研究課題/領域番号 |
23K06099
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
南 彰 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (80438192)
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研究分担者 |
平林 義雄 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 客員主管研究員 (90106435)
奥 直人 帝京大学, 薬学部, 教授 (10167322)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | シアリダーゼ / シアル酸 / 消化吸収 / イメージング / 認知症 / 老化 / 食品 |
研究開始時の研究の概要 |
近年の認知症の抗体医薬品の治験から、認知症対策には早期からの予防が効果的であることが分かってきた。申請者は、糖鎖末端に結合するシアル酸のうち脳において稀少な神経障害性のある非ヒト型シアル酸が脳に移行することを見出した(PLOS ONE, 10, e0131061, 2015)。この非ヒト型シアル酸はヒト体内で合成されることは無く、脳に蓄積するものは赤身肉などの食品に由来する。本研究では、糖鎖科学に基づいて早期から開始する認知症の新たな予防戦略の構築を試みるとともに、認知症バイオマーカーの創出を目指す。
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研究実績の概要 |
シアル酸は主に糖鎖末端を修飾する酸性糖分子であり、自然界には主にN-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)とN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)の2つの分子種がある。Neu5Acは脳に豊富に存在し、認知機能に重要な役割を担う。一方、ヒトはNeu5Gcの生合成に関わる酵素(CMAH)の遺伝子に欠損があるため、Neu5Gcを生合成することができない。Neu5Gcは体内において、動脈硬化や腫瘍など多くの疾患と関連する。Neu5Gcは赤身肉などに含まれることから、食餌由来のNeu5Gcがヒト体内に吸収されると考えられる。しかしながら、Neu5Gcの消化と吸収の仕組みについては不明な点が多い。本年度は、Neu5Gc含有糖鎖の消化と吸収機構について解明を試みた。糖鎖からシアル酸を遊離させる酵素であるシアリダーゼについて、唾液に含まれる酵素活性やアイソザイムを分析したところ、ヒトの唾液には人工基質4MU-Neu5Gcで検出されるシアリダーゼ活性があることや、4種あるシアリダーゼアイソザイムのうちNEU2が主に含まれることを見出した。次に、Neu5Gc含有糖鎖に対する胃酸の影響を調べるために、Neu5Gc含有糖鎖を豊富に含む牛肉加工食品 にpH 1.2の日本薬局方崩壊試験法第 1液を添加し、糖鎖から遊離するNeu5Gcを定量した。牛肉加工食品に含まれるNeu5GcとNeu5Ac量はそれぞれ、60.7 nmol/gと105.3 nmol/gであった。胃酸模倣液によるNeu5Gcの加水分解は添加後すぐに始まり、4時間後には20%のNeu5Gcが遊離された。以上より、食餌に含まれるNeu5Gcは唾液や胃酸によって糖鎖から遊離され、血中へと吸収されることが示唆された。Neu5Gcの消化や吸収を抑制することにより、Neu5Gcに起因する疾患を予防できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Neu5Gcの消化や吸収機構を明らかにし、これらの研究成果を学会で報告した。現在、論文発表に向けて投稿準備中である。学術論文や以上を鑑みて総合的に「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究において、Neu5Gcの消化と吸収機構の一端が明らかとなり、Neu5Gcの消化や吸収を抑制することにより、Neu5Gcに起因する疾患を予防できる可能性を見出した。次年度では、当初の研究計画に従って、Neu5Gcの腸管吸収を抑制する食品成分の探索を行う。これまでに研究代表者は小腸絨毛突起に強いシアリダーゼ活性があることを見出している。そこではじめに、Caco2細胞による腸管関門モデルを利用して、絨毛突起のシアリダーゼの働きによりNeu5Gcが糖鎖から遊離し、遊離単糖の形でNeu5Gcが血液に取り込まれることを確認する。次に、同モデルを用いてNeu5Gcの腸管吸収を防止する食品成分を探索する。見出された食品成分については、動物実験やヒト試験により実際にNeu5Gcの腸管吸収や体内への吸収が抑制できることを確認する。
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