研究課題/領域番号 |
23K06073
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
金 万春 金城学院大学, 薬学部, 助教 (30868807)
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研究分担者 |
和知野 純一 修文大学, 医療科学部, 准教授 (00535651)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | カルバぺネム系抗菌薬 / カルバペネマーゼ / 阻害剤 / 細菌感染症 / ベタラクタマーゼ / 抗生物質 |
研究開始時の研究の概要 |
2000年以降、世界各地の医療現場で、カルバぺネム系抗菌薬に耐性を獲得したカルバペネム耐性菌が世界的に拡大しつつあり、大きな医療問題となっている。カルバペネム耐性菌の主な耐性機構の一つは、カルバペネマーゼの産生である。カルバペネマーゼは、「最後の切り札として」のカルバペネム系抗菌薬をはじめ、ほとんど全てのβ-ラクタム薬を加水分解して不活化する。新たに承認されたセリン-カルバペネマーゼ阻害薬はメタロ-カルバペネマーゼに対しては全く阻害効果を示さず、未だ臨床的に有効な阻害剤はないという深刻な問題がある。本研究では、臨床的に問題となっているカルバペネマーゼを同時に阻害する化合物の開発を目的とする。
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研究実績の概要 |
カルバぺネム系抗菌薬に耐性を示す細菌の出現は薬物治療を困難にし、感染症治療を行う上で大きな脅威となっている。その耐性機構の1つにカルバペネマーゼの産生がある。IMP型やNDM型のメタロ-カルバペネマーゼが代表的であり、ほとんど全てのβ-ラクタム薬を不活化する。新たに承認されたセリン-カルバペネマーゼ阻害薬の中にはKPC型やOXA-48型セリン-カルバペネマーゼを阻害するものもあるが、IMP型やNDM型メタロ-カルバペネマーゼに対しては全く阻害効果を示さず、未だ臨床的に有効な阻害剤はないという深刻な問題がある。本研究では、世界各国の医療機関で臨床的に問題となっているカルバペネマーゼを同時に阻害する化合物(二元型阻害剤と略す)の開発を目的としており、以前見出したSulfamoyl heteroarylcarboxylic acids(以降、SHCsと略す) はIMP型やNDM型などのメタロ-カルバペネマーゼを強く阻害することが確認できた。そこでSHCsの化学構造を基に、セリン-とメタロ-カルバペネマーゼに対する二元型阻害剤の探索を目的とした。 令和5年度では化合物SHCsの三次元構造情報を基に、SHCsを化学構造の改変を行い、セリン-およびメタロ-カルバペネマーゼを同時に阻害する二元型阻害剤のデザインと合成を行った。阻害剤母核5員環の中の1で示す位置の原子を改変する。A、B、C、Dの位置にメタロ-カルバペネマーゼまたはセリン-カルバペネマーゼに結合させる目的の置換基を改変した。母核のA、B、C、Dの位置に置換基を導入した。1種類の類似体化合物の合成ルートを確定できていた。また2種類の類似体化合物の中間体までの合成ルートを確定できていた。合成方法の検討を行い、類似体化合物群を合成し、セリン-およびメタロ-カルバペネマーゼに対する阻害活性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度では化合物SHCsの三次元構造情報を基に、SHCsを化学構造の改変を行い、セリン-およびメタロ-カルバぺネマーゼを同時に阻害する2種類二元型阻害剤(化合物1と2)の分子設計と合成を行った。 化合物1:(1) SHCs 阻害剤母核について、5員環の中の一つの原子を硫黄原子に改変した。 (2) 残る4つの原子を水素原子やカルボキシル基とスルホアミド基に置換した。 化合物1の合成は4工程からなり、最終化合物が得られた。この新規化合物について、IMP-1とKPC-3に対する阻害活性の評価を行った。化合物1はKPC型カルバペネマーゼに対するIC50 値は=数マクロモーラーのオーダーであったが、IMP-1型メタロ-カルバペネマーゼ に対するIC50 値は1000マクロモーラー以上であった。KPC型カルバペネマーゼに対する良い阻害活性を示すが、IMP-1(メタロ-カルバペネマーゼ)に対する阻害活性がないことがわかった。この結果を踏まえて、新たに化合物2の新規阻害剤の分子設計を行った。 化合物2: (1) 化合物1が持つカルボキシル基とスルホアミド基はそのまま維持した。 (2) 新たにメチル基を5員環に導入した。これまでに中間体の合成ルートまでは確立できた。あと1から2工程で最終化合物が得られる段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年以降: 化合物2を新規合成に成功する。 (1) 新規合成した化合物のセリン-およびメタロ-カルバぺネマーゼに対する阻害活性を評価する(最小発育阻止濃度MIC、50%阻害濃度IC50と阻害定数Kiを求める)。(2) 初年度の知見を基に二元型阻害剤の化学構造の最適化と合成を引き続き行っていく。(3) 得られた二元型阻害剤における臨床分離株カルバぺネム耐性菌に対する阻害活性を評価する。(4) 二元型阻害剤とセリン-またはメタロ-カルバぺネマーゼ複合体の共結晶の作成とX線結晶構造解析により阻害様式の解明を行う。(5) 臨床分離株を用い、化合物のin vivoにおける阻害効果を評価する。
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