研究課題/領域番号 |
23K06151
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47040:薬理学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
神戸 悠輝 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (60549913)
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研究分担者 |
玉川 直 (中川直) 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (20611065)
那須 雄介 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60831328)
佐藤 達雄 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (90830993)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ニューロン / アストロサイト / 神経可塑性 / 大脳皮質視覚野 / 2光子顕微鏡 / 乳酸 / 乳酸代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、眼優位性可塑性モデルを用いて、大脳皮質視覚野臨界期の神経可塑性に対する乳酸代謝の寄与を解明する。2023年度は、乳酸代謝活性化による成熟マウス視覚野への眼優位性可塑性の誘導を試みると同時に、次年度で使用予定の乳酸センサーの最適化を行う。2024年度は、引き続き実験1を遂行するとともに、成熟マウス視覚野における乳酸代謝の2光子顕微鏡イメージングを行いながら、適宜乳酸センサーの最適化を行う。2025年度には生理的視覚野臨界期への乳酸代謝の寄与の解明を行い。これらの解析を通じて、大脳皮質視覚野臨界期の神経可塑性における乳酸代謝の寄与を解明する。
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研究実績の概要 |
大脳皮質視覚野臨界期は、神経可塑性が一過性に、最大級に高まる期間である。通常、臨界期を過ぎた成熟個体の視覚野には神経可塑性は無いが、幼若脳由来の若いアストロサイトを成熟個体視覚野に移植すると、神経可塑性を誘導できる。では、「アストロサイトの若さ」とは何か?本研究では、このアストロサイトの若さを活発な乳酸代謝と仮説し、神経可塑性への寄与を検証する。成熟マウス視覚野に対し様々な方法で乳酸代謝を活性化し、神経可塑性の誘導を試みる。さらに、最先端の蛍光乳酸センサーと2光子顕微鏡技術によって、ニューロンとアストロサイトのin vivoイメージングを行い、両細胞間の乳酸の受け渡しを可視化する。これらの解析を通じて、大脳皮質視覚野臨界期の神経可塑性における乳酸代謝の寄与を解明する。 研究分担者は細胞外緑色蛍光乳酸センサーをさらに改良し、タイムコンスタントをより早くした。研究代表者はこの改良細胞外緑色蛍光乳酸センサーのコーディング配列をCAGプロモーターの下流に組み込んだプラスミドを作成した。その後、このプラスミドを大腸菌にトランスフォーメーションし、プラスミドを大量調製した。さらに、このプラスミドを293細胞にトランスフェクションすると緑色蛍光が観察されるとともに、細胞外への乳酸の添加に伴って緑色蛍光の蛍光強度が増加することから、乳酸センサーとして機能していることが確認できた。続いて、このプラスミドを2光子顕微鏡下においてマウス大脳皮質視覚野第4層の錐体細胞にシングルセルエレクトロポレーションを行った。その結果、エレクトロポレーション4日後から細胞体、先端樹状突起、基底樹状突起に渡る全域に細胞外蛍光乳酸センサーの発現を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、細胞外緑色乳酸センサーをマウス大脳皮質視覚野の単一錐体細胞に発現させ、同センサーの緑色蛍光を覚醒化マウスから観察することに成功している。さらに、同センサーの分布を2光子顕微鏡で観察すると、細胞体、先端樹状突起および基底樹状突起に渡り広く存在していた。また、培養細胞実験系において293細胞に同センサーを発現させ、その後、同細胞に種々の濃度の乳酸を細胞外に添加すると、乳酸の濃度に伴った蛍光強度の増強が観察されたことから、今回研究代表者が作成した細胞外緑色乳酸センサーは機能的に発現する事が明らかとなった。これらの結果から、細胞外緑色乳酸センサーをin vivo覚醒化マウスの2光子顕微鏡測光を行うことで、マウスの行動および情動に伴ったシングルニューロンの種々のコンパートメントにおける細胞外乳酸濃度変動を観察することが可能であると推察される。また、研究代表者は細胞外緑色乳酸センサーを錐体細胞に広く発現させるために、カルモジュリンキナーゼ2プロモーターの下流に組み込んだプラスミドも作成し、同プラスミドを用いてアデノ随伴ウイルスを調製していることから、単一細胞の解析のみならず、ポピュレーション解析も可能であると考えている。このように、当該研究課題に必要な資源や実験系が揃いつつあることから、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
in vivoのヘッドクランプマウスの大脳皮質視覚野錐体細胞において細胞外緑色乳酸センサーの発現を確認できたことから、覚醒下のマウスに視覚刺激を行い視覚刺激に伴い神経細胞外の乳酸濃度がどのように変動するかを検討する。脳組織における乳酸はアストロサイトに由来すると考えられる。これまでの報告から、アストロサイト活動の指標であるアストロサイト内カルシウム濃度は通常では視覚刺激に反応しないが、プラゾシンを腹腔内投与しアドレナリンα1受容体を阻害することで初めて観察可能であることが報告されている。アストロサイトの乳酸動態はノルアドレナリンの影響を強く受けることから、プラゾシン存在および非存在下における視覚刺激時の細胞外緑色乳酸センサー蛍光強度変化を観察する。さらに、乳酸はアストロサイトからニューロンに受け渡されると考えられる。これらの細胞間における乳酸濃度変動を観察するためには、アストロサイトあるいはニューロン内赤色蛍光乳酸センサーおよびアストロサイト外緑色蛍光乳酸センサーを作成する必要がある。そこで、アストロサイト特異的に蛍光乳酸センサーを発現させるために、gfaABC1Dプロモーターの下流に緑色細胞外あるいは赤色細胞内乳酸センサーのコーディング領域を繋げたプラスミドを作成する。さらに、これらのプラスミドをアデノ随伴ウイルスにパッケージングしマウスに感染させ、アストロサイト特異的に乳酸センサーを発現させたマウスを獲得する。
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