研究課題/領域番号 |
23K06134
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
小林 章男 国際医療福祉大学, 薬学部, 教授 (70963726)
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研究分担者 |
榊原 啓之 宮崎大学, 農学部, 教授 (20403701)
高石 雅樹 国際医療福祉大学, 薬学部, 講師 (50453410)
篠田 弘造 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (10311549)
松本 高利 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (50343041)
鈴木 茂 東北大学, マイクロシステム融合研究開発センター, 教授 (40143028)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 低分子有機酸鉄 / 細胞毒性 / 物理化学的性質 / 消化器毒性 / イオン構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
鉄欠乏性貧血患者への鉄剤の経口投与により、下痢や悪心・嘔吐といた副作用が高頻度で発現する。しかし、その発現機構や鉄剤の種類により副作用が異なる理由は明らかになっていない。そのため、副作用に対する有効な軽減措置がないのが現状である。 鉄剤の副作用に対する軽減措置を考えるためには、消化管内における鉄イオン構造を詳細に解析し、発現機構を解明する必要がある。この発現機構から副作用軽減措置を立案することは、患者の生活の質を向上させるために重要な取り組みと考えられる。 従って本研究では、これら副作用と鉄の分構造の関係を明らかにし、患者の生活の質を向上させる提案を行うことを目的としている。
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研究実績の概要 |
R5年度は、以下の研究実績を残すことができた。 1.クエン酸第一鉄とクエン酸第二鉄の溶液を数種類作製し、各々の色調、pH及び吸収スペクトルの経時変化を検討した。結果、医薬品製剤の水溶液を作製することで、これらの項目が数週間安定していることが判明し、in vivoあるいはin vitroの実験に供する目途が立った。 2.クエン酸第一鉄とクエン酸第二鉄の医薬品製剤を細粉して電子顕微鏡および付属する特性X線スペクトルで観察及び測定を行った。結果、有機酸鉄ごとに構成元素比が異なることがわかり、有機酸鉄溶液の安定性を裏付けるデータが得られた。 3.有機酸鉄の分子構造と消化器毒性(細胞障害性)の関係を実験科学的に明らかにするうえで、有機酸鉄溶液が比較的不安定であることが分かったため、in vivo試験による消化器毒性の検討は技術的に困難になる可能性が高いと考え、消化管上皮などを由来とする培養細胞を用いたin vitro試験によって、有機酸鉄の分子構造と細胞障害性の関連性の検討を開始した。結果、複数の培養細胞でクエン酸第一鉄とクエン酸第二鉄の細胞毒性を、色調、pH及び吸収スペクトルのデータとともに取得することができ、両有機酸鉄の細胞毒性に大きな差がないことが示唆された。 4.上記の実績は、日本毒性学会環境フォーラム、日本毒性学会金属部会、日本薬学会学会、日本鉄鋼協会春季大会で発表した。また、「金属、2024年No.4」のトピックとして論文化し成果を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初は、有機酸鉄の一般試薬を購入して水溶液を作製したが、色調やpHの変化が著しく、溶解性も不安定で安定した条件で実験が行えない状況であった。しかし、有機酸鉄として医薬品製剤を用いることで、物性面での安定性が著しく向上し、安定した条件で実験を推進することが可能になった。 安定した実験条件を整える上で、電子顕微鏡および特定スペクトル測定による検討結果は、有機酸鉄溶液の物理化学的性状の安定性を考察するうえで重要な情報をもたらした。 有機酸鉄溶液の性状を安定化することができたため、in vitro実験を円滑に進めることが可能となり、当初の予定に沿った成果を残すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の研究計画に沿った形で次の内容に重点を置いて研究を推進する。 1.水系媒体中での有機酸鉄の分子構造を正確かつ詳細に確認する実験方法を確立する。 2.可能であれば、有機酸鉄の分子構造を制御する方法あるいは条件を見出す。 3.水系媒体中の有機酸鉄の分子構造を確認しながら、ヒトおよび動物の消化管由来細胞を用いて、有機酸鉄の毒性強度を比較検討する。 4.3の細胞毒性発現の機序を検討するため、炎症性サイトカインや逸脱酵素など毒性マーカーを探索する。 5.げっ歯類を用いた実験の可能性を検討する。
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