研究課題/領域番号 |
23K06104
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 一般財団法人生産開発科学研究所 |
研究代表者 |
高橋 典子 一般財団法人生産開発科学研究所, その他部局等, 研究員 (50277696)
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研究分担者 |
今井 正彦 星薬科大学, 薬学部, 講師 (40507670)
長谷川 晋也 星薬科大学, 薬学部, 講師 (60386349)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | レチノイン酸 / レチノイル化 / タンパク質修飾 / シグナル伝達 / プロテインキナーゼA |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は個体発生・生命維持・疾病予防において、生体に多岐にわたる重要な作用を示すビタミンA酸 (レチノイン酸、RA) に着目して、従来とは全く異なる観点からRAの新しいシグナル伝達機構を解明することを目的とし、得られた知見に基づく新薬及び治療法の開発を最終目標とする。RAの新しいノンジェノミック作用機構として、ヒストン等の核内タンパク質やリン酸化酵素等のシグナル分子のRAによる修飾を、質量分析 (MS) や抗体技術を駆使して解明し、RAによるエピジェネティクス制御という新しい概念を確立する。新たな知見は、生命を脅かす癌や生活習慣病の撲滅のための新規予防・治療法や医薬品の開発に大いに貢献する。
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研究実績の概要 |
ビタミンAは微量必須栄養素であり、食物から摂取され小腸で吸収された後、代謝を受けて活性型のレチノイン酸 (RA) に変換する。RAは多岐にわたる作用を示し、生命の根幹である個体発生、細胞分化・増殖に深く関わる。また、RAがヒト前骨髄性白血病細胞 (HL60細胞) を成熟細胞である顆粒球様細胞に分化誘導させて増殖を停止させることから、急性前骨髄球性白血病の治療薬として使われている。RAの作用機構として、RA核内受容体とは異なるレチノイル化 (RAによるタンパク質修飾) が見出され、プロテインキナーゼA (PKA) の調節サブユニットがレチノイル化タンパク質であることが示された。レチノイル化によってPKAが核内に移行し、核内タンパク質のPKAによるリン酸化が増加することが見出された。このことから、本研究では核内レチノイル化PKAの基質となる核内タンパク質のひとつとしてヒストンに着目し、RA受容体を介さないノンジェノミックなエピジェネティクス制御経路を解明することを目標にした。今年度は先ず、レチノイル化PKAによるヒストンのリン酸化に及ぼすRAの影響を検討した。ヒストン(H2A, H2B, H3, H4)はアセチル化等数々の修飾を受ける塩基性タンパク質である。先ずPKAによってリン酸化されるアミノ酸を各ヒストンのアミノ酸配列から推測した。その結果、H2AとH4にはPKAによりリン酸化されるアミノ酸配列は存在しなかったが、H2BとH3には各々2か所存在していた。そこで次に、未処理、RA処理した細胞から抽出したヒストンに対して、H2BとH3における得られた特定アミノ酸のリン酸化体を認識する抗体を用いてイムノブロットを行った。その結果、RA処理でPKAによるリン酸化量が増加するアミノ酸を検出することができた。また、RA処理1時間で既に有意に増加しているPKA基質ヒストンを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分担者と密に連絡をとり、情報交換・議論をし、詳細な計画を立て、連携を図ることができたため、現在のところほぼ計画通りに進んでいる。しかし、処理時間の異なる未処理、RA処理した大量の細胞から、各々酸抽出を行いヒストン調製することが必要であり、かなりの時間と忍耐力を必要とするが、計画通りに研究を進め、着実に結果を出していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において、今年度はレチノイル化PKAによるヒストンのリン酸化の重要性を解明するため、レチノイル化タンパク質やPKAによるリン酸化核内タンパク質の研究から、ヒストンのエピジェネティクス研究に大きくシフトしている。即ち、以前は①レチノイル化タンパク質やPKAによりリン酸化されるタンパク質の同定、②同定したタンパク質の修飾部位 (アミノ酸) を特定、③修飾部位変異体を作成し細胞に導入後、PKAによるリン酸化を検討してレチノイル化・リン酸化部位を特定、④細胞分化・増殖との関連を検討、等をしていた。今回は、焦点を絞り、核内移行したレチノイル化PKAによりリン酸化されるヒストンを各条件の大量の細胞から酸抽出で調製しPKA-リン酸化ヒストンの解析を行った。ヒストン調製に時間と労力を要したが、現在、PKAによりリン酸化されるヒストンのアミノ酸が特定されつつある。この結果を確実なものとするため、欠失変異体、点変異体を作成し、細胞に導入してタンパク質を発現させ、確認する準備をしている。また、この結果を踏まえて、今後は、転写調節発現に深くかかわる重要な修飾反応であるヒストンのアセチル化へのRAの影響を同条件下で解析し、ヒストンのPKAによるリン酸化との関連性を明らかにして、RAによるヒストンのエピジェネティクス制御を解明する。併せてヒストン自身がレチノイル化されていることから、レチノイル化部位を特定して、3つの修飾によるRA作用発現機構を解明していく。ヒストンのレチノイル化は新規で不明な点も多いことから、先ずは、主たるリン酸化とアセチル化、その後レチノイル化、メチル化、ユビキチン化について解析する。RA受容体を介さないRAのノンジェノミックな作用機構をタンパク質修飾という観点から解明し、これら修飾を制御する因子の医薬品としての可能性を検討する。
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