研究課題/領域番号 |
23K06049
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
角永 悠一郎 大阪大学, 放射線科学基盤機構, 特任助教(常勤) (30836903)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 金ナノ粒子 / アスタチン-211 / がんターゲティング分子 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者は新たながん治療法として、α線放出核種を投与し体内からがんにα線を照射して治療するα線核医学治療に着目している。 アスタチン-211(211At)が放出するα線はエネルギーが高く、がん細胞の殺傷能力が高い。一方で、飛程がヒト細胞数個分と短いため、周辺の臓器や正常細胞への侵襲が少ない。さらに、211Atは半減期が比較的短く(7.2時間)、速やかに放射線源が消失する。そのため、通院による治療が可能となる。 ハロゲン族の211Atはヨウ素と似た性質を持つため、投与後速やかに甲状腺に集積する。そこで、211Atを金ナノ粒子表面に結合させ、甲状腺への集積を防ぎ、狙いのがんへ送達することを計画した。
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研究実績の概要 |
近年、強力なエネルギーを持つα線によりがん治療を行う、α線核医学治療法が注目されている。申請者は、α線放出核種アスタチン-211(211At)標識金ナノ粒子の合成と生物学的評価を行うこととした。211Atは、同じハロゲン族であるヨウ素と似た性質を持つため、投与後速やかに甲状腺に集積する。そこで申請者は、211Atを金ナノ粒子(AuNP)表面に担持させ、甲状腺への集積を防ぎつつ、がん細胞を攻撃することとした。 申請者はまず、種々のサイズのAuNP表面を、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)により修飾した。表面無保護のAuNPは、生理食塩水中や生体内では凝集する可能性があるが、表面をmPEGで修飾することにより、この問題を解決できる。粒子径5nmのAuNPは市販品を用い、粒子径2nm程度のAuNPは、四塩化金酸を還元することにより合成した。得られたmPEG修飾AuNP(AuNP-S-mPEG)に対し、211At標識化を行った。その結果、ほぼ定量的に211At標識化が進行し、粒子径およびmPEGの鎖長の異なる複数種類の[211At]AuNP-S-mPEGを得た。 得られた[211At]AuNP-S-mPEGの体内分布を評価するため、担がんマウスに静脈投与した。その結果、投与したすべての[211At]AuNP-S-mPEGにおいて、腫瘍への集積が認められた。また、尿中排泄されることも分かった。一方で、唾液腺および胃への集積がやや目立った。 結論を述べる。今回投与した[211At]AuNP-S-mPEGは、腫瘍への集積と尿中排泄が認められたことにより、薬剤として有用である可能性が示された。一方で、いくつかの臓器への集積も認められたため、正常組織への安全性評価も重要であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成したすべてのメトキシポリエチレングリコール修飾金ナノ粒子(AuNP-S-mPEG)において、アスタチン(211At)標識化がほぼ定量的に進行した。この結果は、AuNPは211Atの固定化に最適な材料であることを示している。加えて、担癌マウスへの静脈投与において、腫瘍への集積が認められた。これは、薬剤としての有用性を示しており、今後の研究の発展において、期待の持てる結果である。 上記の理由により、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、211At標識メトキシポリエチレングリコール修飾金ナノ粒子([211At]AuNP-S-mPEG)の腫瘍への集積が認められた。今後は、腫瘍集積性の向上を目指す。具体的には、AuNP表面を、RGDペプチドや葉酸などのがんターゲティング分子で修飾する。これまでに投与した[211At]AuNP-S-mPEGは、EPR効果による腫瘍への集積であったが、がんターゲティング分子で修飾すれば、より高い集積性を示すことが期待できる。また、放射性同位体であるAu-198を用いて金ナノ粒子を合成し、金ナノ粒子自体の体内分布を評価する。これにより、211Atと金ナノ粒子が生体内で安定なのか否かが評価できる。正常組織への放射線の影響も、合わせて評価する。 がん間質を破壊する薬剤との併用投与も検討する。腫瘍周囲に存在するがん間質は、がんの増殖を助長する。がん間質を破壊しつつ腫瘍を叩くことにより、より高い抗腫瘍効果が期待できる。
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