研究課題/領域番号 |
23K06058
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
小林 数也 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (80647868)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | アルツハイマー病 / BACE1 / プロテアーゼ阻害剤 / ヒドロキシエチルアミン / 大環状阻害剤 / 膜透過性 / 大環状化 |
研究開始時の研究の概要 |
アルツハイマー病治療薬の開発を目的として、β-セクレターゼ(BACE1)を標的とした多くの研究が行われてきたが、臨床試験に進んだBACE1阻害剤はいずれも十分な治療効果が得られず開発が中止されている。そのため、今後の治療薬開発を進展させるためには、これまでの阻害剤とは異なるアプローチによる阻害剤開発が必要となる。本研究では、申請者が独自に見出した大環状ペプチド性阻害剤の骨格を基に、よりドラッグライクな構造への転換を展開することで、既存のBACE1阻害剤とは全く異なる構造を有する阻害剤の創出を目指す。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、阻害活性の向上を目指した架橋構造の最適化研究と、膜透過性の向上を目指したP4位構造の最適化研究について並行して実施した。 (1)架橋構造の最適化検討においては、3-ヨードフェニルアラニン誘導体を出発原料として合成したP1フラグメントを基に、架橋部にベンゼン環を有する13および14員環の大環状誘導体の合成を検討した。13員環誘導体の合成では、P4位の構造を削除し構造を簡略化した誘導体の合成を達成した。しかし、阻害活性評価を行ったところ、プレリミナリーなデータではあるものの阻害活性の大幅な低下が認められた。14員環誘導体の合成では、副反応を抑制することを目的として、ヒドロキシエチルアミン部位を保護した誘導体を用いた合成ルートを検討し、環化前駆体までの合成を行った。本合成ルートでは、期待通り副反応が抑制され、従来のルートと比較して縮合反応が効率的に進行することを確認した。 (2)P4位構造の最適化検討では、グルタミン酸からアミノ基を取り除いたグルタル酸、および炭素鎖が1炭素短いコハク酸を縮合した誘導体の合成を行い、活性評価を行った。その結果、グルタル酸を導入した誘導体では親化合物と同程度の活性が維持されたことから、カルボキシ基が活性発現に重要であることが示された。一方、コハク酸を導入した誘導体では、活性が5倍程度低下したことから、カルボキシ基は環上のアミノ基から4原子以上離れている必要があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)架橋構造の最適化研究では、架橋部にベンゼン環を有する13員環誘導体の合成を達成した。続く14員環誘導体の合成では、ヒドロキシエチルアミン部位を保護した誘導体の合成法を確立し、本誘導体へのアミノ酸の縮合反応を検討した。その結果、これまでよりも高い収率で反応が進行することを確認でき、効率的に環化前駆体を得ることができた。 (2)P4位構造の最適化研究では、P4位にグルタル酸およびコハク酸を導入した誘導体の合成を行い、活性評価を行った。その結果、グルタル酸の導入では活性は維持されるが、マロン酸では活性が5倍程度低下することを明らかにした。大環状中間体の再合成が必要になったため、誘導体合成を十分に進めることはできなかったが、P4位側鎖カルボキシ基の活性への寄与が明らかとなり、今後の検討の筋道を見出すことができたと考えている。 以上の点から、本年度の研究はおおむね順調に進行したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)架橋構造の最適化研究では、引き続き14員環誘導体の合成を検討する。まずP4位を削除し構造を簡略化した誘導体の合成を目標として、環化条件およびオキサゾリジノン保護基の脱保護条件について検討を行う。次に、得られた最適条件を用いて、P4位にグルタミン酸を導入した誘導体を合成し、アリール型架橋構造の導入による阻害活性への影響を明らかにする。並行して、P3側鎖へ置換基を導入した誘導体の合成の検討を行い、最適な架橋構造の探索を進める。 (2)P4位構造の最適化研究では、P4位のカルボキシ基と大員環との間のリンカーの長さ、および構造について検討を行う。具体的には、アジピン酸、イソフタル酸、3,3-ジメチルグルタル酸を導入した誘導体を合成し、活性評価を行う。また、カルボキシ基のアミド基およびテトラゾリル基への変換も合わせて検討する。高活性誘導体については膜透過性をPAMPAアッセイにて評価し、置換基の位置および種類が膜透過性に及ぼす影響についても検討を行う。
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