研究課題/領域番号 |
23K06169
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47040:薬理学関連
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
松岡 功 高崎健康福祉大学, 薬学部, 教授 (10145633)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | マスト細胞 / P2X4受容体 / EP3受容体 / 炎症性サイトカイン / インターフェロンーγ / Toll-like-receptor-3 / クロマチンリモデリング / リン酸化プロテオミクス |
研究開始時の研究の概要 |
我々は、細胞外ATPが、イオンチャネル型P2X4受容体(P2X4R)を介してマスト細胞のサイトカイン産生を著しく亢進させる現象を見出した。本研究では以下の点について検討する。 1)マスト細胞のサイトカイン産生に及ぼすP2X4R刺激作用を経時的かつ網羅的に検討する。 2)P2X4Rを介するマスト細胞のサイトカイン産生亢進機序を分子レベルで詳細に検討する。 3)P2X4Rシグナルが他の炎症性細胞のサイトカイン産生にも影響していないか検討する。 4)P2X4Rまたはシグナル伝達系を評価するアッセイ系を確立し、新規阻害薬を探索する。 本研究成果はP2X4Rを標的とした新規炎症性疾患治療法の確立に貢献できる。
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研究実績の概要 |
マスト細胞において細胞外ATPがP2X4受容体(P2X4R)を介して抗原や種々のG蛋白質共役型受容体刺激による炎症性サイトカイン産生を亢進することを見出し、その機序の解析に取り組んだ。初年度は、P2X4Rシグナルの機能解析に用いるモデル細胞の確立を行った。すなわち、マスト細胞には複数の機能的なP2受容体を発現しており、ATPが多様な受容体シグナルを同時に活性化するため、機能的なP2受容体を発現していないヒトアストロサイトーマ1321N1細胞にP2X4Rを安定発現させ、サイトカイン産生におよぼすP2X4Rシグナルの影響について検討した。得られた細胞系において、ATPはインターロイキン(IL)-6の産生を惹起し、他の受容体刺激薬の効果を増大させることが確認できた。今後はこの細胞系を利用してP2X4Rシグナルを解析する。 また、最近のコロナウイルス感染症の病態悪化にIL-6の異常産生が関与すると報告されているため、この背景について解析した。ヒト気道上皮細胞において、ウイルスを模倣するpoly(I:C)刺激によるIL-6産生を増幅させる因子を検討したところ、P2X4Rシグナルより顕著な作用を示す因子としてインターフェロン(IFN)-γを同定し、その作用機序を解析した。その結果、IFN-γは気道上皮細胞のRNAウイルス受容体であるToll-like-receptor(TLR)-3をアップレグレートし、同時にIL-6遺伝子座のクロマチン修飾を惹起し、遺伝子発現を促進する事を明らかにした。また、このIFN-γの作用は、コロナ感染症の治療に使用されるJAK阻害薬により効果的に抑制できることを見出した。このような作用機構は、今後P2X4Rシグナルを介する反応の解析に有用になると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マスト細胞におけるリン酸化蛋白質の網羅的解析を行うにあたり、マスト細胞の多様なP2受容体シグナルからP2X4Rシグナルを選別する方法を考案し、内因性のP2受容体を発現しない1321N1細胞を利用し、P2X4Rシグナルを特異的に観察できる実験系を確立した。この細胞を利用してIL-6の産生亢進が認められたので有用なモデルになると考えている。また、マスト細胞以外の研究材料を検討している過程で、気道上皮細胞のRNAウイルス様リガンドであるpoly(I:C)刺激に対するIL-6産生応答がP2X4Rシグナルで増大することを認め、その機序を検討し、インターフェロン(IFN)-γとpoly(I:C)の共刺激により劇的なIL-6産生が惹起することを見出した。この反応はコロナウイルス感染症の病態の増悪と類似していたため、その機序の一端を解明して報告した。そこではIL-6遺伝子座のクロマチン修飾が重要であることが判明したため、この成果を外挿し、マスト細胞でのIL-6産生についても検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、P2X4Rを発現する1321N1細胞のIL-6産生の作用機序について薬理学的な解析を行う。さらに、マスト細胞でユニークな相互作用が認められたプロスタグランジン(PG)E2のEP3受容体を発現させ、相互作用を解析する。また、気道上皮細胞で認められたIFN-γとpoly(I:C)の共刺激効果を模倣して、マスト細胞におけるIL-6産生亢進の作用機序を解析する。この過程で特異的な蛋白質リン酸化が同定できれば質量分析で同定を試みる。
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