研究課題/領域番号 |
23K06146
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47040:薬理学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山口 智和 九州大学, 医学研究院, 助教 (30749940)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | CNOT4 / CCR4-NOT / 心臓 / 老化 / 翻訳 |
研究開始時の研究の概要 |
動脈硬化、心臓弁膜症といった循環器疾患の多くが加齢に伴い発症リスクが高まる老化関連疾患であり、経年による心臓への負荷の蓄積が心臓リモデリングを経て心不全を導く。心臓を構成する心筋細胞、線維芽細胞、および血管内皮細胞の細胞老化は心不全の病態基盤形成に関与すると考えられているが、心不全発症に至る分子機序は不明な点が多い。申請者は、予備的な解析からユビキチン転移酵素CNOT4が心臓老化を抑制する可能性を見出しており、本研究は哺乳類組織や細胞におけるCNOT4の翻訳制御を介した分子機序を明らかにすることで、心臓老化に起因する疾患予防・治療法を開発するための重要な基礎研究になると期待している。
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研究実績の概要 |
心臓老化におけるユビキチン転移酵素CNOT4の生理機能を明らかにするため、令和5年度は下記の項目について検討した。 (1)筋肉特異的CNOT4欠損マウスの表現型解析:心臓におけるCnot4の生理機能を明らかにするためにCnot4 floxマウスとMCK-Creトランスジェニックマウスとの交配から筋肉特異的なCnot4欠損マウス(Cnot4 mKO)を作出した。同マウスは野生型マウスと比較し、体重や見た目に差を認めず、出生後の心体重比や心機能に異常を認めなかった。一方で、半年齢Cnot4 mKOマウスの心臓では有意な心体重比の増加を認め、細胞老化マーカーであるp16 mRNAの有意な発現増加を認めた。以上の結果から、心筋細胞においてCnot4が老化抑制に寄与することで心肥大の予防的役割を担っていることが示唆された。 (2)新生児ラット培養心筋細胞におけるCNOT4の発現解析:心筋老化をin vitroで評価する実験系の確立のため、新生児ラットより心筋細胞を単離・培養した。予備検討として、心筋細胞播種後の時間経過と老化の進行度を解析するために、播種後30日まで、経時的に細胞を採材しSA-β-gal染色、およびqPCRによる老化遺伝子発現解析を行った。興味深いことに、CNOT4の遺伝子発現を同時に解析したところ、播種初日から20日後にかけて2倍以上のCNOT4の発現増加を認め、その後発現が減少に転じることがわかった。このことから、CNOT4の発現変動が心筋細胞老化の分子機序に何らかの影響を与えている可能性が考えられるため、今後はsiRNAによるCNOT4のノックダウンもしくはウイルスベクターを用いた過剰発現によるCNOT4タンパク質の発現調節により、心筋細胞老化の表現型がどのように変化するか解析していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋肉特異的CNOT4遺伝子欠損マウスの作出及び表現型の解析により心臓におけるCNOT4の抗老化作用の可能性を見出した。また、本研究室において、新たにラット新生児から心筋細胞、および心臓線維芽細胞を単離し培養する手段を確立したことにより、細胞レベルでCNOT4と老化細胞の機能連関を解析することが可能となった。今後はマウス心臓、およびラット単離心筋細胞にてCNOT4欠損下におけるミトコンドリアの機能評価やリボソームにおける翻訳動態を主軸に解析を行い、抗老化に重要なCNOT4の生理的役割を明らかにできると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
筋肉特異的Cnot4欠損マウスの心臓において老化を促進する表現型を認めたことから、その分子機序の解析を主軸に研究を進める。心筋老化の原因は様々な理由が報告されているが、ミトコンドリアの機能低下に伴う活性酸素の増産に起因する酸化ストレス傷害が主要因の一つである。in vitro解析からCNOT4がミトコンドリア上における翻訳調節、および翻訳に連動したマイトファジー制御に関与するという報告があることから、CNOT4を欠損した心臓および単離心筋細胞においてミトコンドリアの量的制御、エネルギー産生、膜電位の恒常性に着目し、ミトコンドリア機能異常の表現型を解析する。異常を認めた場合、どのような分子破綻が生じているのかの詳細を解析するために、心臓から単離したミトコンドリア画分を標的にRibosome profilingを行いCNOT4によるミトコンドリア上での翻訳制御の詳細を明らかにする。また、並行して現在マウスCnot4 RING変異(Cnot4 L16A)マウスとCnot4 flox; MCK-Creマウスとの交配を進めている。Cnot4 L16A遺伝子のホモ接合マウス(Cnot4L16A/L16A)は出生直後に死亡する(部分的な耐性致死)が、ヘテロ接合マウスは見た目上の異常を認めない。したがって、Cnot4 L16Aヘテロかつ、筋肉特異的にCnot4をヘテロ欠損するマウス(Cnot4 L16A/flox; CreTg/+)心臓においても老化表現型を認めれば、心筋老化の抑制にCnot4のE3酵素としての機能が必須であることが証明できると考えている。同マウスの表現型解析の結果、老化表現型を認めた場合、心臓及び単離心筋細胞、またはそれらからの単離ミトコンドリアにおけるユビキチン化タンパク質のプロテオーム解析を行い、老化抑制機序に重要なCnot4のユビキチン標的タンパク質を同定する。
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