研究課題/領域番号 |
23K06120
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
関 峰秋 新潟薬科大学, 医療技術学部, 教授 (40304167)
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研究分担者 |
梨本 正之 新潟薬科大学, 医療技術学部, 教授 (30228069)
小室 晃彦 新潟薬科大学, 薬学部, 教授 (60532950)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | tRNA / ウイルス / 感染応答 |
研究開始時の研究の概要 |
tRNAリサイクリングは、切断されたtRNAを再びインタクトなtRNAに再生する経路である。その生理学的意味は不明である。この反応は2つの酵素(tRNase ZSとTRNT1)により触媒される。新型コロナウイルスの蔓延に伴い、ウイルスの感染機構とヒトの感染防御機構への理解が急務である。申請者らは世界に先駆けてこれら2つの遺伝子が、新型コロナウイルスと同じくRNAウイルスであるタイラーウイルスの感染により転写誘導されることを発見し報告した。本研究においては、tRNAリサイクリングのウイルス感染防御における機能を引き続き解析し、tRNAリサイクリングの生理学的意義を世界に先駆けて明らかにする。
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研究実績の概要 |
tRNAリサイクリングは、切断されたtRNAを再びインタクトなtRNAに再生する経路である。その生理学的意味は不明であるが、我々は先にウイルス感染において機能する可能性を見出した。本研究計画においては、tRNAリサイクリングのウイルス感染防御における機能を解析し、tRNAリサイクリングの生理学的意義を世界に先駆けて明らかにする。この反応は2つの酵素(tRNase ZSとTRNT1)により触媒される。今回の解析ではIP・MassにおいてtRNase ZSとのインタラクションが示唆されたタンパク質群の解析を、個別に行った。その結果、JAK1カイネース(ウイルス感染応答シグナル伝達経路)とTRNT1(tRNAリサイクリング)の2つのタンパク質がtRNase ZSとフィジカルにインタラクションする可能性が高いことが明らかになった。JAK1は細胞の感染応答シグナル経路の重要因子であり、tRNase ZSがウイルス感染応答のシグナル伝達経路に機能する可能性が考えられた。この結果を踏まえtRNase ZSの細胞内局在を解析した。これまでtRNase ZSは細胞質に局在するとされていた。しかしながら、我々の解析の結果、tRNase ZSは細胞質よりも核や膜・オルガネラに多く局在することが明らかになった。これに加えて膜に局在するtRNase ZSは、ウイルスの感染やインターフェロンβ処理により局在が変化し、JAK1と多く共局在することが判明した。以上の結果は、tRNase ZSがウイルス感染後のシグナル伝達に関与していることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの解析で以下の解析結果を得た。(1)新規関連タンパク質群の同定:tRNase ZSとインタラクションする可能性がIP・mass解析等で示唆されていたタンパク質群について、tRNase ZSとのインタラクションを個別に解析した。その結果、①JAKカイネース、②TRNT1、の2つのタンパク質がtRNase ZSとフィジカルにインタラクションする可能性が高いことが明らかになった。(2)細胞内局在の解析:これまでtRNase ZSは細胞質にのみ局在すると考えられていた。しかしながら、先の解析でTRNT1とのインタラクションの可能性が示された。TRNT1はミトコンドリアに局在することが知られている。また近年の研究により、tRNase ZSの核内での機能が示唆されている。これらのことから、tRNase ZSの細胞内での局在を、改めて原理の異なる2通りの方法で検証した。はじめに細胞分画法でHeLa細胞を細胞質、核、膜・オルガネラに分画した。その結果、tRNase ZSは従来言われていた細胞質よりも、核や膜・オルガネラ分画に多く分画されることが明らかになった。また免疫染色法では、tRNase ZSが細胞全般に広く分布する場合と細胞膜に多く局在する2通りの局在パターンが観察された。(3)ウイルス感染後の局在の変化:細胞膜に多く局在する場合は、ウイルスの感染により局在の変化が観察された。JAK1との共局在は、通常の条件下ではわずかしか観察されないが、ウイルス感染後、共局在が多く観察された。同様の共局在の変化はインターフェロンβ処理後の細胞でも観察された。上記の通り今年度に関しては、細胞内局在の解析で予想外の結果がでたため、そちらの解析を優先した。結果として予定していた解析が翌年度に繰り越すことになった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は以下の解析を行い、tRNase ZSの感染応答シグナル伝達経路での機能を解析する。 ①ウイルス感染後のJAK1とtRNase ZSの結合部位の同定、②JAK1のリン酸化の結合に及ぼす影響の解析、③ウイルス感染後のtRNase ZSのリン酸化の有無、④リン酸化部位に変異を入れたJAK1、tRNaseZS過剰発現が感染応答シグナル伝達に及ぼす影響、⑤JAK1結合部位欠損tRNase ZS過剰発現が感染応答シグナル伝達に及ぼす影響、⑥tRNaseZSノックダウン細胞、tRNaseZS過剰発現細胞におけるウイルス感染後のインターフェロンmRNA量、タンパク質量、他のインターフェロン応答因子への影響の解析、⑦上記各種変異がウイルス感染やインターフェロン投与後のtRNase ZS局在の変化に及ぼす影響。
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