研究課題/領域番号 |
23K06103
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
金丸 佳織 東京理科大学, 創域理工学部生命生物科学科, 助教 (40838637)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 細胞膜リン脂質 / 上皮間葉転換 / 癌細胞 / 細胞膜 / リン脂質 / 線維症 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞膜のリン脂質ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸 (PIP2)は上皮性を制御する因子であり、上皮間葉転換時には細胞膜のPIP2が減少することを明らかにしてきた。また、PIP2の減少を抑制することで、上皮間葉転換の進展を抑制できる結果を得ている。本研究では、PIP2やその代謝酵素を標的とした上皮間葉転換の阻害法を探索する。本研究によって、細胞膜を起点とした上皮間葉転換の新たな分子機構が解明され、上皮間葉転換関連疾患の病態理解や創薬標的の特定に繋がることが期待される。
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研究実績の概要 |
上皮間葉転換は、上皮細胞が固有の特徴(上皮性)を失い、間葉細胞の性質を示す現象であり、予後不良の原因となる浸潤癌形成や臓器線維症などに深く関わっており、これらの疾患に対する重要な治療標的と考えられている。これまでに申請者は、細胞膜のある特定のリン脂質が上皮性を制御する因子であり、上皮間葉転換時にそのリン脂質が減少することを明らかにしてきた。そこで本研究では、当該リン脂質やその代謝酵素を標的とした上皮間葉転換の阻害法を探索し、細胞の顔となる膜特性の切り口から浸潤癌や臓器線維症の発症、悪化を抑制することを目的とした。令和5年度は、当該リン脂質合成酵素を発現させた肺胞上皮癌細胞株をTGFβにより上皮間葉転換誘導し、そのリン脂質量を多い状態に保つことで上皮間葉転換を抑制できるのかについて検討した。その結果、当該リン脂質合成酵素を発現させた肺胞上皮癌細胞株では上皮間葉転換が抑制されることが明らかとなった。さらに、当該リン脂質分解酵素を発現抑制した際にも同様の検討を行ったところ、そのリン脂質分解酵素発現抑制により上皮間葉転換が抑制されることも確認できた。加えて、肺胞上皮癌細胞株において、ブレオマイシンによる線維化誘導をおこなった際に、当該リン脂質分解酵素を発現抑制することで、線維化マーカーの発現上昇が抑制される結果も得られた。これらの結果から、当該リン脂質代謝酵素の発現制御により、癌細胞の上皮間葉転換が阻害できることや、線維化誘導に対する抵抗性を与えることができる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究では当該リン脂質合成酵素発現時に上皮間葉転換誘導した際に、癌細胞の上皮間葉転換が阻害されるかについて、肺胞上皮癌細胞株を用いた検討を進めることができた。さらにそのリン脂質分解酵素の発現抑制時においても同様の検討を進めることができており、当該リン脂質量を多く保つことにより、上皮間葉転換を抑制できることを強く示唆する結果が得られている。さらに、線維化誘導条件においてもそのリン脂質量の違いによる検討を進め、当該リン脂質量を多く保つことにより線維化誘導に対する抵抗性が見られることを示唆する結果も得られている。そのため総合的に考えて、研究はおおむね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上皮性の喪失と間葉細胞の性質の獲得により高転移能を示す癌細胞株を用いて、当該リン脂質合成酵素の過剰発現やそのリン脂質分解酵素の発現抑制により癌細胞の悪性度の減弱がみられるかを調べる。また、当該リン脂質の原料となる化合物の添加により、そのリン脂質を増加させることができるのか、また、それによって上皮間葉転換の抑制が可能なのかについても検証を進めていく。
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