研究課題/領域番号 |
23K06031
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
矢内 光 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (10408685)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | カルボアニオン / 有機フッ素化学 / 光反応 / 溶解度 / 分配係数 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、フッ素置換基で安定化された「極安定カルボアニオン」を有機分子の置換基として導入する化学合成手法の開発と、得られた生成物の理論・実験両面からの構造化学、分光学的解析に基づいた、カルボアニオン性置換基の置換基効果に関する解析を進める。特に、これまで検討されてこなかったカルボアニオン部位とコア構造とを隔てるスペーサーの長さが異なる一連の化合物を合成し、カルボアニオン性置換基の置換基効果を体系化していく。
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研究実績の概要 |
一般にカルボアニオンは高反応性化学種であって、単離可能なほどに安定なものはごく限られている。そのため、カルボアニオン構造を化合物の物性制御に利用した例は皆無である。こうした背景を踏まえ、研究代表者は、近年、二つのトリフルオロメチルスルホニル基で安定化されたカルボアニオンを開発した。このイオンは高い化学的安定性を示し、難水溶性薬物の水溶化に資する置換基となることを示した。また、カルボアニオン修飾に伴って化合物の親油性も向上することを見いだした。こうした知見を踏まえ、本研究では、フッ素置換基で安定化された「極安定カルボアニオン」を有機分子の置換基として導入する化学合成手法の開発と、得られた生成物の理論・実験両面からの構造化学や分光学的解析に基づいて、カルボアニオン性置換基の「置換基効果」を体系化する試みを進めていく。 本年度は、まず、従来法では合成できない新たな極安定カルボアニオン修飾体の合成法を確率すべく検討を進めた。その中で、光反応によるC-H官能基化反応を利用した合成法の開発に成功した。本手法は、特に長鎖アルキル基をもつ極安定カルボアニオンの合成に威力を発揮するものと期待している。また、種々の単純なアルケンにTf2C=CH2を作用させることでも、目的とする生成物が選択的に得られる反応系を見いだした。 また、上記の目的に沿ったカルボアニオン性置換基の導入法に関する研究と平行する形で、優れた光物性を示す新奇な多環式芳香族骨格の構築を検討しており、硫黄原子で修飾されたナフタレンやアントラセン誘導体の選択的な合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初想定していた新しいカルボアニオン導入反応についてはすでに検討を始めており、反応が期待通り進行するケースも見いだしている。また、一部のカルボアニオン修飾体については、各種溶媒に対する溶解物性や油-水二相系における溶解物性を検討しており、興味深い結果が得られている。以上を踏まえ、本研究はおおむね順調に進展しているものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
従来法では合成できなかったカルボアニオン修飾体の化学合成法を切り拓くべく、複数の反応を提案したが、一部の反応は極めて効率的に進行することが分かっており、物性面で興味の持たれる化合物の合成と予備的な物性評価を行っている。こうしたプロジェクトについては、反応基質の適用範囲の精査や精密な物性評価を早期に完了し、研究成果の公表へと繋げていく。 一方で、検討の結果、期待した反応が全く進行しないケースも見いだされた。こうした問題に対しては、代替合成法の確立を急ぎ検討していく。
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