研究課題/領域番号 |
23K06163
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47040:薬理学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中島 一恵 (久岡一恵) 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (20393431)
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研究分担者 |
森岡 徳光 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (20346505)
中村 庸輝 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (60711786)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 神経障害性疼痛 / ミクログリア |
研究開始時の研究の概要 |
慢性疼痛は頻度が高い疾患であるが、既存の鎮痛薬が奏効しないため患者数が増加の一途をたどっている。より有効で安全な新規鎮痛薬が求められていることから、慢性疼痛の病態メカニズムを明らかにし、病態仮説に則った合理的な新薬の開発は急務である。研究代表者らは慢性疼痛の一種である神経障害性疼痛モデル動物を用いて、海馬ミクログリア活性化が病態に関与することを明らかにした。そこで、本研究では神経障害性疼痛に関連する特定の海馬ミクログリア(サブセット)に着目して、その細胞特性、活性化に伴う機能変化メカニズム、病態に対する影響について解析し、病態と関連する脳内分子基盤の解明にアプローチする。
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研究実績の概要 |
慢性疼痛は頻度が高い疾患であるが、既存の鎮痛薬が奏効しないため患者数が増加の一途をたどっている。より有効で安全な新規鎮痛薬が求められていることから、慢性疼痛の病態メカニズムを明らかにし、病態仮説に則った合理的な新薬の開発は急務である。本研究ではミクログリアに特異的に発現する複数のマーカー分子(Iba-1, P2Y12, TMEM119)の免疫染色を行い、神経障害性疼痛モデルマウス脳(海馬、嗅周皮質、扁桃体、島皮質)におけるミクログリアの変化について解析を行った。坐骨神経結紮後2週目の神経障害性疼痛モデルマウス海馬においてIba-1とP2Y12の有意な増加が確認できた。また、嗅周皮質、扁桃体、島皮質においても統計学的に有意ではないもののIba-1とP2Y12の増加傾向が確認できた。一方で、いずれの脳領域においてもTMEM119は変化が認められなかった。以上のことから、神経障害性疼痛モデルマウス海馬においてミクログリアが活性化されていることが明らかになった。そこで、ミクログリアを一時的に枯渇することが可能なクロドロン酸内包リポソームを海馬に局所投与し、神経障害性疼痛モデルマウスにおける認知機能低下及び疼痛閾値低下と神経形態変化に対する効果について検討を行った。その結果、海馬ミクログリアの枯渇により、神経障害性疼痛モデルマウスで認められる認知機能低下と疼痛閾値の低下および神経突起の短縮が改善されることが明らかになった。以上のことから、神経障害性疼痛モデルマウスにおいて海馬ミクログリアの機能変化が海馬神経の可塑的変化を誘導し、認知機能低下と疼痛閾値の低下に関与する可能性が示唆された。本研究成果は、神経障害性疼痛形成機序の解明、ならびに神経障害性疼痛の新たな治療戦略の開発に寄与するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経障害性疼痛モデルマウス脳におけるミクログリアの解析結果については、第62回日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会 中国四国支部学術大会において、口頭発表を行った。また、クロドロン酸内包リポソームを神経障害性疼痛モデルマウスの海馬に局所投与し、認知機能低下及び疼痛閾値と神経形態に対する効果について検討した結果についても、第62回日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会 中国四国支部学術大会において、口頭発表を行った。 海馬は血管が豊富で末梢の炎症が反映されやすく、他の脳領域と比べ血液脳関門が脆弱であることも知られることから、神経障害性疼痛モデルマウスにおける末梢炎症が海馬ミクログリアの活性化に関与している可能性を推測している。そこで、神経障害性疼痛モデルマウス末梢血中の単球・マクロファージをフローサイトメトリーで測定し末梢炎症との関連性を解析する目的で基礎検討を実施して測定条件を確立することができた。以上のことから、おおむね研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、Iba-1、P2Y12、TMEM119以外のミクログリアのマーカー分子(CD11b、CD68、TREM2など)を用いた免疫染色の基礎検討に関しても実施中である。今後は、これらのマーカーの検討も追加して行い、神経障害性疼痛により複数の脳領域で活性化されるミクログリアの状態について経時的な変化も含めて明らかにする予定である。神経障害性疼痛モデルマウス末梢血中の単球・マクロファージをフローサイトメトリーで測定し、末梢炎症と海馬ミクログリア活性化の関連について明らかにする。また、海馬ミクログリアが海馬神経の可塑的変化を引き起こすメカニズムとして、ミクログリアによるシナプス貪食に着目して、シナプス貪食作用に関与する分子の発現変化について検討を行う予定である。神経障害性疼痛モデルマウスにおける認知機能および疼痛閾値低下に対するミクログリアの役割を明らかにするためにミクログリア枯渇薬として用いられるPLX3397を投与して検討を行う予定である。
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