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細胞膜透過性向上を志向したHDAC6分解誘導剤の探索合成

研究課題

研究課題/領域番号 23K06061
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
研究機関関西大学

研究代表者

住吉 孝明  関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50738911)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
キーワードPROTAC / HDAC / 細胞膜透過性 / タンパク分解誘導剤 / HDAC6
研究開始時の研究の概要

新しい創薬モダリティである「タンパク分解誘導剤 (PROTAC) 」は、従来のタンパク阻害剤と異なり、創薬標的タンパクをユビキチン化する機能により、生体内のタンパク分解系を利用して強制的に分解させる。本手法はタンパクそのものを消失させることから、これまで創薬が困難とされた標的タンパクにも効果が期待できる。一方、分子量の大きさ等のPROTAC固有の性質により、低細胞膜透過性等の医薬品として不利な薬物動態を示す可能性が示唆されている。本研究では、細胞膜透過性を指標にPROTACのリンカー部等を種々構造変換し、高い細胞膜透過性を示すHDAC6 PROTACを創製する。

研究実績の概要

近年、新しい創薬モダリティとして、標的タンパクを強制的に分解して効果を示す「タンパク分解誘導剤 (PROTAC) 」が注目されている。PROTACは分子内に標的タンパク結合部とE3ユビキチンリガーゼ結合部を有し、双方のタンパクに結合して近接させることにより標的タンパクをユビキチン化してプロテアソームに分解させる。本手法は低分子化合物や抗体などの既存モダリティでは創薬が困難な標的にも効果が期待できるメリットがある。しかし、PROTACは分子量が1000近くなることから、細胞膜透過性が低いなど薬物動態面で医薬品に不適な性質を示すことが多い。本研究では、脂溶性向上や分子の剛性向上を指標にリンカー部を種々構造変換し、がんや神経変性疾患治療の有望な創薬標的であるhistone deacetylase (HDAC) 6 を効率的に消失させうる、細胞膜透過性を向上させたHDAC6 PROTAC の創製を目的とする。本研究で標的とするHDAC6はがん、感染症、精神神経疾患に関わるとされ、その阻害剤はそれらの疾患の新規治療薬となりうる。HDAC6阻害剤は活性発現に高極性基であるヒドロキサム酸を必要とすることから、PROTAC化のためポリエチレングリコールリンカーやpomalidomido構造を導入するとさらに高極性となり、細胞膜透過性はさらに低下する。2023年度は、リンカーの低極性化およびHDAC6結合部位の分子量低減をはかる化合物設計を行った。既知のHDAC6 PROTACに比べて大きく分子量を低下させた化合物Aを設計した。化合物Aを合成し、当該化合物Aの細胞膜透過性を評価したところ、これまでに合成したPROTACに比べて細胞膜透過性が改善したことを見出した。本成果は細胞膜透過性を有するHDAC6 PROTAC創製につながる可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度は、分子量を可能な限り低減したPROTACの設計・合成に取り組んだ。まず、当研究室がこれまで注力して創製してきた種々のHDAC6阻害剤のデータを検証し、最も分子量が小さいHDAC6阻害剤の構造を基本骨格として設定した。続いて、最もHDAC6阻害活性に影響が小さいと考えられる部位にアルキルリンカーを導入した化合物を設計した。まず論文調査を実施したところ、ポリエチレングリコールをアルキル鎖としても活性に影響はないこと、リンカーの鎖長を炭素数に換算して数個低減しても、HDAC6 PROTACのタンパク分解作用に影響がなかったことから、分子量を可能な限り低減したPROTAC候補化合物Aを設計した。まずはアルキルリンカーとHDAC6リガンドのみを組み合わせた中間体Bを合成してHDAC6阻害活性を評価したところ、リンカーの導入はHDAC6阻害活性に影響を与えなかった。そこで、当該リンカー導入位置が最適と判断してリンカーの先端にpomalidomidoを導入する合成を行い、目的物である化合物Aを得た。化合物Aの膜透過性を評価したところ、一般的な低分子化合物医薬品に比べると十分とはいえないものの、これまで当研究室で合成したHDAC6 PROTACに比べて膜透過速度が向上していた。速度は低いものの化合物Aの多くは人工膜を透過していたことから、低分子量化を志向した本研究のPROTAC化合物の設計戦略は細胞膜透過性改善につながると考えられる。また、化合物AのHDAC6結合活性はIC50値で約100 nMと十分な活性を示した。

今後の研究の推進方策

現在、本研究はおおむね順調に進んでおり、HDAC6結合部とリンカーの低分子量化により細胞膜透過性が改善することをすでに見出している。まだHDAC6を実際に細胞内で分解できるかどうかは確認できていないため、見出した化合物AのHDAC6分解活性確認を最優先に実施する。化合物Aが細胞内で分解活性を示したとしても、さらなる細胞膜透過性の改善をはかるために合成展開を継続する。実際、化合物Aの細胞膜透過速度は、一般的な低分子医薬品に比べると低いことから、さらなる低分子量化や低極性化をはかる必要がある。特に、非常に高極性で細胞膜透過性低下につながっているヒドロキサム酸を他の官能基に変換する合成展開を検討する。また、リンカーの鎖長の最適化にも取り組み、物性と活性のバランスを保てる化合物の探索合成を行う。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Acquired curved hair is caused by fusion of multiple hair matrix cells.2024

    • 著者名/発表者名
      Horibe, I.; Izumi, S.; Ke, Y.; Tanahashi, N.; Takagi, Y.; Ishihara, R.; Nakano, T.; Sumiyoshi, T.; Nagaoka, Y.
    • 雑誌名

      J. Dermatol. Sci.

      巻: 113 号: 3 ページ: 130-137

    • DOI

      10.1016/j.jdermsci.2024.02.002

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cloning of two gene clusters involved in the catabolism of 2,4-dinitrophenol by Paraburkholderia sp. strain KU-46 and characterization of the initial DnpAB enzymes and a two-component monooxygenases DnpC1C2.2023

    • 著者名/発表者名
      Liu, Y.; Yamamoto, T.; Kohaya, N.; Yamamoto, K.; Okano, K.; Sumiyoshi, T.; Hasegawa, Y.; Lau, P. C. K.; Iwaki, H.
    • 雑誌名

      J. Biosci. Bioeng.

      巻: 136 号: 3 ページ: 223-231

    • DOI

      10.1016/j.jbiosc.2023.05.013

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 細胞膜透過性向上を志向したヒドロキサム酸構造を有するpyrilamine型HDAC6阻害剤の探索合成2023

    • 著者名/発表者名
      天野日菜子、平中誠弥、式田亮文、中田明子、新真由美、伊藤孝、伊藤昭博、吉田稔、布村一人、井手聡一郎、長岡康夫、住吉孝明
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ホスホフルクトキナーゼ-1阻害剤トリプトリナミドの高活性異性体の絶対配置同定2023

    • 著者名/発表者名
      懸樋涼、小林大貴、西村はる奈、矢島辰雄、吉田稔、長岡康夫、住吉孝明
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 氷再結晶化抑制活性を有するグルコバニリンとその誘導体の酵素合成およびそれらの細胞凍結保存への応用2023

    • 著者名/発表者名
      林さくら、譚斌駿、河原秀久、住吉孝明、長岡康夫
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Streptomyces属菌由来ε-Poly-L-Lysine とその遺伝子複合体の細胞内分布と動態2023

    • 著者名/発表者名
      佐野量子、白谷康太、住吉孝明、長岡康夫
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ツルムラサキ抽出エキスの成分が繊維芽細胞コラーゲン産生に及ぼす影響2023

    • 著者名/発表者名
      棚橋七海、石川美月、住吉孝明、長岡康夫
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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