研究課題/領域番号 |
23K06101
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大場 陽介 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (90968603)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | ミトコンドリア / 膜リン脂質 / リピドミクス / プロテアーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
ミトコンドリアの機能破綻と多くの疾患との関連が報告されており、ミトコンドリア機能維持の重要性が唱えられている。ミトコンドリアの品質維持においてプロテアーゼは中心的な役割を果たすものの、活性制御メカニズムについては謎が多く、基質の同定も限られている。そこで本研究では、内膜に局在するストレス応答性プロテアーゼOMA1に着目し、ミトコンドリア膜リン脂質という独自の切り口によりOMA1活性を制御する脂質の同定および、新規基質の機能解析を通じてストレスによるOMA1活性化のメカニズムおよびその意義を解明する。
|
研究実績の概要 |
ミトコンドリアはその機能維持が細胞や組織、個体の恒常性に重要であり、多くの疾患や老化でミトコンドリア機能不全が見られる。ミトコンドリアタンパク質の恒常性はミトコンドリア内に存在する多くのプロテアーゼによって担われており、中でも内膜に局在するOMA1プロテアーゼはミトコンドリアストレスにより活性化することが知られており、ミトコンドリアの形態やストレス応答のシグナル伝達に関与する。しかしながらOMA1の活性がどのように制御されるかについては不明な点が多い。そこで本研究では内膜局在プロテアーゼOMA1に着目し、膜脂質環境によるミトコンドリアプロテアーゼの活性制御機構および活性化の意義を明らかにすることを目指している。 3年計画の1年目である令和5年度には、培養細胞を用いてOMA1の活性に影響を与える(活性化を促進または抑制)ミトコンドリア膜環境変化を探索した。OMA1の活性化はその基質タンパク質であるOPA1タンパク質の切断を指標に、また、ミトコンドリア脂質の分析は免疫沈降法によるオルガネラ単離と、質量分析法(LC-QTOF-MS)を組み合わせることにより実施した。ミトコンドリアのリン脂質合成、代謝に関わる分子の発現抑制を行った結果、ミトコンドリアに限局するカルジオリピンの代謝に関わる分子を発現抑制した場合にOMA1によるOPA1の切断が抑制されることを見出した。また、その時のミトコンドリア膜脂質の詳細な解析から、カルジオリピンの量のみならず脂質を構成する脂肪酸鎖に特徴的な変化を見出した。この脂質環境変化は、OMA1によるOPA1切断が抑制されていた条件において共通に見られていたことから、カルジオリピンが形作るミトコンドリア脂質環境とOMA1の関連に注目して解析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標である膜脂質環境によるプロテアーゼ活性制御機構の解明に対し、研究計画の1年目では培養細胞を用いてOMA1の活性に影響を与える(活性化を促進または抑制)ミトコンドリア膜環境変化を探索した。その結果、プロテアーゼOMA1の活性に影響を与える脂質候補を見出すことができた。これは今後の研究の遂行において足場となる知見であると考えている。また、OMA1の活性について、基質の1つであるOPA1の切断を指標に検討を進めている一方で、OMA1の制御するシグナル経路をアウトプットにした指標など、細胞レベルでプロテアーゼ活性を評価する系を複数構築できた。また、OMA1の活性をin vitroで評価するため、無細胞系でのOMA1を脂質二重膜に再構築する系の構築にも目処が立っている。さらに、3年目に遂行予定の個体を用いた解析についても組織から免疫沈降法を用いてミトコンドリア単離を可能にするMito-tagマウスの導入および繁殖が順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
計画の2年目である令和6年度には、1年目で見出したOMA1の活性を制御しうる脂質候補についての解析を進める。脂質添加実験や遺伝子操作、阻害剤添加などの操作により、候補脂質の量に複数の手段で介入し、OMA1の活性を制御する可能性についてより詳細な検証を行う。また、OMA1に対する直接の影響についてin vitroの系で検証を進める予定である。さらに、当初の実施計画通り、2年目にはすでに見出しているOMA1の新規基質候補(ミトコンドリア局在核酸トランスポーター)について、OMA1による切断の意義やミトコンドリア機能、細胞機能との関わりについて解析を進める。これらの解析から、ミトコンドリア膜環境によるOMA1プロテアーゼの活性制御およびその意義について細胞レベルで明らかにする。そして3年目に予定している個体レベルでの解析に繋げる。
|