研究課題/領域番号 |
23K06021
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
武藤 恵 関西医科大学, 医学部, 講師 (50298189)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 代謝型グルタミン酸受容体 / 海馬 / カハールレチウス細胞 / 細胞内カルシウム動員 / mGluR1 / カハール・レチウス細胞 / 細胞内カルシウムイオン濃度 |
研究開始時の研究の概要 |
代謝型グルタミン酸受容体には機能の異なるサブタイプが存在し、その一つmGluR1は細胞内カルシウム濃度を上昇させ、細胞興奮調節やシナプス可塑性に関わる。記憶・学習に関与する海馬では、幼若期にはmGluR1はカハール・レチウス細胞(CR細胞)に存在することが免疫組織化学的に示されるも、機能は明らかでない。これまでに、CR細胞でmGluR1を介した細胞内カルシウム濃度上昇がおきることを証明したが、生理学的意味は未解明である。本研究ではmGluR1刺激時の反応を他の受容体との相互作用・シナプス可塑性・神経障害作用に焦点を当てて解析し、幼弱海馬CR細胞においてmGluR1が果たす役割を解明する。
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研究実績の概要 |
代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)には機能と組織局在が異なるサブタイプが存在し、サブタイプの一つmGluR1は細胞内Ca2+濃度上昇を介して種々の生理学的反応を惹起、また神経細胞興奮調節やシナプス可塑性に関わる。記憶・学習などの高次脳機能に深く関わる海馬においては、mGluR1は幼若期にはカハール・レチウス細胞(CR細胞)に存在することが示され生後発達に重要であることが示唆されているものの、その機能はほとんど不明である。これまでの研究で海馬CR細胞の著しい細胞内Ca2+濃度上昇がmGluR1を介しておこることを初めて明らかにしたが、その生理学的意味については未解明のままである。本研究ではmGluR1刺激時の反応を、他の受容体との相互作用・シナプス可塑性・神経保護ないし神経障害作用に焦点をあてて解析する。その知見は、幼弱海馬CR細胞においてmGluR1が果たす役割の解明に繋がると考えられる。これにより海馬の生後発達に関わる新たな機構を見出し、発達障害の機序解明に貢献し得ることが期待される。 2023年度はmGluRと他受容体との相互作用の検討を行った。CR細胞におけるmGluR1刺激時の細胞内Ca2+濃度上昇は、それ自体ではCa2+濃度上昇を惹起しないアデノシン受容体作動薬の投与により増強され、また別のGタンパク質共役型受容体の作動薬によってもmGluR1による反応の増強が観測された。その他の受容体との相互作用については解析中である。相互作用の機構に関しては、増強効果のある作動薬がmGluR1の活性化と同時の投与でもmGluR1の活性化前の投与でも効果を発揮することから、受容体が複合体を形成して作用が増強されるより細胞内の二次メッセンジャーレベルで増強がおこっていると考えられた。以上の研究成果について学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
幼若海馬CR細胞上のmGluR1と他のGタンパク質共役型受容体との相互作用を、急性スライス標品を用い細胞内Ca2+濃度上昇を指標として検討した。 ラット海馬の急性スライス標品を調製し、蛍光色素を負荷したのちCa2+イメージングを行った。mGluR5受容体の作用をブロックした状態でmGluR1/mGluR5共通の作動薬を投与し、340 nm/380 nm蛍光強度比によって表される細胞内カルシウム濃度の変化を観測した。他のGタンパク質共役型受容体との相互作用を検討するため、受容体アゴニストの存在下と非存在下での実験を行った。 CR細胞におけるmGluR1刺激時の細胞内Ca2+濃度上昇は、プリン受容体作動薬のうちアデノシンおよびCPAの投与により増強され、また別のmGluRサブタイプであるmGluR2/mGluR3の作動薬によっても増強が観測された。mGluR1とその他のGタンパク質共役型受容体との相互作用については解析中である。アデノシン受容体を介する増強の機構に関しては、プレインキュベーションが効果を持つことと用量-反応曲線の変化から、細胞膜レベルで受容体が複合体を形成しアゴニスト親和性を変えることで作用が増強されるよりも、細胞内の二次メッセンジャーレベルで増強がおこっていると考えられた。複数のGi/o共役型受容体での増強がみられたことから、この系では受容体特異的というよりGi/o共役型受容体に共通の増強機構であることが示唆された。 また2024年度以降の電気生理学的研究のためにデータ収得装置(デジタイザー)を購入し、実験系をセットアップした。現在までの成果について学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によりmGluR1と他のGタンパク質共役型受容体との相互作用について、増強効果がCR細胞においてはGi/o共役型受容体に共通の現象であることが考えられるため、この裏付けとしてアデノシン・mGluR2/mGluR3以外のGi/o共役型受容体を介する増強効果の有無をさらに検討する。また受容体刺激の下流の伝達経路を阻害しその増強作用に対する影響を調べることで、作用機構についての考察を進める。 続いてmGluR1の中枢神経系での働きの一つであるシナプス可塑性への関与が、この系でもみとめられるかを検討する。Ca2+イメージングの場合と同様に作製した海馬スライス中のCR細胞において、ホールセルパッチクランプを行う。CR細胞から電圧固定法により自発GABAA電流と刺激で誘発したGABAA電流とを記録し、それぞれについてmGluR1受容体作動薬投与により伝達効率変化が起こるか否かを確かめる。 mGluR1を介する反応には神経保護作用と神経障害作用の両方があるとされているので、CR細胞の生後発達過程での脱落に関与している可能性を考え、この細胞でのmGluR1の障害性を検討する。海馬スライスをこれまでと同様に作製し、ミトコンドリア膜電位感受性色素を負荷後に蛍光顕微鏡下に1波長計測を行う。膜電位感受性色素の濃度・作用時間等を変えて染色の至適条件を見出す。サンプル調製条件を決定した後、その条件で色素を負荷したサンプルを蛍光顕微鏡下に経時的に観察する。蛍光強度の減少からミトコンドリア膜電位の消失を推測し、細胞障害性の指標とする。mGlu1R刺激のみ、またmGluR1とCa2+流入チャネルの同時刺激による反応を観測する。
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