神経抑制は著明な掻痒掻破行動の減弱を示し、皮膚のバリア機能も著しく改善した。これらの結果は慢性掻痒の治療戦略としてオレキシン神経系の制御が有効であることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、掻痒掻破行動時のオレキシン神経のリアルタイム計測を行うため、オレキシン神経選択的にカルシウムインディケーター(GCaMP6)を発現させるオレキシン-GCaMP6マウスを作成中である。当初オレキシンタグマウス(オレキシン-tTAマウス)とtetO-GCaMP6マウスを掛け合わせることで、オレキシン神経特異的にGCaMP6を導入する予定であった。しかしながら、作出したORX-GCaMP6マウスにおけるGCaMP6発現量が当初の予想より低かったため、アデノ随伴ウィルスベクターによるGCaMP6遺伝子の導入を目指している。本方法は個体ごとにアデノ随伴ウィルスベクターを視床下部オレキシンフィールドに注入する必要があり、実験毎にベクターの導入効率が多少変動する可能性があるものの、一つの細胞に導入できるベクター量が増すため、結果的にオレキシン神経細胞におけるGCaMP6の導入効率は上がることが期待される。 また、ファイバーフォトメトリー実験に先立ち、掻痒掻破行動を調節するオレキシン神経が視床下部オレキシンフィールド内で一様に存在しているのか、それともオレキシンフィールド内で局在しているのかを予め把握するため、クロロキン投与でc-Fosを発現するオレキシン神経の局在をフィールド内で網羅的に検証し、ファイバーフォトメトリー法で刺入するファイバー位置を決定する。c-Fos陽性オレキシン神経の局在は、二重免疫組織染色法により行う。
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