研究課題/領域番号 |
23K06158
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47040:薬理学関連
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
加藤 伸一 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (90281500)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | TRPV6 / 腸上皮バリア / 細胞間結合タンパク質 / 炎症性腸疾患 / デキストラン硫酸ナトリウム誘起大腸炎 / 難治性腸疾患 / 大腸炎 / 大腸がん |
研究開始時の研究の概要 |
TRPV6は、Ca2+透過性の高いTRPチャネルであり、主に腸上皮に発現し、腸管からのCa2+吸収に関与している。しかし、TRPV6の腸上皮局所における生理学的・病態生理学的役割については不明である。本研究では、TRPV6遺伝子欠損マウスを新たに作出し、腸管上皮バリアの調節における役割ならびに腸炎、病的線維化、大腸がんなどの難治性腸疾患の病態との関連について、個体レベルから細胞・組織、さらには細胞内シグナル伝達系を含む分子レベルまで詳細に解析する。本研究成果は、TRPV6を標的とした難治性腸疾患における新たな病態理論の確立および予防・治療標的として可能性を提案することに繋がるものと期待される。
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研究実績の概要 |
Ca2+高透過性TRPV6は腸上皮に高発現していることが知られており、腸管におけるCa2+吸収を介して、全身のカルシウムホメオタシスの制御に関与していると考えられている。しかし、腸管局所の生理学的役割や疾患の病態におけるTRPV6の役割についてはほとんど明らかになっていない。本研究では、TRPV6の腸上皮バリア機能制御における役割について、TRPV6遺伝子欠損(KO)マウスを作製し検討した。 CRISPR-Cas9システムにより2~3番目の膜貫通領域を欠損したTRPV6KOマウスを作製した。デキストラン硫酸ナトリウム誘起大腸モデルを用いて検討したところ、野生型マウスと比較してTRPV6KOマウスでは、体重減少、下痢・下血の程度、大腸の短縮、組織学的傷害、さらには好中球浸潤の指標であるミエロペルオキシダーゼ活性や炎症性サイトカイン発現の増大がいずれも有意に増悪することを見出した。また、正常時の腸管透過性をFITC-デキストラン法により検討したところ、野生型マウスと比較してTRPV6KOマウスでは、腸管透過性が有意に亢進していることを観察した。さらに、正常時の大腸における上皮細胞増殖能および細胞間結合タンパク質発現を検討したところ、野生型マウスと比較してTRPV6KOマウスでは、上皮細胞増殖能が低下している傾向が、またE-cadherin、occludin、claudin-3およびclaudin-7などのアドヒレンス/タイトジャンクションタンパク質発現が有意に低下していることを認めた。 以上の結果より、TRPV6は腸上皮バリア機能の維持を介して大腸炎に対して保護的に機能していることが判明した。おそらく、TRPV6は上皮細胞増殖能や細胞間結合タンパク質発現の制御を介して上皮バリア機能の維持に関与しているものと推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TRPV6KOマウスを新たに作製し、さらにTRPV6KOマウスを用いた病態解析を行い、TRPV6の大腸および上皮バリア機能制御における役割を見出すことができたことから、当初の初年度の研究計画通りに進展していると判断している。本研究成果の一部は、第97回日本薬理学会において発表している。
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今後の研究の推進方策 |
他の大腸炎モデルの病態および大腸炎の治癒過程におけるTRPV6の役割について検討する。また、TRPV6の腸上皮バリア機能の制御メカニズムを詳細に解析するため、大腸上皮オルガノイドを作製し検討する。現在、大腸上皮オルガノイドの作製を進めている。
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