研究課題/領域番号 |
23K06162
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47040:薬理学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
早田 敦子 大阪大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (70390812)
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研究分担者 |
橋本 均 大阪大学, 大学院薬学研究科, 教授 (30240849)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | PACAP / ストレス / うつ病 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では期間内に、全脳イメージング、精神行動薬理学的解析や、神経活動操作、網羅的遺伝子発現解析などの研究手法を用いることで、ストレス負荷によりうつ状態を呈したマウスの脳において、PACAP-PAC1シグナルの遮断が、脳のどの領域、どの細胞種、どの神経投射経路に関わることで、うつ状態からの改善効果を示すのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
我々は、モデルマウスを用いて、PAC1低分子遮断薬が、単回投与により即効性で持続的な抗うつ・抗不安作用や記憶障害の改善を示すことを見出してきた。 本研究では、このPAC1低分子遮断薬が、うつ状態の脳の、領域・回路・細胞シグナル系の各階層において、どのような変化をもたらし改善作用を発揮するのか、薬理学的特性を明らかにすることで治療効果の機序解明を目指す。 令和5年度は、下記の結果を得た。 1)社会的敗北ストレスを負荷したマウスを用いて、特定の脳領域にPAC1低分子遮断薬を局所投与し、種々の行動試験を実施した。その結果、PAC1低分子遮断薬により、社会性行動には改善が認められなかったものの、即時的かつ持続的なうつ様行動の改善が認められることが明らかになった(未発表データ)。 2)同定したうつ様行動に関わるPAC1シグナルが存在する脳領域において、網羅的遺伝子発現解析を実施した。得られたデータに対してgene oncotology 解析を実施した結果、PAC1低分子遮断薬投与群では対照群と比較して、モノアミン系の神経伝達やスパイン形成に関連する遺伝子群の発現が減少していることが明らかになった(未発表データ) 3)アンジェルマン症候群などの神経発達症のモデルマウスにおいて、その長さの異常が報告されている神経細胞の情報出力領域、神経軸索起始部(AIS)について、そのAISの可塑性に着目し、PACAP欠損マウスでのAIS長および、ADHD治療薬であるアトモキセチン投与時における行動解析とAIS長の変化を検討した。その結果、PACAP欠損マウスでは第一次体性感覚野(S1)においてAIS長が有意に短縮していた。また、反復アトモキセチン投与は、PACAP欠損マウスの多動を改善すると共にS1でのAIS長の異常を改善することが明らかになった(Iwahashi et al., JPS, 2023)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度実施した研究により、うつ様行動に関わるPAC1シグナルが存在する脳領域を同定することができた。そのため、この脳領域において神経活動操作や投射経路を明らかにすることで、PACAP-PAC1シグナル遮断が、どのようにうつ状態からの改善させることができるのか、その治療効果の作用機序の一端を明らかにすることが可能になったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今回明らかになった脳領域を中心に、全脳イメージング、精神行動薬理学的解析や、神経活動操作、電気生理解析などの研究手法を用いることで、引き続き、ストレス負荷によりうつ状態を呈したマウスの脳におけるPACAP-PAC1シグナル遮断によるうつ状態からの改善効果を引き起こす作用機序を明らかにする。
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